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住民の学校への消費者志向の高まりと教員のワークエンゲージメントの低下

はじめに

近年、保護者の教育に対する期待や要求が高まっています。これは、住民の学校に対する消費者志向の高まりを反映しているのです。このような状況は、学校教員にとって新たな挑戦となり、彼らのワークエンゲージメントに影響を与えています。本レポートでは、消費者志向の高まりがどのように教員のワークエンゲージメントに影響を及ぼすかを探ります。

住民の学校への消費者志向の高まり

消費者志向とは、顧客(この場合は生徒やその保護者)がサービス提供者に対して高い期待を抱き、要求を行う姿勢を指します。教育の分野においては、保護者が学校や教員に対して高い期待を持ち、具体的な要求を行うことが増えています(注1)。例えば、成績の向上、進学指導、課外活動の充実などが挙げられます。このような保護者の要求が強まる背景には、顧客中心主義のビジネスモデルの普及や社会的および政策的な要因が考えられます(注2)。

消費者志向の高まりが教員に与える影響

保護者からの高い要求は、教員にとって大きな負担となります。以下に具体的な影響を示します。

増加する業務負担

保護者からの要望や問い合わせに応えるため、教員は授業準備や評価業務以外にも多くの時間を割かなければならないのです。これにより、教員の業務負担が増加し、結果的に長時間労働やストレスの増大を招きます。

人間関係の緊張

保護者とのコミュニケーションが増えることで、意見の相違やトラブルが発生するリスクも高まります。これにより、教員は心理的なプレッシャーを感じ、人間関係の緊張が高まるのです。


ワークエンゲージメントへの影響

ワークエンゲージメントとは、仕事に対する積極的な関与や情熱を指します。教員のワークエンゲージメントは、生徒の学習成果にも大きな影響を与える重要な要素です。以下に、消費者志向の高まりがワークエンゲージメントに与える影響を示します。

モチベーションの低下

業務負担の増加や人間関係の緊張は、教員のモチベーションを低下させます。教員が自分の仕事に対するやりがいや達成感を感じにくくなることで、ワークエンゲージメントが低下するのです。

バーンアウトのリスク

長時間労働やストレスの増大は、教員の精神的・身体的な健康に悪影響を与えます。これにより、バーンアウト(燃え尽き症候群)のリスクが高まり、結果的にワークエンゲージメントが著しく低下します。

まとめ

住民の学校への消費者志向の高まりは、教員にとって多大な負担をもたらし、彼らのワークエンゲージメントに悪影響を与えています。教育現場においては、教員のワークエンゲージメントを維持・向上させるための対策が急務です。具体的には、業務負担の軽減や心理的サポートの強化が求められます。これにより、教員が安心して教育活動に専念できる環境を整えることが重要です。



参考)
注1)「小学校教員のワーク・エンゲイジメントへの影響過程についての探索的研究」
この研究では、地域差が教員のワークエンゲージメントにどのような影響を与えるかを検討している。特に、保護者や地域からの協力感、雑務の煩雑さ、教員としての勤務年数などがエンゲージメントに与える影響を分析しており、都市部と農村部の違いも考慮している。この文献は、保護者の期待が高まる中での教員のストレス要因とエンゲージメントの関係を理解するのに有益である​
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasmh/19/1/19_60/_article/-char/ja

注2)「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」 中央教育審議会 2019

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