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野上英文x小山龍介「コンサルに活かす戦略的ビジネス文章ークライアントを説得しプロジェクトを前進させる文章力」ーBMIAリスキリング・セッション(1)

【日時】2023年6月21日 19:00〜21:00
【会場】ビジョンセンター品川
【登壇者】野上英文・小山龍介

朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた 戦略的ビジネス文章術 (【BOW BOOKS 010】)中央経済社 (2022/7/30)

小山龍介(以下、小山) 今日会場にもたくさんの人が来ていただいてありがとうございます(笑)。前回もそうだったんですけど、会場はちょっと少なめで、オンラインはなんと180人の申込があります。みなさん、オンラインで、ゆっくりとくつろぎながら聞かれてるのかもしれませんが、会場に来ていただくと、この圧倒的熱量を、体感いただけるんじゃないかなと思います。

野上さん、本当に今日はありがとうございます。リスキリング・セッションについて簡単な紹介をすると、BMIAというこの団体はビジネスモデルのコンサルタントを養成するというミッションで活動しています。認定講座の基礎、応用があるんですが、その講座を受けた後、スキルを磨いていくための機会を多く提供しようということで、そのひとつとしてのリスキリング(最近話題の言葉でもあるので)・セッション。今日は第2回ということになります。コンサルに生かす戦略的ビジネス文章、副題を「クライアントを説得し、プロジェクトを前進させる文章力」としています。

BMIAのメンバー(会員)は、コンサルタントもいて、クライアントを説得する必要がある人もいれば、ふつうに会社で働かれていて、会社内で上司を説得する人もいます。タイトルには「コンサルに活かす」と書いてますけども、広く、文章術について伺っていきたいと思います。

では野上さん、今日はどうぞよろしくお願いいたします。

野上英文(以下、野上) リアルの会場の方もオンラインの会場の方も、はじめまして、野上英文と申します。本日はご参加いただきましてありがとうございます。BMIAリスキリング・セッションの関係者のみなさんも、この会を設けていただいてありがとうございます。

私自身も四〇歳を機に二度目の留学を自腹でしまして、つまりリスキリングをまさに一年ぐらい前までやっていたので、みなさんのようなマインドセットや
行動が大好きです。私自身もそちら側に座っていてもおかしくないと思っています。

平日の大変お忙しいなか、この時間帯からご参加いただいていることに本当に感謝してます。私も精一杯お話をさせていただければと思っています。よろしくお願いします。

小山 野上さんは、朝日新聞でずっと記者をやられていて、ジャカルタの支局長も……。

野上 名前だけなんですけど、駐在員事務所長みたいなものです。

小山 そのあとにハーバードにも行かれたんですね。

野上 正確に言うと2016〜17年にハーバードに会社の企業派遣で留学させてもらって、そのあとに特派員というかたちで東南アジア、インドネシアのジャカルタに三年あまり駐在しました。

その間は東南アジアの主にニュースを日本の読者の方に、場合によってはアメリカに出張したりとかってのもあったんですけども。ジャカルタ支局長の後に、いったん休職してもう一度ボストンに行って、MITのミッドキャリア向けのMBAを私費で留学、修了しました。

小山 記者をやってそのあとMBAを取られた。文章術、さらにはビジネス的な観点からも、文章をどうやって活用していけばいいかということを今日は伺っていけそうです。

野上 はい。いろんな文章術があるなかで、私自身、キャリア二〇年ぐらい、とにかく書くことを専業にしてきましたので、そこで習ったこと、暗黙知を体系化して、MBA的思考でまとめ直して、ビジネスにも活用できるかたちにコンバート(転換)してまとめました。今日のお話もこの本(朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた 戦略的ビジネス文章術 (【BOW BOOKS 010】)中央経済社 (2022/7/30))に書いたことが中心になります。

小山 さっそくいきましょう。今日二時間という時間が決まってまして、実は前回は三時間……。

野上 案内いただいたときに二時間「超」って書いてあって……(笑)

小山 そうなんですよ。そうなんですけど、今日ちょっと諸事情ありまして、残念ですが、二時間ぴったりで終わらないといけないんです。

野上 構成として、前半六〇分で私からの話を中心にさせていただいて、後半は質疑とかご質問を中心に。適時突っ込んでいただければと思います。

小山 ChatGPTのお話もありますね。みなさん、お楽しみに。

野上 どこまで期待に応えられるかわかんないんですけども。
質問、感想等は、随時いただければこちらで拾っていきます。

小山 さっそくオンラインのほうに、「今朝、野上さんのポッドキャスト聞きました」って入ってます。

野上 ありがとうございます。ポッドキャストのMCもやっております。ニュースコネクトという国際ニュースを五分間で毎朝届ける番組なんですけれども、水曜担当MCなので、ちょうど今日でした。あとでその話もします。

