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「秘密の目的」

インプロゲームのひとつに、「秘密の目的」というのがあります。BMIA会員さんは、応用講座3で体験された方もいらっしゃるかと。

ある行動をとることが期待されているのですが、それを自分だけが知らされていないなかで、シーンをつくっていくのです。

たとえば、Aさんは「弾き語りをする」、Bさんは「りんごをまるかじりする」、そして私は「でんぐり返しする」ことが期待されているのですが、それぞれ本人だけがそれを知らされず、他の2人は知っている。

「Aさんにはこれをやってもらいます」とディレクターからの指示を、Bさんと私だけが聞く。という感じです。

で、シーンが始まります。弾き語りをしたり、りんごをまるかじりすることをシーンの中でつくらないとなりません。さて、どんな場面にどんな役で出たらいいのか。すぐ決めて始めなければなりません。

そして、自分がしなければならない行動を、自分だけが知らないので、とにかく相手の言うこと(オファー)をひたすらに聞いていくことになります。

いま、何をしてほしいと思っているのか、相手のセリフや行動や態度を受け取りまくって、これでもか、と思いついた行動をとにかくする。その間にもストーリーはどんどんと展開していきます。

「また新しいギター買ったの? お兄ちゃん…」と呆れ顔の妹役で出ていくと、お兄ちゃんがしたり顔で出てきてくれるかも。「そりゃそうだよ、俺は音楽に命かけてんだ」とかなんとか。「でもいつも同じ曲ばっかじゃん。もう聞き飽きたよ」とでも言えば、そこですぐ弾き語ってくれるかも。

なんてことを思いついたそばからやっていきます。

注意すべきはもうひとつの「りんごまるかじり」。お兄ちゃんはうまく弾き語りをしてくれるかもしれないけど、そのあとどう「りんごまるかじり」にもっていくのか。

そして、私は何を期待されているのか?

もちろん、その行動をとることが「目的」(そうです、秘密の目的)なのですが、大事なことはシーンをちゃんと成り立たせること。

シーンを作りながら、あれか?これか?とオファーを受け取り、困りながらもいろんな行動をしていくさまが、見ている側からするとおもしろいのですよ〜。

さて、これをなぜ応用講座でもやったのか。

「察する」ということのトレーニングとして取り入れました。「秘密の目的」では、具体的にその行動を伝えるのはNGです。Aさんに「弾き語りしてよ」と言ってはいけない。

同じように、たとえばお客さんのところにヒアリングにいった、営業に行ったとして、さて、お客さんは本当のことを正直に答えてくれるかというと……、そうでもないですよね。特に断りの理由なんかは、「今はタイミングじゃない」とか「ちょうど他社で決めた」とか、相手を傷つけないための断りの常套句が使われることが多いように思います。

またプロトタイプを携えてのヒアリングも同じことが言えるかもしれません。「こういうサービスがあったらいいと思いませんか?」「そうですね、いいですね」って、よほどのことがない限り、私も言います。相手はわざわざこのために来てくれているのだから。それに、まぁ使うかもしれないし。

ーーー本当はどんなことが言いたかったのだろう?

ーーーいま、何を求められているの?

そんなマインドでいるための「秘密の目的」。

あ、もしかしたら私たちの人生も「秘密の目的」なのかもしれませんね。

(文責:片岡峰子)

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