うつ病の旦那さまの就労と 奥様ご自身の子育てとの両立に関するご質問をいただきました。
ご相談の内容
夫が中小企業に勤めています。コロナの影響から業績が下向きになり、余裕の無さから社長が社員に対して声を荒げたり、多くの業務を押し付けるようになりました。
夫は長年患っている鬱病がようやく寛解になってきていたのですが、ここに来て逆戻りしています。このご時勢ですし、夫は中年ですから転職は厳しいかもしれませんが、健康には変えられないので転職を勧めました。
とはいえ、子どもがいますのでこの先の生活について不安が無いといえば嘘になります。
子ども達に不安を与えないよう平静を装っていますが、心の中ではかなり動揺しています。夜中に何度も目が覚めてしまう日もあります。
そこで質問なのですが、夫を支えつつ、自分も精神的な健康を保つためには具体的にどのような過ごし方をするのが良いのでしょうか。
はじめに
コロナ禍がメンタルヘルスに与える影響は想像を超えるもので、生命の危機に関する漠然とした不安を感じることに加え、経済的な恐怖はリアルに近づいている感覚をもちます。
どんな状況にも当てはまりますが『終わりがない』というのは相当キツイです。福祉の仕事で自閉症のある人を支援する時は『終わりを明確にする』ことが基本のキです。
次に何が起こるのかを想像できるようにして、どうなったら終わるのか。不安の強い自閉症の人たちへのメンタルヘルス対策には、これらを明確にすることが求められます。
不安とは正体が分からないことのお知らせです。
だから、正体が分かれば不安は消えます。
よって、不安対策は『不安に接近』して状態を明らかにすることがポイントになります。
今回、ご相談をいただいた内容。
本当に耐えがたい事態に陥られており、本当に心苦しいく思います。でも、不安だから何もしない という訳にもいきません…
不安に接近して課題と向き合い、解決策を見つけていく。この不安対策を進める必要がありますので、以下を参考にしていただけたら幸いです。
作戦A、金銭面への不安対策
退職・転職という決断の前に『休職』という選択があります。
<休職のメリット>
①、うつ病による就労不能状態を医師が証明すれば『傷病手当金』が受けられます。お給料の約6割の保障を最大で1年半受けられます。
※社会保険に加入していることが要件
②、『傷病手当金』を受けて1年半の猶予期間が担保されれば、しっかり休養することができます。復職のためのリワーク支援を受けることもできますし、転職についてゆっくり考えることもできます。
③、仮に、休職から退職に移行しても『傷病手当金』は継続されます。よって、退職の決断を焦る必要はまったくありません。(参考:協会けんぽHP)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307/
④、私は、失業保険による失業給付よりも『傷病手当金』の方がお得だと思います。なんといっても期間が長いので。でも、障害者手帳を持っている場合は失業給付の期間は長くなります。(自己都合退職による失業給付の開始は三ヶ月後、お給料の5~8割が三ヶ月保障されるのが基本。障害者手帳を持っている場合は最大360日まで。参考:失業給付の障害者特例について。atGPのHP)
https://www.atgp.jp/knowhow/oyakudachi/c1017/
<休職のデメリット>
①、傷病手当金の申請窓口は『会社』となります。毎月、就労不能の証明書を主治医からもらって、毎月、会社に申請をお願いするという作業は気まずいものです。でもここは機械が事務をこなすように乗り越えていきましょう。
②、傷病手当金を受けたとしても1年半は意外とあっという間です。休養は必要ですが、休養のしすぎは社会復帰の妨げになるので注意です。休養とは、しっかり休んで心身の回復を図ること+仕事や生活を充実させるために鋭気を養うこと=これが休養です。休養計画には、休むだけでなく、行動を活性化することも並行してやっていきましょう。
作戦B、生活破綻への不安対策
もし、生活が破綻しそうなときのためにも再建の見通しを立てておきましょう。
生活が破綻しそうだと感じたら、破綻する前に、必ず、お住まいの市町村の『自立相談機関』へ相談に行ってください。自立相談機関は、生活困窮者自立支援法に定められる相談機関です。
こちらで生活再建に向けたアドバイスを受けたり、プランを作成してもらいながら、これからの生活の見通しを立てていくことをおススメします。一人で悩まないでください。
万が一、生活が破綻してしまった場合は『生活保護』の利用も検討できます。生活保護のコーディネートも『自立相談機関』につながっていた方がスムーズにいくと思います。
2020年現在、コロナ禍により経済的に困窮する人たちはが増えています。コロナ対策の動画を作成しましたので、もしよろしければご覧くださいませ。
https://youtu.be/m3ZRQZvbsPk
作戦C、支える側(奥様)の役割変更の対策
