角谷リョウx宮木俊明「快眠が生み出すイノベーションーアンラーンから始まる『変化の自分ごと化』」(3)
角谷リョウx宮木俊明「快眠が生み出すイノベーションーアンラーンから始まる『変化の自分ごと化』」(2)の続きです
お金がなくても幸福度を上げられる「睡眠」
角谷 僕が睡眠を推す理由は、睡眠って無料だから。食事だとやっぱり健康格差があって、収入に比例してしまうところがある。安いのをどうしても買わざるを得ない人って、加工品だったりとかパンとかパスタとか、安い糖質に味付けしたものを選ばざるを得ないところがあります。野菜とかタンパク質は高いんですよね。
運動もどっちかというとそうで、実は運動したい人ってごくわずかなんですよ。それなりのトレーナーつけたりとか、そういう環境に身を置いたりするからできるんであって。食事と運動は、高いクオリティを求めるなら、ある程度お金がないとできない。でも、睡眠に関しては、お金かけなくてもめちゃくちゃ高い質の睡眠がとれるので、失礼な言い方になってしまうかもしれないけど、這い上がりたい人が、なにで幸せになるか、逆転するかといったら、睡眠ちゃうかなっていうのはすごい思います。
宮木 自己投資にあんまりお金をかけたくない人にぴったりですね。
角谷 そうですよ。ちょっと話脱線するんですけど、地元にめちゃくちゃ売れてる布団屋さんがあって、その布団屋さんで聞いた話なんですけど。もう30年ぐらい前かな。お客さんが「うちは貧乏だから高いの買えない」みたいなことを言うんですよ、やっぱり。そうすると布団屋さんがね、「なにを言ってるんですか。お金持ちってね、寝てるときもなにか物盗られたらどうしよう、お金盗まれたらどうしようって、すごい心配で、いい睡眠とれないんですよ。貧乏な人は、取られるもんないから寝てるときがいちばんいい時間でしょう」って。
「起きてるときの不幸を、寝るときに取り返さなくていつ取り返すんですか」って言って、みんな「そうだ、寝るときの幸せのために良い布団買おう」ってばーって売れてくんですよ。貧乏人でよかったね〜みたいな感じで。
宮木 なるほど。
角谷 でも、これ一理あるなと思うんです。寝るき幸福だったら幸福じゃんって。やっぱり、お金持ちっていうか、勝負してる人って、日中幸せだけど、寝るときまで悪夢見たり、どうしよう、どうしようって考えてるじゃないですか。
やっぱり寝るときには「今日一日、なんかいろいろあったけど、まぁ寝るか」って気持ちよく寝たら、プラマイゼロ、同じぐらい幸せじゃないかって思うんです。
宮木 寝れないのつらいですからね。
角谷 幸福度低いですよね。寝るときだけ集中して幸せなのは勝ち組だと思いますよ。
宮木 そういう勝ち方もあるっていうね。
宮木 いま、チャットのほうにも「本読みます」とか、「ハイリスクだった、やばい」とか行動を改善していくんだみたいな気になられてる方もいます。「周囲に影響を与えるのはやばいな、納得です」とか。長年続いた生活習慣を変えるのってすごく大変じゃないですか。
角谷 いやそうなんですよ。そこで、それは睡眠に限らず食事もそうなんだけど、いまなにをすれば健康かとか、なにをすれば痩せるかとか、なにをすればいい睡眠とれるかなんて、どの本にも同じこと書いてあるんですよね。
夜スマホを見るのをやめましょうとか、夜寝る前の酒はよくないよとか。みんな知ってるよ、みたいな。ネットでぐぐれば、いくらでも出てくる。でも、あまりよくないと思いながらやってますからね。
じゃあどうするか、ってことを後半お話しします。その前に、日本人の睡眠がなぜ悪いのかについてちょっと情報共有しますね。
明るすぎるニッポン
角谷 ひとつは、日本の夜は世界一明るいから。街灯も明るいし、部屋の明かりも明るい。日本の部屋の明るさの基準でJISで五〇〇ルクスって決まってるんですよ。五〇〇ルクスの光を寝る前一時間浴びてると、メラトニンの量が六割ぐらいに減っちゃうんです。メラトニンは良い睡眠をつくるホルモンです。
その五〇〇ルクスの光を浴びてるのに、「ブルーライトも浴びてません。スマホも見ません。寝る三〇分前ぐらいには、ちょっと暗めにしました」としても、すでに、メラトニンは六割減ってます。海外だと三〇〇〜四〇〇ルクスが標準だったりするから、メラトニンの量は減りはするものの、九三%程度ですからほぼ変わらないんですよね。
日本でも(明るさを)ちょっと落とすぐらいで三〇〇ルクスくらいになるから、それだけでぜんぜん違います。でも、これって、だれも悪くないんですよね。家の電気をそのままつけてたら(睡眠が)悪くなっちゃったってことだから。
宮木 海外のホテルって薄暗いんですよね。仕事できないんですよ。寝る場所だからってあるのかもしれませんが、そもそもベッドルームに明るさを求めていない。
角谷 そうなんですよね。ライフスタイルの違いっていうか、日本の照明器具ってどこもかしこも割と明るめにセットされてるんだなって感じますね。
とくに白い電気。この電球が日本は圧倒的に多くて、いまでも半分くらいあるのかな。昔は八、九割ぐらい白かったんですけども、いまはオフィスは白で、家だと白と黄色があるっていう感じになってきてたりしますね。
宮木 日本だと白色の蛍光灯がキラキラ、海外だと落ち着いた暖色の光が多いですね。
角谷 色でもメラトニン生成もだいぶ変わります。
宮木 僕ね、明るいのが好きなんですよ。海外のホテルって明るくならないのでちょっとイラッとしたりとかしてて。家の電球も暖色系だったところを、たとえば洗面場とかトイレとか、白色のものに変えたら明るくなって気分いいなとかって思ってるんですよ。でも本当はよくないんですね?
