小鹿かの子

ふだんから空想しがちです。 田舎にひっそり住んでいます。95年うまれ。

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最近の記事

商店街の魔女 その1

町で唯一の飲み屋街のあたりに、半分さびれてしまったような商店街がある。流行りの辛麺屋があると思ったら、すぐそばに畳屋と古美術商が店を構えていたり、シニア世代向けの品揃えをしているブティックの向かいには、ブランドスニーカーの専門店がある。 私のアルバイト先は、この商店街の少し先にある焼き鳥屋である。店主が死ぬほど怖いため、辞めたいが、辞めると言う方が怖いということで、かれこれ3年間続けている。 3年も勤めているとお客さんがぼちぼち私の顔を覚えてくれる。怖い店主の目を盗んでお

    • 右手の人差し指の付け根から

      右手の人差し指の付け根が、チリチリと痛むようになった。よく見ると、直径5ミリ程度の放射線状のシワがある。どうやらその中心点がチリチリと痛んでいるようだった。 こんなシワあったかしらと思い、じっと手を見るが、元々こんなものだったような気もしてくる。何だかキモチワルイ感じがして、痛みとシワについては考えるのをやめようと思った。思ったが、チリチリと微弱な痛みは四六時中続き、利き手であることも相まってなかなか頭から離れない。 電車の吊り革を掴んだ時、PCのマウスを握る時、包丁を手

      • 平日日記 誰かと住むということ

        家族以外の人と同じ家に住むようになって、そろそろ半年が経とうとしている。家族だって他人だけど、家族は、物心つく前の何もできない私と過ごしてきてくれた歴史がある。 そう考えると、今一緒に過ごしているあの人は、たかが5年程度の私しか知らない。意識もしっかりして、他人にこう見られたい、とある程度装うことが出来てから出会った、正真正銘の他人だ。他人だからこそ、大切にできるし、一方で雑に扱ってしまうこともできる。 誰かと一緒に住んだら、家事が半分になって時間が増えると思ったけれど、

        • 平日日記 植物万能薬

          ソフォラリトルベイビーという小さい木が、毎日葉をハラハラ落とす。リスザルの小指の爪みたいな、小さな小さな葉だ。落ちた葉を卓上ちりとりで取っては捨て、また葉が落ちては捨てを繰り返している。こんなに葉が落ちているのに、なぜか葉は生い茂っている。わたしが知らないあいだに新しい葉が出ては、古い葉と入れ替わっているのだろう。人間の細胞みたいに。 ひと月前には、葉ダニにやられて萎れていたけれど、四方八方に枝を伸ばし、絡まり合い、元気いっぱいの姿を見せてくれている。枝から緑の突起がにゅる

        商店街の魔女 その1

          わたしと(壊れかけの)コニカ

          私が持っているフィルムカメラは、ボロボロのおんぼろコンパクトカメラだ。 ネットの中古で1万5千円。コニカミノルタがコニカとミノルタだった頃の、可愛いKonicaC35。 実物を見て買った方が良いと、色んなサイトに書かれていたけど、まあとりあえずこれくらいの値段なら、使えなくてもインテリアとして上々だろうと、よく考えもせず買った。 フィルムを入れるために裏蓋を開けると、何かの破片がパラリと出てきた。レンズを覗き込むと、少し見えづらい。見えづらい時に、少しカメラを傾けて振っ

          わたしと(壊れかけの)コニカ

          言葉は転がり続け

          簡単なことがきっかけで喧嘩になってしまう。 ほんの少しの言い回しの選択や、声のトーン、目線、手元の動き、呼びかけたタイミング、等々。 何でもない内容で、時によっては楽しい冗談になるような話なのに。今朝は、言い回しが悪かったみたいで、少しだけ諍いになった。 最近、こんなことが増えた。 長く一緒にいると、気を付けていても気遣いや遠慮がなくなってきているみたいだ。とても大切に、尊く思っていて、彼の存在が既に自分の生活ないしは人生に組み込まれていることは、変わらないのに、毎日

          言葉は転がり続け

          平日日記 9月の終わり夏の終わり

          6時20分起床。 膝下と腰と肘と手首をぐーんと伸ばして、勢いづけて起き上がる。隣で眠る同居人は、私の起きた気配に気が付いていない。 こそっと寝室を抜け出し、電気屋のお兄さんに唆されて導入したウォーターサーバーの水を飲む。一晩でしおれた身体に水分が行き渡って、目が冴える。ベランダの窓を開けると、随分とひんやりした空気が部屋に流れ込んできた。11月みたいな空気だ。鈴虫が、本当に鈴みたいな声で鳴いている。静謐な朝だなあと思った。 今日の弁当は昨日準備していたスパイスカレーなの

          平日日記 9月の終わり夏の終わり

          たのしい生活

          休みの日の朝に雨が降っているのも良いものだが、お洗濯日和だなあーと思えるときの方がなお良いと思う。 今週末はとにかくよく晴れた。 ベランダに1番近い木にヒヨドリがとまっていて、けたたましく鳴いているのを聞き目覚めた。カーテン越しに、外の明るさを感じる。 この数週間、土曜日に出勤する必要があり、週末に連続して休みを取れなかった。今週末は、久々の土曜日休みで、しかも三連休だった。目覚めた瞬間から充実感に満たされ、ぐーっと背伸びが気持ちいい。 隣でまだ眠りこけている恋人の口

