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小豆島合宿!(3/28〜29)

一昨日と昨日にかけて、俺の所属する創作サークルで小豆島合宿があった。今回は日記としてそれについて書こうと思う。

京都駅から始まった合宿は、早々トラブルが発生した。今回の旅程では往復共にJRを使って京都〜姫路間を移動するので、当日の朝に学割きっぷを入手しておく算段だった。しかし京都駅の予想以上の混雑にきっぷの購入が遅れてしまい、予定の電車を乗り遅れてしまった! 春休みの京都、恐るべし。結局一本次の電車に乗っていったけど、後のスケジュールがややキツくなってしまった。
電車内ではめいめいが好きに座って、姫路までの時間を過ごしていた。俺も隣に座った会員ととりとめのない話をしていた。会誌に載せた小説の話とか、香水についてだとか、あとは車窓に流れる景色にぱらぱら適当な感想を言ったりだとか。姫路に着いたのは出発から一時間半ほどが過ぎた頃だった。もうお昼頃。結構お腹が空いていた。
駅で軽食を見繕ったり遠方に見える姫路城を写真に収めたりした後、姫路港行きのバスに乗った。電車を一本遅らせたツケはここで回ってきていて、俺たちはフェリーに間に合うギリギリのバスを乗らざるを得なくなっていた。バスが何らかの原因で遅延するとフェリーに乗られるか怪しくなってしまう。この時間が合宿の中で一番ドキドキしたな。結局バスは五分ほど遅延したが、合宿係の会員が迅速にフェリーのチケットを手に入れてくれたおかげで間に合った。よかった!

姫路港と小豆島を結ぶフェリーはポケモンとコラボしていた。船の(内外を問わず)至るところにヤドンの絵が描かれている。机もモンスターボールの絵柄になっていた。でもどうしてヤドンが……。

船内にはガラルヤドンもいる

船内では買った軽食を食べたり、甲板に出て海を眺めたりしていた。あとは会員たちがボードゲームをやっているのを眺めたりかな。ひよんなことからシュレディンガーの猫が話題に上がり、それについて先輩と議論もした(ラプラスの悪魔についても)。専門外のことを専門家に好き勝手訊ねるのは楽しい。また、先に現地入りしている先輩がビールを飲んでいる写真を送ってきたので、こちらも対抗してスーパードライを飲んだ。やっぱり船の上だと酔いやすい気がする。
乗船時間は二時間弱ほどだった。小豆島の福田港に着く。その頃にはもうポツポツと雨が降り始めていた。港の駐車場に待機していたホテルの送迎バスにそのまま乗り込み、とりあえずホテルへ向かう。車窓に小豆島の景色が見える。
実のところ、俺は一度小豆島に来たことがあった。一回生のとき、ひとり旅だ。当時は自由律俳人・尾崎放哉の足跡を辿ることが主目的だった。だからそれらしい観光は今回がはじめてだ。

十六時ごろホテルに着いて、先乗りしていた先輩と合流する。今回はふた部屋あり、どちらも和室である。そこに五人と四人で分かれた。俺たちが泊まったホテルは全面オーシャンビューを売りにしており、俺たちの部屋からもなるほど海がよく見えた。しかし空は曇天に雨が降り、海も時化っている。外に出ようと思わせるような天気ではない。十九時半から始まるディナーバイキングまで、みんなで部屋でのんびりしようということになった。俺は無料貸出品のボードゲームをした。立体四目並べ。言葉通り、五目並べの立体・四目版である。縦・横・斜めのいずれかで揃えばいいから、考えることが多くて大変だった。ちなみに戦績は一勝一敗。
十八時すぎに大浴場へと向かった(その前に、タオルを部屋に忘れたまま部屋から締め出されかけるという小事件も起こる)。そこでは様々な種類のシャンプーから好きなものを選べる仕様になっており、なかなか珍しいと思う。大浴場自体はよくあるシンプルなものであり、シャワーと室内風呂、露天風呂、サウナ。湯加減も程よかった。しかし、雨足強まる天気の影響で露天風呂は出入り禁止になっていた。ちょっと残念。
湯上がりは浴衣に着替えたり、量った自分の体重のあまりに心許ないことに落ち込んだり。洗面台には小豆島のオリーブオイルを使った保湿液が置いてあったので、試しに使ってみた。オリーブ感があるとは思わなかったが、心なしお肌がぷるんとしてる感じがする。

