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次世代リーダー育成にビジネスモデル教育が欠かせない理由

どの企業も、次世代リーダー育成が大きな課題になっている。これまでであれば、従来の事業をそのまま継続すれば成長させ続けることができる。そういうときの「次世代リーダー育成」は、昇進試験のようなものになる。出世に必要な既知の知識を獲得しているかどうかをインプットし、それをチェックするような研修である。

しかし今の次世代リーダー育成は、まったく様相が異なる。私が担当しているある企業では、自社事業の問題点をあぶり出し、その課題に対する解決策を事業部長へとプレゼンするという、ほとんど実践と言っていいような内容になっている。

初日は、ビジネスモデル・キャンバスの使い方を学び、いくつかの企業分析を行う。手元にある公開情報を使って、その企業がなぜ競争優位を実現できているのか、高い利益率を誇っているのかということを議論するのである。

写真はイメージです

その企業分析を通じて学ぶのは、設計レベルの知識である。

計画レベルである経営戦略は、そのままでは実行に移せない。そこまで具体的な指示があるわけではない。経営戦略を具体的なビジネスプロセスに落とし込んでいくためには、設計レベルであるビジネスモデルデザインが欠かせないのだ。

経営の3つのレベル

たとえば、営業利益率を5%から8%にあげるという目標が設定されたとする。これは単なるがんばりでは実現できない。メーカーであれば、利益率の高いサービスの比率を高めるなど、事業構造上の変革が必要になる。

このように事業を俯瞰して捉えるビジネスモデル理解というのは、そのまま経営者視点につながる。ビジネスモデル教育が、経営者を育てる。次世代リーダー育成こそ、ビジネスモデル教育が欠かせないのである。

小山龍介

一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会 代表理事

京都大学文学部哲学科美学美術史卒業。大手広告代理店勤務を経て、米国MBAを取得。松竹株式会社にて歌舞伎をテーマにした新規事業立ち上げに従事。2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立し、現職。メンバーの自発性を引き出す、確度の高いイノベーションプロセスに定評がある。翻訳を手がけた『ビジネスモデル・ジェネレーション』で紹介したビジネスモデル・キャンバスは、多くの企業で新規事業を考えるためのフレームワークとして採用されている。

2015年より名古屋商科大学ビジネススクール准教授。2014年には一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会を立ち上げ、2020年からは亀岡市で芸術を使った地域活性化に取り組む一般社団法人きりぶえの立ち上げにも携わるなど、アートとビジネスの境界領域での実践を進めている。

著書に『IDEA HACKS!』『TIME HACKS!』などのハックシリーズ。訳書に『ビジネスモデル・ジェネレーション』など。著書20冊、累計50万部を超える。

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