「制作メモー置き去りの鏡」
ちゃありい
茹でた卵をお前は食べた
揺れる白身が殻の中から現れただろう
その中にはまん丸の黄色い球体
一羽の鶏を食べたのは
ちゃありい、お前だ
ほら
冷蔵庫の中で十羽の鶏が出番を待っている。
クリスマスの前は卵も産みの親も大忙しだ
インフルエンザにかかって命を落とすなかれ、ちゃありい
お前は、ただ鶏を食らう
お前は謙虚を美徳とし
貧しくも心清らかに
美の求道者であろうとしたのか
清貧とアヴァンギャルドという美徳の鏡を手にしたお前は
鏡面に映る自分の姿を見たか
権威と富と名声を求めるお前が
キラキラ光り輝いてそこに写っているだろう
ちゃありい
自分を犠牲にするなかれ
生の息吹は善悪の彼岸
心から悔いることは鏡には映らない
鏡の背後に小さな扉が半分開いている
中の小部屋にホモサピエンスの秘密が記された書物がある
ちゃありい、自分をきちんと愛せよ
鏡の中の扉の上で
鶏はポトリと糞を落とす
見逃すな
ちゃありい
鶏の糞をきちんと愛せよ
©️松井智惠 2023年12月16日筆
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