Bohk Yasai

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Bohk Yasai

詩と音楽 https://soundcloud.com/bohkyasai bohk.yasai@gmail.com

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詩の価値について

してきたことの総和がおそいかかるとき おまえもすこしぐらいは出血するか? 堀川正美 『新鮮で苦しみおおい日々』 詩とは何なのでしょうか。 僕は詩が何であるか、その…

Bohk Yasai
2年前
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半睡の午

物性は余白のような微笑の近似をとる。 ぬくもりの予感へと参列するほそい腕。 そのたしかな系の均衡が破られたとき、 春の中綿はとび散ってしまう。 透明な闇が塔に流れ込…

Bohk Yasai
2か月前
15

死者の作法

ふわり ただ遺る 美醜 痕跡から 聖者の心中 察しなさいと 供物を噛み 押し殺すことで 表面は澄み渡ってゆく 私の海が 大丈夫なうちに 大丈夫なうちに 概念になろうとした …

Bohk Yasai
6か月前
13

反層

きもちいい哺乳 腕から指へ 欠如した 線分が口に放り込まれる ほじくったベーグルの芯から ぽろぽろ出てくる境界 (正体のない) 眷族たちは何も求めず ただなめらかに旋…

Bohk Yasai
11か月前
23

こんにちは末裔

ようやく弱さを懐胎しつつある きっとすべてがどうでもよくなってゆく私たち の気配はまさぐられて 皆目救いようのない肉を焼きながら 飯の種がすうっと味を失い 自然な身…

Bohk Yasai
1年前
20

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Bohk Yasai
1年前
20

方解と花

核には雨が降っている 聖なるものの及ばない底で これは会心の雨になるだろうからと きみは目を瞑った ——星が燃えている 春、淡々と孵化してゆく光子が みずうみの上で…

Bohk Yasai
1年前
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体言のとどめ

別条はないかい? よくあることだから 秘密にしておくよ みんな嘘ばかり口にして 朽ちていってしまって しまった、どこからがきみだったのか わからなくなったよ つまめる…

Bohk Yasai
1年前
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しばらくの布帛

川底を手繰ってブロードは うみだされている わからない指はほどけなければならない しぶきをあげた星のひとつを拾いあげ 線が失せてゆく 線が失せてゆく とろとろの残酷…

Bohk Yasai
1年前
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Bohk Yasai
1年前
15

ここに惜しみない沈黙を捧げよ

ぼくは予感した——みんな光に由来していること まじりけのない薄暮 揉まれた氷 償いようのなさで かたちを失った 森はあかるくそしてまた、くらい 新芽は甦るもの 雨…

Bohk Yasai
1年前
25

捲く濾過

そちらに花は咲いていたか? あたらしい犠牲が街に訪れたあと 殆どの民はよろこんで器官を失っていった とけばとくほど固まってゆく コンクリートの白熱 寝具に死の片鱗を…

Bohk Yasai
1年前
18

白夜について

「空白になりたい」 今の気分を説明するのに、これ以上の言葉はないと思った。遥か彼方から、どこかへ帰ってゆくように、鐘の音が聞こえた。 それは、どんな境界ともちが…

Bohk Yasai
1年前
27

回生と母子

きみがわたしを棄てることを わたしは愛と呼ぶことができるか たわわな松果体をぐちょぐちょにして いかなる野花も手がけないことを誓おう 互いの膜がとけるまで指を絡めた…

Bohk Yasai
1年前
18

やわらかい底

うまくやれるだろうか からっぽの梅肉 肌をつまみ 甘皮を舐めるようにして 胸さきの石英は綻んでゆく じりじりとちかづいてくる安全のために 炭酸を抜かなくてはならない …

Bohk Yasai
2年前
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詩の価値について

詩の価値について

してきたことの総和がおそいかかるとき
おまえもすこしぐらいは出血するか?

堀川正美
『新鮮で苦しみおおい日々』

詩とは何なのでしょうか。

僕は詩が何であるか、その答えを知りません。詩は、近づけば離れていってしまい、離れれば突然迫りくるような運動です。そのため僕は、永久にそれが何かを知ることはできないでしょう。そんな得体の知れないものに、何故か惹かれてしまうのは、殊に現代においては、詩に対して

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半睡の午

物性は余白のような微笑の近似をとる。
ぬくもりの予感へと参列するほそい腕。
そのたしかな系の均衡が破られたとき、
春の中綿はとび散ってしまう。
透明な闇が塔に流れ込んでからというもの、
窄んだバケツに掬われた空間は
耐えがたく軽い。

灰をかき出して薪を焚べる。
雪は斑らに起きがけの窓を濡らし
列車は定刻を過ぎようとした。
鏡にひそむ原形をたずねるもの。
あるいはすべすべの丘に立ち
残月の行方をな

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死者の作法

ふわり
ただ遺る
美醜
痕跡から
聖者の心中
察しなさいと
供物を噛み
押し殺すことで
表面は澄み渡ってゆく
私の海が
大丈夫なうちに
大丈夫なうちに
概念になろうとした
そして
体温のない器から
欠落してしまったらしい
ほんものを拾った

