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FORTH Innovation Methodではなぜアイデアがたくさん出せるのか

今回のForth Innovation Methodの公認ファシリテーター育成のワークショップB日程では、953ものアイデアが生まれた。MIRO上にそのアイデアが残っている。

MIROに残された953個のアイデア

なぜこれだけのアイデアがでるのか。その秘密は、アイデア出しのプロセスにある。

BRAIN DUMP

まず、BRAIN DUMPと呼ぶ、頭の中にあるアイデアをとにかく書き出す作業を行う。この段階で多い人はひとりで80個以上のアイデアを書き出した。この段階では、「すでにもっていたアイデア」が可視化されることになる。

BRAIN DUMPの結果でてきたアイデア

多くの企業では、ここでアイデア出しを終えてしまうかもしれない。そうすると、「アイデアコンテスト」の応募が毎年減り続けるという事態に陥るだろう。80個以上のアイデアを出した人がいても、その人が二回目もまた80個出せるわけではないのだ。

CUSTOMER FRICTIONS

そこでFORTHでは、続いて顧客のもっている課題(Friction)をもとに、アイデアを書き出すCUSTOMER FRICTIONSのプロセスを行う。Friction自体は、前のフェーズで準備しており、ここでは各Frictionに対するソリューションを書き出していく。ここはデザイン思考的なアプローチと言えよう。ここでは、顧客起点で考えるため、BRAIN DUMPで出たものとはまた異なるアイデアがでてくるのだ。

CUSTOMER FRICTIONSで出てきたアイデア

WHAT WOULD APPLE DO

FORTHではさらに、WHAT WOULD APPLE DO(もしアップルだったらどうする?)というプロセスを行う。スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクなど、イノベーターになりきってアイデアを出すのである。

WHAT WOULD APPLE DOのプロセスで出てきたアイデア

私自身、常々、アイデア思考プロセスの限界を感じてきた。たしかに顧客が抱える課題を解決するというアプローチは、ニーズのある事業案を考える上では効果的である。一方で、たとえばイーロン・マスクのSPACE Xが掲げるような「人類を火星に移住させる」というような、現状ではまったくニーズのないような大きな構想を生み出せない。結果として、「お客さんのお困りごとを解決するちょっとしたアイデア」というような小さな事業案ばかりになってしまうのである。

FORTHでは、そうした現実的なアイデアだけでなく、イノベーティブなアイデアも出せるようにと、このWHAT WOULD APPLE DOのプロセスを行う。これにより、思いも寄らない想定外のアイデアがでるようにするのである。

このように、3つのプロセスを行うことによって、多面的で、幅広いアイデアを出していく。953個のアイデア創出は、こうした根拠のあるプロセスによって生み出された、再現性のあるものなのである。


小山龍介

一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会 代表理事

京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、米国MBAを取得。松竹株式会社にて歌舞伎をテーマにした新規事業立ち上げに従事。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。メンバーの自発性を引き出す、確度の高いイノベーションプロセスに定評がある。翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』で紹介したビジネスモデル・キャンバスは、多くの企業で新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。

2015年より名古屋商科大学ビジネススクール准教授。2014年には一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会を立ち上げ、2020年からは亀岡市で芸術を使った地域活性化に取り組む一般社団法人きりぶえの立ち上げにも携わるなど、アートとビジネスの境界領域での実践を進めている。

著書に『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』などのハックシリーズ。訳書に『ビジネスモデル・ジェネレーション』など。著書20冊、累計50万部を超える。小山龍介

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