代表的な地域産業の事例#2-2
代表的な地域産業の事例
今治の事例
愛媛県今治市は「今治タオル」で知られる通り、日本有数のタオル産地である。このタオルを活かし、今治 市は「今治タオルプロジェクト」を発足、高品質なタオルの安定な供給支援とブランド力強化を産官一体とな って推進している。不純物の少ない地下水・伏流水を使うことで柔らかい高級感のあるタオルの製造方法 が特徴である。今治タオルはその高品質さとブランディング戦略により、安価な輸入タオルに蹂躙される国 内外のタオル産業において独自の地位を確立している。結果的に、年間約 350 億円の売上規模を誇り、硬 いタオルが多い海外でも人気商品となっている。
イタリア各地域の事例
イタリアでは地方分権が進み、国とは独立して各地域が稼ぐモデルを実現している。もともと都市国家を統 合してできたイタリアは、都市ごとの特色を維持したまま発展してきたモザイク型の国だった。 イタリアには、約 1500 もの国際競争力をもった地方都市があるといわれており、人口数千人から数万人の 都市にわたって、それぞれの地域のレベルで産業政策を実施することで生き残りをはかり、実際に稼いで 生き残っている。 例えば、包装機械産業におけるボローニャは模範的な都市といえよう。従業員を多く抱える企業は高い税 金を課されるイタリアにあって、ボローニャでは数人〜十数人規模の小企業が集積している。そして互いに ネットワークを形成しつつ各々が高い付加価値を生み出すことで、強靭な国際競争力を実現している。このように、イタリアの地方都市では人口が数千から数万人と少ないにも関わらず、世界相手に 1,000 億円 規模の付加価値を生み出す産業を擁することで中央政府に依存せず地方から直接世界市場と対峙しなが ら発展を続けている。
関係のデザイン
地域において、豊かさは地域内外の人や自然との関係にある。コミュニティの質の向上にとって重要な、3 つの観点(交流の効果と効率の向上、住民の多様性の担保、市民コミットメントの向上)に焦点を当て、施 策を立案し、実行する。
こちらに関しては、先述の関係 KPI をモニタリングしながら、不健全な状態にある母集団に対して施策を実 施する。例えば、低所得者世帯において、関係の多様性が損なわれているようであれば、地域食堂などの 施策を実施し、所得に応じて行政から食費を補填する形を取ることで、所得帯に関わらない交流が生まれ、 犯罪率の低下やや公共施設の維持管理コストの低減につながる。 このように、地域全体の関係の状態を俯瞰しながら、施策を調整してゆく必要がある。これは、経済以外の 福祉・行政・教育の要素に関連する施策が多い。巻末に添付している施策例を基に実施していくことが想定 される。
(次回へ続く)