角谷 お子さんがいなければいいんだけど。お子さんは、夜白い光を浴びると睡眠リズムが狂うから。お子さんのためには暖色系にしたほうがいいんじゃないかな。とくに、お風呂に白い電気をつけるって、交感神経が働いてリラックスできないですよ。
いま、流行ってるのは、闇風呂。本にも書きましたが、すごく評判いいんですよ。お金かかんないし。電気消して、風呂入るだけで気持ちいい。キャンドル置いてもいいし。それだけでもマインドフルネスと同じような波形になるんですよ。かなりマインドフルな状態になれるのが、暗闇風呂なんですよ。
宮木 僕もやってみたんですよ。本に書いてあったから。なんかね、すごくリラックスできました。ただ、ひとつだけデメリットがあって、家族が入ってきちゃうっていう。子ども三人いて五人家族で、順繰りにお風呂入るでしょ。電気消えてたらだれもいないと思って、だれか入ってきちゃう。だから、闇風呂やるときは、ご家族にちゃんと説明しておくっていうのは僕からのアドバイスです(笑)。
角谷 いままでなんでこんな明るいところでお風呂入ってたんだろうって、継続率も高いです。まじでオススメです。
宮木 体洗うときはつけて、お湯に浸かるとき消してみたんですよね。
角谷 洗うときも消したら? 真っ暗にはならないですよ、脱衣所の光とか入ってくるし。なんといっても無料ですから、ぜひお試しください。
宮木 むしろ電気代ちょっと節約できませんかね。年間数円くらいか(笑)
眠れないのは遺伝子のせい?
角谷 ふたつめ。心配や気になることがあると寝れないな〜っていうときはないですか。聞いたことあるかもしれないですが、日本人って、不安遺伝子の保有率が世界一高い、ダントツ高いんですよ。
よく自分はすごい悩みがちだって聞くんですけど、一〇人に八人が不安遺伝子を持ってるから、生まれつきなんですよ。
宮木 なるほど。この割合すごいな。
角谷 八割の人が夜悩むのが当たり前なんですよ。だからトレーニングしなきゃいけなくて、ノーマル状態だったら夜悩んで眠れないのがふつうです。だから設定を変えようってことなんですけどね。
宮木 意図的に改善していかないと不安を感じたままになっちゃうっていう人が多いってことなんですね。
角谷 そうなんですよ。不安症が吉と出るか凶と出るか。だって経営者で成功してる人って、みんなネガティブで不安症傾向ありますよね。病的な妄想とのバランスでもあるから、不安であること自体はマイナスではまったくないですよね。ポジティブがいいかと言ったら、それもどうなの、っていうところもあるんで、つまり、不安な遺伝子を持ってるからトレーニングしてこの不安が睡眠に支障を与えないようにするということですね。
宮木 セルフマネジメントできれば、いい部分もたくさんあるってことですね。
角谷 悩まない人って、本当に悩みませんもんね。だから改善されないし、同じ失敗何回も繰り返したりとか。一緒に仕事したくないです(笑)。
座りすぎ問題
角谷 テレワークになってとくに睡眠不調の人が増えました。日本って、もともと座ってる時間が長いうえに、テレワークでさらに増えたから。
座ってる時間が長ければ長いほど睡眠の質って下がるんですよ。これすごい注意。僕らは、テレワークの会社にコンサルで入ることがけっこう多いんだけど、座るマネージメント、ちょっと工夫するだけ睡眠ってぜんぜん変わります。「え、デスクワークが原因だったの?」みたいな。
宮木 通勤がいままで唯一の運動時間だったみたい方も、けっこう周りにいるんですよ。
角谷 歩数もそれなりに関係あるんだけれども、やっぱり、座りすぎがすごく睡眠によくないです。
いま、僕らも連続で座ってますけど、一時間ぐらいすると、血流が二分の一ぐらいのスピードになって血栓ができだして身体に悪いんですけど、その害悪がタバコより悪いとも言われるくらい。オーストラリアでけっこう研究されてるんですけど、座りすぎが原因で死ぬ人がすごい増えてるし、WHOの発表でも二〇〇万人と出されてます。
宮木 これはけっこう深刻ですね。今日、聞いてらっしゃる方のなかにもデスクワーク中心の方もそれなりにいるでしょうから。
