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【読書日記】『ガニメデの優しい巨人』(巨人たちの星シリーズ2)ジェイムズ・P・ホーガン

 一作目の『星を継ぐもの』の感想を書いていないのに、二作目からというのも・・・と迷いましたが、ちょっといろいろ考えてしまったので、とりあえず。

 舞台は近未来、今より科学技術が少し発達して月やその他の惑星への航行が容易になっている時代です。
 一作目では、月で五万年前の人間の死体が発見され、その正体を探る地球の科学者ハント博士とダンチェッカー博士の議論を軸に話が展開していきました。
 二作目では、この両科学者が一作目で存在が明らかとなった異星人ガニメアンと邂逅します。

 このガニメアン、身長三メートル近い巨体を持つものの、母星の環境により進化の過程で逃走も闘争も必要としなかったため、肉食文化(肉食獣はもちろん存在しない)も戦争も知らない、根本から理解できないという穏やかな人々です。
 
 そんなガニメアンは遥か昔に原始の地球に降り立ち、肉食天国で同士討ちしまくりな人類を見て、地球を「悪夢の惑星」と名付けていました。
 それから気の遠くなるほど長い時を経て、ある事情からガニメアンの調査隊がハント博士ら地球人に救助されます。
 当然のことながらガニメアンたちは初めは地球人を警戒します。しかし、交流するうちにやがて打ち解け、「悪夢の惑星」の住人である地球人への評価を見直すことになります。人類は生来の闘争心を同じ人類ではなく科学の探求へ向けることによって驚異的な発展をしたのだ、と。
 というのも、作中の舞台となる地球では、人類は国家間、宗教間・・・いかなる戦争もやめており、各国が協力して平和な状態を保っている、という設定だからです。現実もそうであったらどんなにいいか。

 この点についてではありませんが、訳者は著者ホーガン氏の作風について「健康的な楽天主義」と表現しています。
 ホーガン氏の人となりを知らないので、「楽天主義なのか現実の人類には決してなしえないだろうという皮肉を込めていたのか・・・」などとうがった見方をしてしまいました。
 特に、こんな時期なので。

 読んでいる途中で、丁度イスラエルとパレスチナの間で再び争いが起こりました。
 夢から現実に引きずり戻された感覚でした。
 違う世界線だとわかっていても、ガニメアンたちにぜひ伝えたい。
 ここはまだ「悪夢の惑星」です。たぶん永遠に。


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