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名作探訪 その4 立体陣取り 『トーレス』

こんにちは、ボードゲームデザイナーの山田空太です。

このnoteでは、普段はボードゲームの作り方に焦点を当てて書いています。今回は、名作探訪という、皆さまに是非とも遊んでほしいボードゲーム紹介のシリーズです。

本日のゲームは、クラマー&キースリング作『トーレス』。3Dの陣取りという高難度な課題を、技術と経験で解決したという感じのボードゲームです。

*この記事は新たに書き下ろしました。

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トーレス Torres

Designer: Wolfgang Kramer, Michael Kiesling
Artist: Franz Vohwinkel
(1999)
2-4人
好み:AA 
プレイ時間:90分
インスト:10分
2人でも:3人以上がおすすめ
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1999年のゲームです。作者は2人。『ニムト』に引き続いて、ヴォルフガング・クラマー。そして、『アズール』で2018年のSDJを獲得したキースリングとのコンビ。この2人は何度か共作を出しています。いわゆるドイツボードゲームのメインストリームに位置付けされるんじゃないかなと思います。

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ゲームの概要と目的

さて、『トーレス』のゲーム内容。簡潔にまとめると3Dの陣取り

お城に自分の色の兵士たちを派遣して、上の階に配置することを目指すゲーム。勝利点は「お城の1階の面積×兵士のいる階数」で計算されます。なので、なんとかして自分の兵士だけを、大きなお城の上層階に登らせたい。

お城はブロックを積んで作ります。しかし、ブロックを置いて城を広げるのも、積んで上に伸ばすのも自分たちで行わなければいけない。つまり、プレイヤーは、お城を作りながら、自分の兵士を登らせながら、相手が登ってこられないように牽制もしないといけない。最高なのは、人がせっせと作ったお城に横乗りするような形なのですが・・・もちろん相手も考えていることは同じ。

プレイヤーはアクションポイント制で手番を行う

このゲームは、アクションポイント制というシステムのゲーム。

1度の手番に、5アクションポイントを使うことができる。プレイヤーは、その5ポイントをどう振り分けるかを考える。アクションの種類には兵士の派遣や、兵士の移動や、ブロックの配置や、カードの獲得などがあります。例えば、最も強力な「新しく兵士を派遣」のアクションには2アクションポイントを使うことになります。

アクションポイント制っていうのは、お小遣いシステムみたいなもの。毎日500円お小遣いがもらえて、自由に使える。ただし、お小遣いは次の日には持ち越せません。すぐに食べられるお菓子だけじゃなくて、将来のために投資をすることも大事。

アクションポイント制の長所は、プレイヤーの自由度が高い割に、手番でできることが整理がされていてわかりやすいこと。

逆に短所は、ダウンタイム(待ち時間)が長いこと。アクションの順番が自由のため、組み合わせの数が膨大。どうしても考え込んでしまう。「あれやって、これやって、もう一度あれやって、あれ1ポイント足らない。計画やり直し」みたいな感じで・・・。

『トーレス』は1日にしてならず

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引用:https://boardgamegeek.com/boardgame/790/terra-turrium

調べてみると、同作者クラマーのTerra Turrium』 (1990)というゲームが、『トーレス 』の元型としてあるようです。写真を見ても少し似ていますよね。作者のクラマーは、アクションポイント制というシステムを投入することで、長年解けなかった問題が解決できたんじゃないかなと推測したりします。

前例から発展させたとはいえ、ゲームデザインの視点から見ると、3Dの陣取りというのはとても難しいはず。

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陣取りゲームの常として、手番順がモロに影響してしまうこと。このゲームでは、後手番のプレイヤーが有利。先手プレイヤーの積んだ城に相乗りしやすいし、動きをみて最適な手段を探せるから。手番順の操作が非常に厄介ですが、マスターゲームという上級ルールでは是正されています。

さらに、もう1つすごいことは、最初が真っさらのボードであること。お城が完成していていることからスタートして、そこで3Dの陣取りを行うのであれば、分からなくもない。ただ、陣取りの陣地であるお城を作らせながら、陣取りもさせて、ゲームとしてなお面白いというのはただ事ではない。

普通なら意欲作で終わるはずなんです。しかし、トーレスは意欲作では終わっていません。ちなみに、2000年のSDJ(ドイツ年間ゲーム大賞 :Spiel des Jahres)を獲っています。難しいことに挑戦しつつ、ゲームとしての完成度が高く、ゲーム終了後の見た目も美しい。こんなウルトラCを達成しているのだから、やはり名作と言えると思うのです。

さて、名作探訪シリーズ、いかがでしたでしょうか?もし面白かったら、是非、フォローをお願いします。





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