十九時半になり、地下一階のバイキング会場へ向かった。それなりの広さで、食事の種類もたくさんある。定番の揚げ物やサラダがあるだけでなく、その場でオーダーしたネタを寿司にしてくれたり、地産のオリーブオイルでフライを作ってくれたりするコーナーもあった。そして何よりお酒が飲み放題! 種類もたくさんあった。俺はビールと熱燗を頂いた。
部屋に戻ったあとも相変わらずぐうたらだった。一応ふた部屋に分かれてはいたけれど、結局会員九人が全員同じ部屋に集まって駄弁っていた。先輩が持ってきてくれた日本酒を呷りながら、ある人はボドゲに興じたり、またある人はアニメを見たり。あとは今度の会誌に載せる絵を描いてた人もいたな。うちのサークルの合宿は(普段の活動と同じように)自由でゆるいので、各々がやりたいことできるのいいよね。
日付を超えたあたりでぽつぽつ寝落ちする人が出てきたので、一時すぎに消灯した。なんやかんや疲れていたしお腹もいっぱいだったから、俺もすぐ眠りに就いてしまった。

起きたのは六時半ごろ。その頃には既に二人ほど起きていた。本当は六時に起きて朝風呂に行く予定だったんだけど、ちょっと厳しそう。まぁお布団がふかふかだったし仕方ないよね。七時になって、寝ぼけ眼で朝食会場へ向かう。夕食と同様にバイキングで、料理数も同じくらい多くあった。手作りおにぎりや、マイ醤丼のコーナーも。もちろんお酒はないけどね。夕食ほど多くは食べられなかったが、それでも普段に比べたら結構食べたと思う。昨晩摂取したアルコールが肝臓を攻撃していたからかトマトやあら汁がやけに沁みた。
部屋に戻ると、窓の外、空が晴れていることに気がついた。雨は夜明け前に止んだらしい。霽れた海は日光を反射してきらきらと輝いていた。

晴る

会員の一人がまだ寝ていたいと零したので彼だけ残して、俺たちは九時頃にホテルをチェックアウトした。島の南西にある大きな街、土庄へ向かう。車窓に景色が流れ、次第にそれは俺の見知ったものになる。二年前のあの頃通った景色だ。あのとき、はじめて小豆島に訪れたとき、バスを逃してへたり込んでいたら地元のおじいさんに車で拾ってもらったことがあった。俺は当時と同じ道のりを辿っている。蕪村が芭蕉を辿ったように、あるいは十九の俺が放哉を追いかけたように。
三十分ほどで街へ着いた。まず世界一短い海峡である土渕海峡を訪ねる。一見ただの川にも見えそうなほど細い海峡だ。橋を見下げた水の色が緑青で、ようやくそれが海であることに思い至った。

街中に急に現れる

その後、十分ほど歩いてエンジェルロードに向かった。干潮時に現れる、離れた小島に通じる道。おそらく小豆島で一番有名なんじゃないかな。大切な人と手を繋いで渡ると願いが叶うらしい。あいにく道は閉じてしまっていたけれど。いつかあの人と来たいなと思う。その側にある丘の上に置かれた「恋人の聖地」なる鐘もついでに鳴らしておいた。