旦那様が仕事に復帰できない場合、家族の役割を変えることも覚悟する必要があります。
家計を支えるためにも『奥様が働く』という役割を担うことになります。
そして、旦那様は家事の役割を担うことになります。旦那様もうつ病が辛いからといって、家族の役に立てなかったり、何にも期待されないことも辛く感じるものです。旦那様にも期待する役割は明確に伝えていきましょう。
旦那様が家事を遂行することが難しい場合は、障害福祉サービスの『居宅介護(家事援助)』の利用を検討してください。お住まいの『特定相談支援事業所』にて計画相談支援を受け、必要なサービスの導入していきましょう。(参考:ワムネットURL)
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/
また、お子様にも事情を説明したほうが賢明です。子どもとはいえ、家族の異変に関する漠然とした不安を感じているはずです。何か隠されていることに違和感を覚えており、疎外感も感じていることでしょう。伝えられる範囲で状況を伝えて、お子様にも負担のない程度に期待する役割を伝えていきましょう。
冒頭でも説明しましたが、不安は正体が分からないから不安なのです。正体が分かれば自分の取るべき行動もみえてきます。家族全員が可能な限り現状を共有して、家族みんなで協力関係を作っていくことが賢明です。
作戦D、支える側(奥様)のメンタルヘルス対策
①、不安対策の基本は『不安に接近』すること
繰り返しになりますが、不安は正体が分からないから不安なのです。正体が分かれば不安は消えるので、不安を書き出して、不安に接近して、見える化していくことが、最大のメンタルヘルス対策になります。
見える化したら、一つひとつのやることの『手順書』を作っていきます。プロセスが分かってくると見通しが立ちます。この方法は、メンタルヘルスの向上にとても役立つと思います。
ただし、不安に接近したり、恐怖に突入するという手順書づくりの作業は、とてもつらい作業になります。曝露反応妨害法という心理療法に近い作業になりますので、できれば協力してもらえる人と一緒に作業してみることをおススメいたします。
このような作業は『タスク管理』であるともいえます。私の会社では『タスクペディア・スタートアップ講座』というタスク管理の無料イベントを定期的に開催していますので、よろしければ活用していただけますと幸いです。(参考:タスク管理大全・イベントレポートURL)
https://task-management-compilation.com/startup_seminar/
②、自分ひとりで抱え込まないこと
繰り返しになりますが、社会保障制度や福祉サービス、ご家族や友人などへの協力を仰ぐことはメンタルヘルス対策としてとても大切です。
また、旦那様のサポートは思い切って『医療・福祉機関・両親に任せてしまう』という決断も必要です。何でもかんでも奥様ひとりで抱え込むとストレスが爆発してしまいます。結果として悪循環に陥る可能性が高まります。
旦那様のことは、訪問看護やデイケア・カウンセリング、福祉サービスなら就労移行支援や居宅介護を利用して、それでも足りない部分はご両親にも頼ることをおススメします。
まわりのサポートを受けながら、奥様はご自身のお仕事、息抜き、子育て、本当に力を注ぎたいことに注力できるようにしていきましょう。
③、頑張る期限を決めること
無期限に頑張るというのは耐えがたい状況です。一方、期限が決まっていると頑張れるものです。いつまで頑張るか、最悪の場合はどうするか、事前に決めておくことをおススメします。
たとえば、1年半は頑張ってみる。それでも難しければ実家に帰る。このような『決めごと』をつくっておきます。必ずしも決めごとの通りにしなくても大丈夫です。期限を設けておくことはメンタルヘルス対策として有効です。
また、頑張りを継続するためには『第三の居場所』をつくることを強くおススメします。家庭と、職場と、あとひとつ、です。
たとえば『うつ病患者の家族向けコミュニティサイト「エンカレッジ(encourage)」さんという団体があります。同じ境遇の方々と、お気持ちを吐き出したり、共有できる場所として有益かと思います。(参考:エンカレッジHP)
https://encourage-s.jp/service
まとめ
私は、森田療法が大好きで、神経症(不安症)関連のお話に触れると、必ず森田正馬の思想を思い出します。
不安は、苦しみの感情と耐えがたい身体の感覚を誘発します。
その苦しみから逃れるために、人は不安を避けて生活します。
不安を避けると一瞬はホッとしますが、根本の問題は解決しません。
先送りにすればするほど、不安はさらに巨大化して我々を苦しめてきます。
だがら、もう不安はなくそうとはせず、不安とともに目的に向かって進みだすのです。
恐怖突入です。
コロナになんか負けねーぞ。
では、アディオス・アミーゴ
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