AI時代にこそ問われる文章力

野上 さて、冒頭なんですが、これなんのグラフに見えますか[図1]。(右上の)31は、点数です。山なりのグラフがあって、左側がレッドゾーンに入っている。これ、実は、私がアメリカに留学中に自分で英語で書いた職務経歴書を、MITが契約している有料のAIサービスに診断してもらった最初の結果です。一〇〇点満点中、三一点。

[図1]

野上 インパクト、プレゼンテーション、コンピテンシー、それぞれのスコアが出て、クリックするともっと細かい指示があります。アメリカでは実際にかなりこういうツールが使われています。つまり、履歴書とか、職務経歴書みたいなものを送っても、人の目に届かないということです。

人の目に届く前にこれでふるいをかけてるんですね。三一点のまま出しても、そもそも人事担当者に思いを伝えることさえもできない。そういう状況なんです。
AIをどう味方にするのかっていう問題も、いまかなり注目されてると思います。つまりChatGPTで仕事を効率化していく話もあるんですが、ふるいにかけられる、門前払いにあう前のプロセスでAIが使われることも、今後ますます増えるんじゃないかなと思います。
AI時代になっても文章力が問われますよ、という話の例としてお持ちしました。

うまく書けないのはあなたのせいではない

野上 企業さんとかビジネスパーソンを対象に、セミナー、講演をさせていただいてるんですが、だいたいこんな話を聞きます。上司の本音です。文章を読んだときに、「長くて読む気にならない。結局なにが言いたいんだ」と。みなさんもそのように感じられたことがあるんじゃないでしょうか? もしくは読み手に感想や解釈を委ねるケースが散見されると。

一方で、書く側のみなさんも、もどかしさを感じてるんじゃないでしょうか。なにから書き始めればいいのかわからないし、まとまりない文章に時間ばかりかかってしまう……。だけど、安心してください。はいてますよ、じゃないですが(笑)、最初に安心してくださいと言いたい。うまく書けないのはあなたのせいではありません。

これがいちばん最初の私の(本の序章にも書いた)メッセージです。私自身は、たまたま文章を生業にする仕事に就いたので、そういうトレーニングを日々やっていたんですけれども、自分がもしこの仕事に就いていなければと思うと、ぞっとするというか、なかなかむずかしいだろうなと思います。

それはなぜかと言いますと、やっぱり学校の教育ですね。基本的に読み解き中心です。一方で職場では、事実をわかりやすく簡潔に伝えることが求められる。このギャップがあるんですけれども、だれも教える人がいないということですね。職場で文章をしっかり直してくださる人がいればラッキー、というくらいじゃないですか?

小山 私自身は上司にメールをかなり添削された経験があります。一年目なんか、てにをはレベルから出す前にチェックされました。それがいいトレーニングにはなってたんですけども。

野上 おそらく大企業さんだと、そういう余裕があるかもしれないですね。スタートアップであったり、もしくは中小企業さんでは、なかなかそこまで余裕がないという実態もお伺いしてます。

小山 しかも、昔ほど形式にこだわらなくなりましたよね。以前は紙の書類で送ることも多くて、FAXもそれなりにビジネス文章としての体裁が求められていてフォーマットがあったんですけど、メールってフォーマットがあるようでない世界でコミュニケーションが進んじゃう。文章のフォーマットを学ぶ機会は少なくなってるんでしょうね、きっと。

野上 そのとおりです。感想文は「よくできました」と、ポンとはんこを押してもらったらいいんだけど、会社では往々にして「なにやってんだ、もう一回書き直せ」ということになるので、ここにギャップがある。

転職市場で求められるのはコミュニケーション能力

このグラフはですね、アメリカの例で恐縮なんですけども、転職市場でどういう能力が求められているかという調査結果です[図2]。特徴的なのは、定性定量分析や、テクノロジーへの理解、語学力といったものよりも、話す力、聞く力、文章力、プレゼン能力が、上位五つのうち四つを占めているということなんです。

[図2]