海水は意外と冷たくない
男どもで聖地巡礼

エンジェルロードを出てからは二手に分かれた。土庄港へ向かいつつ昼にはオリーブ公園へと移動するグループ五人と、しばらく土庄に残って「からかい上手の高木さん」の聖地巡礼をするグループ三人。俺は後者に入った。「高木さん」めっちゃ好きなんだよな。中学生の背伸びしない恋愛ってとてもキュンキュンする。距離感が絶妙だからかな。
俺たちのグループもとりあえず土庄港へと向かっていたのだけれど、その道中に放哉記念館の近くを通った。二年前にも訪れた場所だ。スルーしても良かったが、次来られるのはいつか分からないので、放哉のお墓参りだけでもしておくことにした。二人には後で合流すると伝えて。尾崎放哉の墓は、山の斜面に張り付くように並んだ墓地の最奥にある。教科書にその句が載るような有名人にしては墓は小さい。彼は島民からは嫌われていたらしいからな。学歴を鼻につけ、酒癖は悪い。そんな彼は島民から当然のように疎まれ、終生は孤独のうちに死んだ。「咳をしても一人」「こんな良い月を一人で見て寝る」彼は何を思っていたのだろうか。
墓地の麓に佇む尾崎放哉記念館は彼の終の住処である南郷庵(西光寺の奥の院)を改修したものである。小さな庭には彼が好きだった木蓮や胡桃の木が植えられていた。正面からそれを眺めていると、やっぱり入りたい気持ちが湧いてくるものだ。庭で掃き掃除をしていた初老の女性に声を掛け、見学をさせてもらった。入館料は二百円。中は二畳の玄関・炊事場と、襖を隔てた八畳間、一段上がって六畳間。壁際にはガラスのショーケースに隔てられた展示品が並んでいた。「入庵雑記」や「入庵食記」、井泉水に宛てられた手紙など。そのラインナップは二年前とほとんど変わらなかった。山頭火の死亡届も同様で、あの頃からやけに印象に残っていた。「山頭火松山一草庵にて往生す」。たしかこんな感じのことが書かれていた。でも山頭火より放哉の方がずっと早くに亡くなっていたから、あれは放哉宛ではないはず。井泉水宛とかかな。ちなみに俺の見学中に、さっき別れた五人もたまたま入ってきた。

南郷庵。「みなんごあん」と読む

記念館を出て、急ぎ足でさっき別れた二人を追う。彼らは既に土庄港に着いているらしかった。そういえば俺は土庄港にも来たことがあったな。土庄港は放哉が島に降り立った港で、その際「目の前魚が飛んでみせる島の夕陽にきて居る」という句を詠んだそうだ。その句碑も港の陰にある。
港で二人と合流して、本格的に「高木さん」聖地巡りに向かう。まずは港の建物にある「とのしょうBASE」。高木さんの立体パネルや交流ノートがあった。ついでにお土産センターで、高木さんコラボのオリーブオイルも買った。結構高かったけど!

等身大?

そのまま港でレンタサイクルを借りた。二時間後のバスの時間までに目いっぱい聖地を回れるように。ここからはサクサク聖地を紹介していこうかな。
まず土庄港にあるオブジェ。高木さんと西片が高松に向かう船に乗る待ち合わせをした場所。

高松に向かう船がちょうど出た

次に本屋さん。西片が隠れて少女漫画を買ったら、高木さんと鉢合わせた場所。冷やかしになると良くないので、店内に入って『氷菓』の原作小説を買った。実のところまだアニメしか見てなかったからね。

BOOKSことぶきというお店
ザ・街の本屋さんって感じでいい雰囲気

次は街沿いにある図書館へと向かった。夏休みに、高木さんと西片が一緒に勉強した場所。あいにく写真は撮ってないけれど。比較的新しい建物なのか小綺麗で清潔感があった。また、図書館の敷地には蔵を改装した尾崎放哉資料館があり、そこも少し見学させてもらった。放哉直筆の資料がある。実は二年前訪れた際には開いていなかったため、そこを訪れるのは今回が初めてだった。良い体験になったな。
そこから街を外れて急な坂道を登り、樹齢千年のオリーブ大樹を訪れる。三期のティザービジュアルに映っていた場所。そこはホテルを併設した施設へと改装されているらしく、観覧には一千円もかかってしまった! 美味しいオリーブ茶は飲めたし、海を展望するテラス席にも行けたんだけどね。オリーブの木も大きく剪定されてしまったらしく、姿はかなり変わっていた。あまり聖地巡礼という感じはしなかったかな……。

ち、ちいさい……
景色はめっちゃいい

街に戻るついでに、鹿島明神社に詣でる。「高木さん」でよく出てくる神社だ。映画にも出てきたかな。そこでは「高木さん」が激推しされていて、ファンが多く訪れた形跡も残されていた。でも荒らされた形式はほとんど全くなく、民度いいなぁと思う。

