トラックの事故

私自身、今は日銭稼ぎでトラックに乗っていますし、数年前までは中距離運送でこの阪神高速も走っていました(下道がメインでは有りましたけど)。
今回は、現役トラック運転手として、ここの事故について少し解説していこうと思います。
自分もトラックに乗ってますから本当に人ごとではない話ですし。

いわゆるサンドイッチ事故

今回の事故は、いわゆる「サンドイッチ事故」。
玉突き事故の1つですが、真ん中に挟まれた車が前後より剛性が弱いとそれらの衝撃を全部もらってしまって大破するケース。
今回は前がローリー、追突した側が大型トラックなので、真ん中の軽が大破したケースです。

軽自動車だからだめなのか?否!!!

実は、X(旧Twitter)上では、軽自動車だからだめなんだ(通常自動車ならなんとかなった)、的な事を書いている人が居ますが、結論からすると

戦車でも運転席は厳しい可能性がある

事故と言えます。
同様の事故でハマーとかの(かなり頑丈系)の車のサンドイッチ事故の車両写真を調べてみましたが、(後席はかろうじてセーフでしょうが)運転席は間違いなくアウトでした。
戦車は砲台の関係でかなり前よりの席の位置で、(あえて誤解を恐れず言うなら)軽トラと同様の位置みたいなもの、軽トラとの違いは装甲板がかなり丈夫なので、ワンちゃんセーフかもぐらいのレベルです。

ですから、軽自動車だからだめとかそういう問題ではすでに有りません。
後述しますがスーパーカーだったら余計にだめでしょうね。

軽量化と安全性確保はある意味矛盾する

おまけに、最近は衝突安全性の確保(キャビンの剛性強化)と燃費の向上(軽量化)という、ある意味かなり矛盾したジレンマとメーカーは戦っているのが現状です。
最近あった三菱の燃費改ざん問題なんかでも、裏では言われていた話ですが、三菱側は車両の安全性を確保したかった(三菱の良さはとにかく丈夫)。でも燃費が悪いのはセールスとして他社に負けてしまうことになる、というのが遠因だと。
三菱は元々エンジン自体もすっごく丈夫で、超昔々のミニカやミニキャブじゃなかったら、本当に故障に強いいい車なのです。
燃費で言うならスズキなんですが、裏で言われているのは「いい車なんだけど鉄板(フレームやドアやボディの外板)の厚が薄い」。キャビンの剛性は確保できてるのでしょうが、クラッシャブルな部分(エンジンルーム)の剛性もある程度確保できてないと走行時にヨレて正直運転が怖いことがあります。2000年代前半までのスズキ車はまぁまぁ良かったのですが、最近はそういう点でかなり(見る人が見ると)粗がでてると言います。
また最近のスポーツカー(テスラなどのEV含む)は、軽量化を推し進め、アルミボディにしていたりする車がありますが、アルミボディはぶつけたら全交換です。板金がきかないのです。
ついでに御存知の通り金属としては鉄より柔らかいのです。
これでそんな車がこのようなサンドイッチ事故に巻き込まれたら・・・
想像したくもないです。

また最近はトヨタ車でも一部のボディの外板をプラスチックにしているようですが、これ鉄板モノよりリサイクルが大変です。
まぁ修理屋でも基本外板は凹んだら交換するのが多いですから、そういう点でどうせなら軽量化もできるし、でやってるんでしょうけれども、隠れた強度的には落ちるので、私はう~ん、と思ってます。

トラックへの追突あるある(潜り込み事故)

今回はサンドイッチ事故なのですが、一番前のトラックからみたら、軽自動車が突っ込んできた形です(実際は一番後方のトラックが軽自動車を押し込んでしまった)。
トラック(特に4t前後から上)への通常自動車の追突としてあるあるなのが、いわゆる「潜り込み事故(もぐりこみじこ)」と呼ばれるもの。
これはトラックのリアは結構下側がスカスカなので、事故の衝撃でそこに車が潜り込んでしまうんですね。
勢いやパワーが強いと乗用車のAピラーなんて簡単にちぎれます(ボンネットから上を荷台で削ぎ落とす形になる)。そうなると死亡率が上がります。