野上 これはつまりコミュニケーションです。見る、聞く、話す、理解する。いまこうして喋っていますが、これは口頭のプレゼンテーション能力でもあり、話す力でもあり、即興で文章をつくっているとも言えます。つまり、文章力がベースにあるということです。相手がなにを言ってるかを聞く力も、文章構造を理解したりとか、本質をつかむ力なので、文章力を鍛えれば、みなさんのビジネスにおいても、ひとつなにかプラスになるんじゃないかなと思っています。

小山 (図2を見ながら)これ、ちょっとおもしろいですね。「リーダーに従う」っていうのが上位にあるんですね。アメリカ人は従わないんですかね。

野上 誠実さも入ってますね。

小山 逆に言うと、それができない人が多いので上位に来ることもありますね。

結果を手に入れるための文章

野上 みなさんもお仕事をされてるなかで、案外そういう基礎的なところでストレスを感じたりすることもあるんじゃないでしょうか? 手前味噌なんですけれども、私のこの本は、伝えるべきことを的確にスラスラ書けて、意図した結果が手に入るというものです。ビジネス文章のゴールは、人に動いてもらったり、それによって商談がうまくいったりすること、そういった結果が常に求められていると思います。その結果を手に入れるために文章を書く。そのためには、どういうことに気をつければいいのかということを主眼に書いております。

自己紹介(いま頃かよっていう感じなんですけども)します。JobPicksというキャリア系のメディアの編集長をやっております。これはNewsPicksの姉妹メディアとしてスタートしました。個人でもNewsPicksで連載を持っていたり、先ほども少し出ましたが、ポッドキャストのパーソナリティの仕事をやっております。文章術の講師としての仕事もずっとやっております。

ここまで聞かれて、なんで、お前の話を聞かなければならないんだと思われる方もいらっしゃるかもしれません。もう新聞はオワコンじゃないか。だれも読んでない、と。

小山 新聞、大変ですよね。

野上 ビジネスのサステナビリティ、持続可能性という点では、新聞はたしかに厳しいですよね。
いろんな「書く」プロって世の中に存在するんですけど、私たち(新聞記者)がどういう位置づけにあるのかっていうと、「だれもがすっと読める事実や意見を早くわかりやすく伝える」。これは必ず、ビジネスに直結する、リンクすると私は定義づけています。

なので、みなさんに損はさせません。というか、させたくないので、もうしばらくおつき合いいただければと思います。

(2)に続く


野上英文
JobPicks編集長/ジャーナリスト

2003年から朝日新聞社で大阪社会部、経済部、国際報道部、ハーバード大学客員研究員、ジャカルタ支局長など20年近く記者・編集者を務めた。40歳を機にマサチューセッツ工科大(MIT)経営大学院に私費留学してMBA修了。2023年からNewsPicks for Businessに参画し、同4月にJobPicks編集長就任。NewsPicks+d統括編集者も兼務してメディアの事業戦略と成長を担う。NewsPicksトピックで連載コラムの執筆、News Connectパーソナリティなどを務めるほか、ビジネス文章術やZ世代の働き方などで講演多数。大阪地検特捜部による証拠改ざん事件の調査報道で新聞協会賞受賞。著書に『朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた 戦略的ビジネス文章術』(BOW BOOKS)、共著に『ルポ タックスヘイブン』『ルポ 橋下徹』『プロメテウスの罠4』『証拠改竄』ほか。

小山龍介
一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会(BMIA)代表理事
株式会社ブルームコンセプト 代表取締役 CEO, Bloom Concept, Inc.
名古屋商科大学大学院ビジネススクール 准教授 Associate Professor, NUCB Business School
FORTHイノベーション・メソッド公認ファシリテーター

京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、サンダーバード国際経営大学院でMBAを取得。卒業後は、大手企業のキャンペーンサイトを統括、2006年からは松竹株式会社新規事業プロデューサーとして歌舞伎をテーマに新規事業を立ち上げた。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』に基づくビジネスモデル構築ワークショップを実施、多くの企業で新商品、新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。インプロヴィゼーション(即興劇)と組み合わせたコンセプト開発メソッドの普及にも取り組んでいる。
ビジネス、哲学、芸術など人間の幅を感じさせる、エネルギーあふれる講演会、自分自身の知性を呼び覚ます開発型体験セミナーは好評を博す。そのテーマは創造的思考法(小山式)、時間管理術、勉強術、整理術と多岐に渡り、大手企業の企業内研修としても継続的に取り入れられている。

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