角谷 なにか悪いことしてるから睡眠が悪いんじゃなくて、基本的に日本でふつうに生活してて、日本人なら睡眠が悪くなるのがデフォルトだから、後天的にトレーニングしましょう、ってことなんですよね。それを受け入れるかどうかっていう話です。
(4)に続く
角谷リョウ
Lifree 共同創業者・開発/快眠コーチ
NTT docomo、サイバーエージェント、損保ジャパンなどの大手企業をはじめ、計120社、累計10万人の睡眠改善をサポートしてきた上級睡眠健康指導士、日本睡眠学会学会員、日本サウナ学会研究員。
ビジネスパーソンを中心にプロアスリートや大学・高校・中学・小学生、またお受験の睡眠サポートも行なっている。
認知行動療法や心理学をベースにした独自の睡眠改善メソッドによるサポートを行っており、1回のセッション+簡易フォローで不眠症レベルの受講者の約70%が「正常範囲」まで改善。4週間の睡眠改善プログラムにおいては90%以上が「正常範囲」まで改善している。
「人は、強制されても生活行動は変わらない」をモットーに、楽しく自ら自分を変えたくなるようなサポートを追求している。
著書は『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)、『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)。
宮木俊明
コニカミノルタ株式会社 ビジネス開発グループリーダー
Growth Works Inc. CEO
Trained facilitator of LEGO® SERIOUS PLAY® method anddmaterial
6seconds Certified SEI EQ Assessor & Brain Profiler
親子の休日革命 代表
ミッション:社会に挑戦者を増やすために、挑戦者を支援するとともに、自らもイノベーションに挑戦し続ける
大学卒業後、葬儀会社勤務、音楽活動を経て、商社の法人営業として2011年から3年連続トップ営業を達成しつつ、社内業務変革(今で言うDX)でも成果を挙げた。
2014年に創薬研究支援スタートアップとしてディスカヴァリソース株式会社を設立し、代表取締役に就任。大手製薬企業に採用された国内初の研究支援サービスは現在も活用されている。
2019年に教育ITベンチャーにジョインし、No.2として法人事業部門を統括するとともに、自らコンサルタント・講師として、全国の人と組織と事業の成長支援に奔走。
2021年からはコニカミノルタ株式会社のビジネス開発グループリーダーに就任。新規事業開発・人材開発・組織開発の「三位一体開発」による既存事業部発のイノベーションとして、印刷業界全体のDXに挑戦中。
BMIAには2015年から所属し、ビジネスモデル・キャンバスやバリュープロポジション・キャンバスを活用した新規事業開発コンサルタントとして活動開始。
2016年に経済産業省が主催するグローバルイノベーター育成プログラム「始動2016」に採択。イノベーターとしてのスキルセットとマインドセットを磨き、最終選考を経てイスラエル派遣メンバーに選出された。
2017年よりライフワークとして誰一人として親子の時間を犠牲にせず親子の学びと成長を支援するワークショップ・プログラム「親子の休日革命」を推進中。
2019年、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏のソーシャルビジネス・デザイン・コンテスト「YYコンテスト2019」のグランドチャンピオン大会に出場し優勝。日本代表として世界大会への出場決定 (新型コロナの影響で延期中)
2020年にソーシャル・ビジネス・カンパニーGrowth Worksを創業。イノベーションを志向した教育・新規事業開発・人材開発・組織開発の講師・コンサルタント・ファシリテーターとして、研修やワークショップの提供を通じて人・組織・事業・地域社会の成長を支援中。
著書:
『ひらめきとアイデアがあふれ出す ビジネスフレームワーク実践ブック』
『仕事はかどり図鑑 今日からはじめる小さなDX』
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