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バックミンスター・フラーの動的ベクトル平衡体

2022年11月に行われた第4回テンセグリティワークショップで、私はバックミンスター・フラーの研究をさらに発展させ続けている梶川泰司氏の実演を交えた講義を受けた。その折に制作した「ベクトル平衡体」は、竹ひごとシリコンという比較的容易に手に入る素材で構成されていたが、サラッと見ただけではその奥深さに気づけないノウハウに満ちていた。
(注:本記事はメルマガ『驚きは魂のごちそう』の過去記事加筆修正版です)

竹ひごとシリコンの「ベクトル平衡体」

ワークの様子は【B・フラーのジターバグ(ベクトル平衡体)を内外から観る】に少し書いたが、その後、このモデルで遊ぶうちに発見したことは、どんなジャンルの学習プロセスにも通じる普遍的な要素を含んでいて、非常に重要なものだと思えた。そこで、実際に体験した流れを追いつつその要素を抽出してみたいと思う。

ちなみに、「ジターバク」とは20世紀初頭に米国で流行したスイングダンス「ジルバ」のことで、もともと現地で「ジターバグ (Jitterbug)」と呼ばれていたものが日本に流入した時に訛って「ジルバ」になったと言われている。

一方、フラーの「ベクトル平衡体」は、古代ギリシャで幾何学の探求が始まって以来2300年以上に渡って大理石のような静的物体としてイメージされてきた多面体を、折り畳み展開可能な「多頂点体」としてフラーが提示した極めて革新的なモデルだった。

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