エモすぎる

土庄港に戻ってレンタサイクルを返す。動き回って流石にお腹が空いたけど、バスの時間も迫っていた。みんなで行こうと決めていたそうめん屋さんに向かってみると、何人も並んでいる! 結構待つらしい。しかし店員さんに訊いてみると、テイクアウトなら割合早く料理が出るらしい。三人とも生そうめんを頼んだ。
バスの時間とはギリギリの戦いだったけれど……間に合わなかった。バスの出た二、三分後に料理は届いた。間に合わなかったものはしょうがないので、三時に出る次のバスまでゆっくりすることに決めた。観光センターの裏手にあるテラス席で生そうめんを食べる。暖かい日差しの中自転車を漕いでいたら結構汗をかいてしまったので、ついでに地ビールも買って飲んだ。沁みる〜!

普通の素麺より断然もちもちで、格段に美味しい
地ビールも日本酒のような味わいで美味しかった

残りの時間でお土産を見繕って、バスに乗る。オリーブ公園に向かうバスだ。二十分ほどで到着する。公園は坂に沿うように広がっていた。外れにはギリシャ風車がある。聞くに小豆島はギリシャのミロス島と姉妹島にあるらしい。風車の周りには箒に跨ってジャンプしている人たちが散見された。小豆島は実写版魔女の宅急便の舞台らしく、インスタ映えもするのだとか。映えの対極にある俺たちはしなかったけどね。

確かに異国情緒はある

公園にあるお土産屋さんをぶらついて広場に向かうと、見知った顔たちが箒に跨いではしゃいでいた。……あんたらはそれやるんかい。エンジェルロードで別れた五人と、ホテルで寝ていた一人がそこにいた。背中から声を掛けて合流する。彼らは昼頃オリーブ公園に着いてご飯を食べた後、ずっと日向ぼっこしてたりお昼寝したりしていたらしい。ジジイすぎる。九人で集まって駄弁っているとバスの時間が来てしまったので、集合写真だけ撮って公園から退散した。

バスにしばらく揺られ、五時ごろに福田港へと戻ってきた。そのままフェリーに乗り込む。みんな流石に疲れているようで、喋ったりボードゲームしたりする人はいなかった。本を読んだり絵を描いたり眠りこけたり、めいめいがのんびり過ごす。六時過ぎ、ふと会員が何人かいなくなっていることに気づいて、甲板に出た。見ると西の海に夕陽が沈みかかっていた。消えた彼らは夕陽を見に行っていたのだ。俺も彼らに並んで、瀬戸内海に落ちる夕陽を眺める。俺はそれも見たことがあった。もちろん二年前。放哉の句に人生の意味を求めたあの旅。あの頃は今よりも青く、視野狭窄で、熱があった、尖っていた、と思う(未だ二十一歳のクソガキが何を達観したことを、と思うかもしれないが)。あのときに見た夕陽はなんだかとてもノスタルジックで、悲しげで、俺はそこに青春の終わりさえ重ね合わせていた。でも今は違う。もちろん目の前の夕陽は相変わらず綺麗だけど、それはただのよくある夕陽だ。明日もまた登り、そして沈む夕陽だ。そこに特別な意味を重ね合わせはしない。現に青春というものは終わっていないし、サークルの友達と巡る小豆島の旅行は楽しかった。
そんなことをあの頃の俺に言ったら、お前は間違っていると否定されるんだろうなと思う。でも今の俺はあの頃の俺を否定しない。まぁ、つまりそういうことだ。

斜陽

往路を逆向きに辿り、七時ごろに姫路に戻ってきた。一応そこで解散となる。締めの一本を取って、合宿はおしまい。その後は何人かで姫路のガストに行き、九時前発の新快速に乗って京都に戻った。車内でみんなと創作の話をする。社会に出ても、俺は小説を書き続けることができるのだろうか。そんなことを思う。きっとそれはとても大変なことなのだろうと思うが、今年卒業して就職する先輩にはこれからも続けて書いてほしいなと思った。

十一時に京都の下宿に戻って、完全に合宿は終わった。一泊二日の旅行、本当に楽しかった。もう次の夏合宿が楽しみになってしまった。
改めて、合宿係のTくん、お仕事お疲れ様でした!ありがとう!(届け)

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