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あなたの定年、いつにしますか?

配信日:2021年3月31日

この4月から70歳までの就業機会確保が企業の努力義務になります。公的年金の標準的な受給開始が65歳に引き上げられたため、企業は60歳で定年を迎えた人でも65歳まで雇用を継続しなければなりませんでした。年金受給開始までの期間を無収入にさせないためです。それが4月からは70歳まで延長することになります。企業は大変だと思います。もちろん雇うべき人材は70歳でも75歳でも働いてもらえば良いのですが、そうでない人もいる。いくら「1億総活躍」や「シニアは日本の重要な労働力」と言っても、総論賛成だけでは割り切れない負担もあるでしょう。

国は企業に「定年を廃止する」「定年を引き上げる」「継続雇用制度を導入する」のどれかを選択するように言っています。しかし国の都合で「70歳まで」、そのうち「75歳まで」となると、もはや定年という概念自体が崩壊すると思います。そうすると多くは「定年を廃止する」を選ぶでしょう。それによって企業は人材・人財に長く働いてもらえる施策を実施できるようになります。一方、国は引退したひとたちが困らないようにセーフティネットを整備しなければならなくなる。身近な人たちを見ていると、いまの年金ではこころもとないでしょう。つまり国は、これまで企業に押し付けてきた問題を自ら解決する立場になります。

個人にとっても定年はもはや形骸化していると思います。『厚生労働省の「20年高年齢者の雇用状況」をみると、65歳定年企業も全体の18.4%を占めていますし(大企業は12%)、66歳以上でも働ける制度のある会社は33.4%もあります(同28%)。70歳以上になっても働ける制度のある企業も31.5%あります(同26%)』(日経新聞2021年3月6日)。つまり、定年という概念は会社が決めるものではなく、「自分がいつまで働きたいか」という、「自分で決めるもの」になっているのが現実だと思います。

いつまで働くか。サラリーマンのみならず、自営をしているひとでもフリーランスでも、誰にとっても興味深い質問だと思います。ある友人は75歳まで働くと言っていました。僕はおそらく死ぬ直前まで働くと思います。なぜなら働くのは楽しいですから。経済的な理由以上に働く喜び、つまり「人に必要とされる」「人の役に立つ」「人に褒められる」こと。これらは働くことによってしか得られない人生の悦びで、働くこと以外で得るのは難しい「報酬」だと思います。ここは現役で働いている世代が忘れがちなことかもしれません。ところで、人によっては成功してお金を持つと風光明媚な土地に隠居してボーっと暮らしたいと考えるようですが、いざそうなると3日で飽きるそうです(笑)。これも同じ理由ですね。