花が
揺れたことを知ったら
とり返しがつかない
どうどう
どうどう
かわいい鼾だ 覚醒の
砕けちる朝の光
草は生うことをやめ
地平はのたうち
雨を待ちわびてい

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反層

きもちいい哺乳
腕から指へ 欠如した
線分が口に放り込まれる
ほじくったベーグルの芯から
ぽろぽろ出てくる境界
(正体のない)
眷族たちは何も求めず
ただなめらかに旋律する

おそろいの太陽
瞼を塩水に浸す 挨拶の技法
汚れをみつめる森の気持ちで
やさしい動物が歩く
よろしくね 界隈

われもの 血漿が煮えたぎる音
わくわくする なぜって
箱の中身が生きているふりをしたんだ
うまれたての胞子が

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こんにちは末裔

ようやく弱さを懐胎しつつある
きっとすべてがどうでもよくなってゆく私たち
の気配はまさぐられて
皆目救いようのない肉を焼きながら
飯の種がすうっと味を失い
自然な身は寝室へと運ばれてゆく
吐き気のあいだになんらかの気やすめを見出したものは
遊具のゆれに取り残されていたくて
生き死にというのは無性なのだ

あまりに無闇に眠っている
手を握るだけの休暇には
一身上のコードを類推する暇はなく
無線の声は

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方解と花

核には雨が降っている
聖なるものの及ばない底で
これは会心の雨になるだろうからと
きみは目を瞑った
——星が燃えている

春、淡々と孵化してゆく光子が
みずうみの上で踊っている
透明なものは存在しない
その器官を指でひろげると
卑猥な音がするから——星が燃えている
雨粒がたがいに反感する頃
手の皺にひそむ祈りは呪いになって

見るものすべてがさらさらになるように
こころを削っている
鍵盤はころころ

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体言のとどめ

別条はないかい?
よくあることだから
秘密にしておくよ
みんな嘘ばかり口にして
朽ちていってしまって

しまった、どこからがきみだったのか
わからなくなったよ
つまめる感傷は剥がせそうだね
黙り込んだひとから罪をみごもって
水に流して

説明に情状はない
別条はないかい?
みんなが追いかけている迷信で
なんとなく報われてみたい
砂を無数に選り分けて見せてよ——
谺する「それで?」

線を知らない水

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しばらくの布帛

川底を手繰ってブロードは
うみだされている
わからない指はほどけなければならない
しぶきをあげた星のひとつを拾いあげ
線が失せてゆく
線が失せてゆく

とろとろの残酷が内ぶたを回し
歯ぐきの薄桃色はときめいている
春が黄身をわってまわる頃に
暈を纏わってなめらかになりたい
印象をくゆる累々は花びらをふるい
その円錐をかすかに均すために
ふいごからは気色のない谺が届けられる
およそ同じ顔をした牛たち

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ここに惜しみない沈黙を捧げよ

ぼくは予感した——みんな光に由来していること
まじりけのない薄暮
揉まれた氷 償いようのなさで
かたちを失った 森はあかるくそしてまた、くらい

新芽は甦るもの 雨のいちずさ
ふるえる手は赤土をわかちあい
見るもののない 神々しい麦のつやつやに
したたる稲妻 礼讃の
体言、そのあまりにつよい静止……

無垢へ ふくらみつつある耳朶
野の顔、——どうやって弔おう——そちらから邂逅する
濡れた野木瓜の

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捲く濾過

そちらに花は咲いていたか?
あたらしい犠牲が街に訪れたあと
殆どの民はよろこんで器官を失っていった
とけばとくほど固まってゆく
コンクリートの白熱
寝具に死の片鱗をみいだしたものから
番いの門をくぐった

夜の屑がふるみちばたの
光を帯びてしまった影に
聖域を見いだしてはならない
くるし紛れの血栓が
雄弁にきのうの峠をかたるならば
気圧の谷に精液を流しこみ
太陽を解体せよ

おれが果物を掴み取ると

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白夜について

「空白になりたい」

今の気分を説明するのに、これ以上の言葉はないと思った。遥か彼方から、どこかへ帰ってゆくように、鐘の音が聞こえた。

それは、どんな境界ともちがう、お別れの言葉のようなものに包まれていた。その手ざわりに運命を与えるために、きみは日傘をさした。そしてぼくは、ここから飛び降りると決めた。

「越えてはいけません」

母のような声だった。鮮明に、奥深くに眠る加護を呼び起こす声。ぼくは

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回生と母子

きみがわたしを棄てることを
わたしは愛と呼ぶことができるか
たわわな松果体をぐちょぐちょにして
いかなる野花も手がけないことを誓おう
互いの膜がとけるまで指を絡めたこと
くびれた喉もとからやってくる、
声のない叫びの中に隠された
しずかな母音が踏み込んでくるまでの刹那を
埋めてしまうクリシェ
見るからにおかしい所作によって
わたしはわたしと契ることができない

幾たびか春の刺々しい巣を抜けて
斑に

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やわらかい底

うまくやれるだろうか
からっぽの梅肉
肌をつまみ
甘皮を舐めるようにして
胸さきの石英は綻んでゆく
じりじりとちかづいてくる安全のために
炭酸を抜かなくてはならない
雪解けに耳を傾け
ひとりでにまるまる善良な背中
うまくやれるだろうか
「是非!」と叫び哄笑する大人たちは
内省で椅子を壊す
体温はたちまち立ち消えてしまうけれど
いのちの満ち欠けるリズムでぼくは
改行だけをしていたい
うまくやれるだろ

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