          たのしい生活

          よるは散歩

          数週間前まで、夜遅くまで蝉がないていたけれど、ここ最近は秋の虫の声に入れ替わっている。空気も少しひんやりしている。 夕食と入浴を済ませ、寝る準備がだいたい終わってから、恋人と散歩に出掛けるのが好きな時間だ。散歩の途中で、ふらっとコンビニやスーパーマーケットに寄り、購入したものを片手に、歩いたりベンチに座ったり。 前まで住んでいた福岡の家の近くには、那珂川という河川が流れていた。行政によって親水空間としての通路やベンチが整えられており、夜でもランニングや犬の散歩などを目的に

          小さな季節を見つけたら

          8月31日。スマホの待ち受け画面を見て驚いた。もう8月が終わるのか。 1年のうちに、何度か「もう今年が終わっちゃうなあ。」と思うタイミングがある。 まずは年度末の3月。怒涛の年度末業務をこなし、ああやっと解放される、と思ったタイミングで、今年がもう3ヶ月も終わったという事実に頭を抱える。 次に6月。もう半分が過ぎてしまったことにびっくりする。 そして8月末だ。夏休みの終わりは、今年の長期休暇の消滅を意味する。(と思っている) 大きいこと、何も出来なかったなあと考えて

          小さな季節を見つけたら

          山裾の家にて

          今住んでいる家は、すぐそばに山がある。ソファに座って外を眺めると、緑の斜面しか見えず、空は見えない。林縁部に、背の低い草本類が競うように伸び、濃い緑の風景が出来上がっている。 植物はとても強い。この物件の内覧をした3月下旬には、まだ土肌が見え、見窄らしい景色だったのに。 暖かくなるにつれ、いくつかの植物が花をつけ、カナブンなどの昆虫たちが花粉を運んでいる姿が頻繁に見られた。梅雨の時期には、ぐんぐんと草丈が伸び、葉の色も一層濃い緑になった。7月、8月以降は夏の日差しをうけ、

          山裾の家にて

          すぐ辞めることをやめたい

          なんでもすぐ投げ出してしまう。わたしのコンプレックスだ。 大学の頃はバイトをコロコロ変えた。どの職場に対しても、行きたくない気持ちが石みたいに積み重なって、その重さに耐えきれなくなり辞めてしまう。我慢の効かない性格に、毎回落ち込んでいた。 新卒で入った職場も、3年で辞めてしまった。恋人の転勤が直接的な原因ではあったけど、辞めざるを得ない、となった時かなりホッとした。正当な辞める理由ができた、と思ったのだ。 彼の転勤先の土地で、新しい仕事を始めて1ヶ月が経った。まだまだ1

          すぐ辞めることをやめたい

          恵比寿と夜のあんこ(よなよな/佐賀大学のそば)

          角を曲がると、大抵ひょっこり恵比寿さまが座っておられる。愉快そうにふくふく笑って、まるで一切合切それでよいのだと仰っているようだ。 佐賀市内には820体以上もの恵比寿像があるらしい。どおりで、いつも誰かの視線を感じるわけである。 御多分に洩れず、自堕落な大学生活を送っている私であったが、こういう神様的なものはちゃんと信じるタイプであったので、いつも見られている感じがするというのは大変居心地が悪かった。 * * * 金曜日の夜のアルバイトを終え、賄いを平らげ、帰

          恵比寿と夜のあんこ(よなよな/佐賀大学のそば)

          カレーノスタルジー(佐賀駅/カレーショップ南陽)

          特別でも何でもなかったお店が、ふと気づいたら食べられなくなっている。ここ数年、こんなことが多いなと思います。 例えば大学時代の思い出のカレー店。薄暗く、お昼時が過ぎてお客さんのまばらな店内、いつ行っても何かしらのカレーが売り切れてしまっていて、選択肢がなかったりします(これは私の来店時間が悪いのだけど)。謎のラインナップの雑誌がラックに並んでいます。 福神漬けとラッキョウと、それらをつかむためのミニトングが、ひとつの道具に乗ってやってきます。あの道具は、カレー店にしか需要

          カレーノスタルジー(佐賀駅/カレーショップ南陽)

          はじめてのウインナーコーヒー (福岡/大濠公園駅 珈琲フッコ)

          あるあるだと思うのですが、ウインナーコーヒーって、ウインナーが煮えられて放り込まれたものだと勘違いしていました。 初めてウインナーコーヒーと出会い、ウインナーの意味を理解したのは22歳の冬、ここ珈琲フッコでの出来事。 地下鉄に乗って大濠公園駅に降り立ち、ハイソな雰囲気の女性やスポーティーな格好の男女、何とも賢そうな犬を横目に、信号を一つ渡り、大手門第一法規ビルのある角を曲がると、小さな路地です。この小さな路地に、フッコはそっとあります。 木の看板に珈琲フッコとあります。

          はじめてのウインナーコーヒー (福岡/大濠公園駅 珈琲フッコ)

          福岡/天神 TOKIO

          パフェの語源はPerfectだと聞きました。真偽はともかく、とても納得。たしかに完璧な食べ物です。 TOKIOは福岡天神、イムズの地下1階にあるフルーツパーラーです。フレッシュなジュースをテイクアウトすることもできます。 中学に進学し、初めてファミレス以外のパフェの味を知ったのがこのお店。祖母と母に連れられたショッピングの最中に、少し休憩しようと連れられて入りました。 TOKIOは、九州で約80年もの歴史がある果物の輸入卸の会社である「南国フルーツ株式会社」さんが展開す

          福岡/天神 TOKIO