ならばそのスカスカの部分丈夫にしたら?っていう人がいるかも知れませんが、トラックはリアオーバーハングが長いため、下手すると坂道などの入り口などが急になっていると、リアが引っかかってしまうことがあります。
これがよくあるのがいわゆる「収納ゲート(折りたたみゲート)車」で、工場の前に比較的急な坂などがあるとリアが引っかかって入れないトラブルがあったりするんです。だからといってホイールベースを長くして(リアオーバーハングを消して)しまうと、今度は小回りがきかなくなります。交差点でもかなり大回りしないと入れなくなる恐れがあります。
最近は荷下ろしの関係もあって底床トラックが増えたので、そのトラックなどは結果的に潜り込み事故に対する1つの答えだと思いますが、坂道などのクリアがしにくくなってしまっているはずなので、時折ある山奥?の配送センターなどへの配送は大丈夫なんだろうか?と思ってしまいますね。

話を戻しますが、潜り込み事故は全高の低い車両ほど起きやすいと言えます。ですからスポーツ系の車は起きやすいと言えますね。
スーパーカーは見事にそれに当てはまります。

高速道路の作業車両で、路上停止、低速走行が多い車両は、後ろにバカでかい ”箱” をつけていますが、衝撃吸収と同時に潜り込み事故も防ぐ役割を担っているそうです。(ちなみにあれだけで200万かかるらしいですよ)

ではどう対策をとれば良いのか

これは正直、前後の車両、道路状況を判断するしか有りません。
リアからの状況は警告できても、相手をコントロールはできないからです。

例えば、私なら、前後が大型トラックってのは(通常車両にとっては脅威でしかないので)避けて可能であれば車線変更します。
また、同じ渋滞状況なら、一般道のほうが可能性は低いので、あえて遅くなるのを承知の上で一般道というのもあります。
基本高速道はトラックは結構飛ばす車両が多く、長時間運転や”隠れた疲労”もあって、こういう断続渋滞時が一番事故を起こす確率が高いとされています。
渋滞の最後尾は特に危険です。
なので私は渋滞の最後尾になりそう、かつ後ろが大型車の場合、あえて煽られるのを覚悟でかなり前からスピードを落とすか車線変更でやり過ごすかにします。
また、カーナビに頼りすぎるのも危険です
カーナビはそのあたりを考慮せず、距離、必要金額的な観点でしかルートを探索しません。なので自分の頭もルート探索させるぐらいの感覚で使うことをしないと危険は回避できないと思います。
どうしてもそうなってしまった場合は、リアにオーバーアクションでのアピールが必要です。
ハザードを点滅させるなり、ある意味無駄に(ランプを付けるだけの軽い踏みで)ポンピングブレーキをしまくるってのも一手です。
とにかく、常に周囲の状況を的確に判断することは大事なことです。
(私はこれ、自動車学校で嫌というほど叩き込まれました、なにしろ私におしえてたのは私の叔父でしたからね)

実は最近のトラックに私は乗ってますが、一応距離警告システムはついてます。危険な距離になったらブレーキも入りますが、かなり近い距離でないとブレーキが掛かりません。(衝突回避というよりプリクラッシュ)
あくまで ”ブレーキを踏むのはドライバー” に主体が置かれたシステムなので、ドライバーがよそ見してたりしたら話になりません。
また、トラックからみたら一般車両は「正面」にあるのではなく、「見下ろす」形になるので、距離感を掴みづらいのも事実です。ですから近くに来てヤバイ!でブレーキ踏むってこともありえます。

そもそも基本的に、距離警告を含めたアクティブセーフティシステムが付き出したのはここ数年生産された車からで、それ以前のトラックはそういうものが一切ついていない古い車のほうがほとんど、古いのに慣れてるベテランさんだとそういうシステムをウザがる人も居ます。
また、前述したように”隠れた疲労”から、フッと気が抜けた瞬間に事故ることも十分にありえます。
このあたりは人によって大きな差があります。
睡眠なども、最近は時間基準では疲労回復の判断が難しくなってきているので、とにかくそういう車を背(後ろ)にしない努力は必要です。

すべての本質を理解しておけば、ある程度はありますが事故を回避することも可能ですし、浅はかな知識で余計な発言をして問題になることもありません。
正直、昔の日本人より、そういう面で退化してしまったような気がしてなりません。


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