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シについての記録

僕は羊、どうしようもない羊

寝る前に数えた羊たちの行方は?
遠くから聞こえてくるのは嘘つきたちの声

迷える羊たち…迷える子羊たちよ
我々の進むべき道を塞ぎたまえ

さようなら、サヨナラ
沈黙は破られた、”慈悲深きバアル”よ

我々の進むべき道を塞ぎたまえ


無題part1

天気雨 怖がる猫
書き続ける文字 打ち続ける文字 文章に逃げる逃げる
許されたい なんて馬鹿みたい
既読のつかない 気の毒なメッセージ
昨日つかれた嘘の意味を考える
まわらない扇風機  凝り固まった思考
泣けない茅野 垂れるは情けない赤 
握りつぶしたレシート レンタルビデオのえろい匂い
発情するのはずんぐりむっくりなあの娘
きなくせぇ しゃらくせぇ なんてうるせえうるせえうせえ
全部嘘だ
全部嘘だと思えばいい
始めから何も無かったと思えばいい
ここにはなにもない


minus fifteen

朦朧とした意識の中、聞こえてくるのは君の声
朗読に耳をかたむけながら眠りにつこうとする私は4歳になる
スポンジがパサパサのショートケーキはイチゴと生クリームだけ食べる4歳になる
嫌いな男の子に噛み付く4歳になる
けれども、今私の頭の下にあるのは誰の膝でもない潰れた枕
君が19歳だったらよかった
君が苦しんでる姿を見れたら良かった
大人の皮を被った君を殺したい
君の記憶を殺したい
そうして、君は私の中だけで生きればいい
何も心配なんていらない
4歳の私は君の1番美味しいところだけ食べてあげる
君が朗読する間私は4歳になる
君が朗読する間君は19歳になる
君の膝の上、私は安らかな眠りにつくのでしょう

福岡LOVER

二日市で二日酔いのまわらない頭で、中洲で泣かされたアイツのことを思い出してそんな自分にイラついた
渡辺通で思い通りにならない日々に蓋をして親孝行を言い訳に親不孝通りで色恋営業やってます

ママ、元気ですか?

私は元気にやってます
私は今夜も元気にやってます

僕だけのheaven

淡すぎる恋、波動にもならずじんわりと私の中へ染み込んだ

あの時感じたものは嘘じゃなかった…!

僕だけのheaven、
意識を外に出して考えてみる

どうして雲の上は天国だとわかるのだろう
わからなくとも確かに感じるのだ

身体と意識がばらばらで、ふわふわとしたあの感じは何も知らない貴方と似ていて…血が欲しくなる


この街のいいところ

本屋さんが0時まであいてるところ

美味しいご飯屋さんが沢山あるところ

雨の日の夜がとても綺麗なところ

星がみえないところ

たくさんの人がいるところ

誰も私に干渉してこないところ

大人になれるところ


泣きたい季節は何色?
僕は答える茜色

ずっと住むこの街で懐かしくなるのは空の色 
忘れかけた記憶、忘れたい過去
  後部座席から見たのはいつかの夕暮れ帰りたくない、帰りたい繰り返すうちにきいつもの見慣れた景色
静かな車窓、聞こえてきたのは小さな寝息
すぅ、すぅと寝息を立てて僕の膝の上で寝ている小さな妹
僕はそれを見ないように車窓に顔を向ける
流れゆく景色の中、僕は今日の晩御飯は何かと考える
食べることを考える
生きることを考える
だってこれから僕は…
「今日は買って帰るから」
か細く呟いた母の言葉にうんと頷く
サイドミラーに写った母は真っ赤な茜色に包まれれ、その光で溶かしてどこかに連れて行ってしまいそうだった
僕は空を睨みつける

”僕の母さんを奪わないでください”

僕は祈る

”僕の母さんをどうか連れていかないでください”
僕は今日初めての涙を零した
膝で寝ている小さくなった妹に落とすと冷たい!と笑った気がした


無題Part2

土砂降りの精神病棟 降っては止んでを繰り返す
ジジィの罵倒 増える眠剤 懐かしい顔
いい加減やめてもいいんじゃない?を繰り返す
悲痛な叫びを探す先生はもうここにはいない
子牛の絵の横で寝ている疲れきった女 呂律の回らない患者
ここには何もなかったと思えばいい、初めから何もなかったと思えばいい
川のように流れる雨水 怯える猫はここにはもういなかった。


昔から詩を書くのが好きだった。昔から詩を読むのが好きだった。堅苦しすぎず優しく私の心に問いかけてくるような詩が好きだった。最近、寺山修司の旅の詩集を借りてきた。そこには寺山修司たちが集めた素敵な詩がたくさん載せてあり、その中でも大好きな詩があったので引用させていただきたい。

橋   中村俊亮


今日のような日
ぼくは女とわかれた
ひとりぐらし


今日のような日
女の乳房がほし葡萄のようにしなびて
ひとりぐらし


今日のような日
ぼくは橋を渡った
ひとりぐらし

ふりむくと 誰もいない
ふりむかないと 誰がいる
待っていると 誰もこない
待っていないと 誰かがくる
ぼくは誰も待っていない

誰かが渡ってしまうと
ぼくだけになり
誰かの落としていった悲しみを食べて
誰かになる
誰かはぼくになる
それは
僕と女が毛布のなかでみんな見せあった
ふたつのギタアの夜のような
それは
あたたかいコーヒーを飲んだ夜のような 


ひとりぐらし
ぼく
ひとりぐらし
誰も渡らない橋の上で
ハレム ノクターンは
ひとりぐらし
ひとりぐらしの星が
ひとりぐらしのトランペットに
ふたりぐらし
誰も渡らない 今日の日
誰かが渡る死の日
ひとりぐらし

誰もがひとりぐらしを投げて
誰もがふたりぐらし
それでも
恋の終わる日 ひとりぐらし
ぼくの生の中にあるひとりぐらしの
それが ひとりぼっちのこたえ
それでも ふたりぐらし
子供が欲しくなくても ふたりぐらし 
泣けなくなっても ふたりぐらし
きらいになっても ふたりぐらし
ひとりだから ふたりぐらし

ひとりの女 ひとりぐらし
ぼく ひとりぐらし

ぼくと女はふたりぐらし

古いぼくの恋は流れてゆく 
仔猫の死骸が流れてゆく
枯葉が流れてゆく

誰もいない

ながれない

旅の詩集 寺山修司 P55〜P57

好きだった。何度も口に出して読みたいほど好きだった。泣けない帰路、ひとりぐらしの詰まった袋をぶら下げながらぽつりぽつりと口に出して読んでしまうほど好きな詩だった。けれど、中村俊亮の詩を私はひとつしか知らない。ネットの海を調べても中村俊亮についての情報は無いに等しかった。でも、それがまたこの詩みたいで素敵なだなとすら思った。 死について考える代わりに、詩について考えてみた。終わらせ方を考える代わりに、生き様について考えてみた。人生を一つの作品とするならば、有名にならなくていい、結婚しなくていい、一人で死んでいい。たった一人でいい、たった一人でいいから私の書きなぐった文や文字を好きだと宝物のようにしてくれる人がいたならばそれだけでいい。そう思った。






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