見出し画像

ギリギリな私の休日は

気づいたら来月請求のカードの料金がとんでもないことになっていた。

そんなに買い物したつもりではないのに!
しかし明細を見ると全てしっかり心当たりのあるもの。
これか、あ〜これもか、そういえばこれもだったか、と自分の行いを一つずつ悔いた。魔法のカードではないのだ。かといって給料日手前、現金もそんなにないので、外に出てはどんどんお金を使ってしまう悪癖が出ないよう、休日は家にこもることに決めた。

午前中、いつも通り燃え殻さんのラジオを聴きながら洗濯物をたたむ。
ゲストで映画監督の庄司輝秋さんがきていた。
長編デビュー作の「さよなら、ほやマン」が今月の初めに公開されたらしい。最初はそうなんだぐらいで聴いていたが、作品の概要、撮影の裏側、監督の想い、そんなことを聴いていたら、庄司監督の出番が終わる頃には、観たくて仕方なくなってしまった。お金がないとはいいつつ、さすがに映画代も出せないほどではない。さらには、自分が観たい聴きたい読みたいと思ったものに対しての出費は惜しみたくない。月の半ばなのでそろそろ上映終了になるかもしれないことも加味し、今日観に行くことを決めた。上映は夜からだったので、家でお金を使わず、その衝動にも駆られない1番の節約行動をキメた。ズバリ昼寝だ。

ベッドに入ってあっという間に3時間。
そろそろ準備しないといけない時間になっていた。
ずっと着たくてうずうずしていたコートを選ぶ。
夜であればこれが活躍するほどの寒さだろう。
この時間に出かけるのはなんだかワクワクする。
日が暮れても予定があるこの無駄にしていない感が大好きだ。思わず退勤ラッシュの時間に巻き込まれたが、疲れた人たちに埋もれるこれから遊びに行くワタシ、というだけでむしろハッピーだった。

映画館では、お金を使わない方が難しい。
だって、映画館ではお供が必須って学校で習ったから。
これも映画タイムを充実されるため…と言い訳をし、オレンジジュースとポテトを買った。後々これが響かないことを願いながら……
入場を待つ間、私の後ろではカップルが別れ話をしていた。
ここで?!と思ったが、耳を欹てずにはいられなかった。
「別れたらどうなるかはわからないけど、今は別れたい気持ちが強いかな…」そう言ったのは金髪の令和ギャルみたいな彼女。彼氏はKPOPアイドルのような雰囲気でどちらも綺麗な顔をしている。美男美女でお似合いなのに、これから恋人たちの季節だというのに、それすらも関係ないという別れが今後ろで?!映画館で?!それよりも何を観てからこの話になったのか、それともこれから何か観るのか、後者は圧倒的地獄だろう。2人の行く末に興味は深々だったが彼女たちの声はあまりにも小さい。彼の答えは聞こえずに、あるいは答えは出されずに2人はどこかに行ってしまった。ついていってしまおうかとも思ったが、あと10分後には入場だった。
「さよなら、別れ際カップル」

そんなこんなでみた映画はもちろん良かった。みんな欠点があり辛い経験があり、生きてるだけでしんどいことも沢山ある。でもそれが誰かが前に進むための力になれることは間違いないと、前を向けたみんなから教えてもらった。ラジオで燃え殻さんが言っていた、“彼らはきっと今日もどこかで生きている”というコメントにも共感した。前を向いて生きているんだろうな、たまには後ろ向きになってるだろうけどそれでも生きていて欲しいな、そんな願いのようなものが残った。あるいはもがき苦しむ彼らを遠くから見守る父や母の愛のようなものかもしれない。
人間味のある映画はリアルを突きつけられるようでなかなか重々しい印象があるが、この作品はトゲトゲした人間味が島独特の穏やかさで包まれていて、出勤前の夜に普通に観られるほどには優しかった。あの別れ際カップルがこの映画を観てたら2人の行先は変わっていたかもしれない…。

外を出ると心地がいい寒さの21時半になっていた。
確実に島育ちではないだろう人たちを掻き分けながら、こういういい日を最小限の出費で毎週末過ごせるなら、来月も生活できるかも!!映画にもらった希望を違う方向性に転換させてしまったが、映画で得るものは人それぞれ。アキラとシゲルとミハルと島のみんなにもらったこの愛と希望が東京の寒さで冷えてしまわぬよう、暖かいコートで守った。

シゲル役の黒崎煌代くん(右)
あまりにも島の坊主が似合っていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?