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なぜアロマセラピーがホスピスで利用されるのか

多くのホスピスでアロマセラピーボランティアが導入されています。なんででしょうか?ホスピスに入院されている患者様の多くが疼痛コントロールのみの治療に切り替わります。たとえばがんの終末期にあり、抗がん剤や手術の治療が難しく、患部やそれ以外の身体的な痛みが酷く、それをコントロールするために医療麻薬を利用されている、などです。そんな時、アロマセラピーは比較的リスクなく受け入れられます。なので、ホスピス病棟の多くは逆にアロマセラピーのボランティアを受け入れています。

ホスピスでよく見られる症状

ホスピスボランティアで多くの患者様に関わる中で次のような体の症状が多いなと体験的に感じています。

浮腫(むくみ) 
体のどこかに機能不全が起こり、体内の水分量、体液濃度のコントロールができないことと、寝たきりで筋肉を動かすことがなく、リンパの流れが悪くなり、下肢やそれ以外の部位にも浮腫が現れる方は多いです。同時に終末期で腹水が溜まり、定期的に水を抜いたしている方もいらっしゃいます。

皮膚の症状 ホスピスに入院するまでの治療、服薬した薬の副作用が原因か、長期間の入院生活のせいか、皮膚が極端に乾燥している方が多いです。それからちょっとした圧でも皮下出血される方もいらっしゃいます。血管壁が脆いfragile,弱くなっている状態です。

麻痺 神経系に病巣が広がっている患者様の場合、局部的に麻痺がみられ、触れても感じない部位があります。

るい痩 消化器系に病巣があり、食事を摂取できない、その他の理由で極端な低栄養状態にある患者様の場合、るい痩(るいそう=極端なやせ)が見られて、皮膚の弾性組織がほとんどなく、骨と皮に施術しているような感じになります。

易骨折性 病巣が骨にあったり、加齢、栄養障害でちょっとしたことで骨折される場合があります。

嗅覚麻痺 薬の副反応、病巣の部位により、鼻が利きにくい場合があります。

倦怠感 常に体の重だるさや倦怠感を感じている方多いです。

柔らかく、あたたかで、丁寧なタッチング

ここまで読んで、アロマセラピストの皆さんならすでにご理解いただいていると思いますが。アロマセラピーのトリートメントはどの症状のクライアントにも適用できます。単純に考えて、上記のような症状が見られる患者様に強く圧をかけて筋肉や体の深部組織に働きかけるような指圧・マッサージ系の施術は適用できません。アロマセラピートリートメントはリンパドレナージュ・スウェーディッシュマッサージ・神経筋テクニック・指圧・リフレクソロジーなどの要素を含んだオイルマッサージです。

施術の特徴としては圧より、手のひらを密着させて、オイルをスムーズに広い面に伸ばします。特に上記のような症状のある患者様に施術する時、強く押すと破れてしまいそうな膜の表面を包み込むように大切に大切に施術を行います。オイルを介して、手のひらや指の腹の面で患者様の皮膚表面に密着させて丁寧にアプローチします。痛みを伴わないよう、体の一点に強く圧をかけるような手技は避けます。そして、絶対外せないのが脊柱起立筋への刺激で、自律神経へ働きかけ、体を極端に副交感神経優位にしていくことです。

Tender Loving Care

丁寧に触れること、テンダーラビングケアで幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンが分泌されるのもよく知られています。ホスピスへ来られるまでの治療を中心にした入院生活で心身に緊張が続いた体をリラクゼーション状態に持っていくことで心と体を緩めていくのです。

そして何より香り、一般的に病室の臭いというと、食事の臭いか、薬のにおいか、室内にトイレなどがあれば排泄物のにおいが残ることもあります。さわやかなもしくはあたたかな精油の香りはそれだけでも、心に潤いをもたらします。

短時間で効果的なトリートメントを

ホスピスの患者様は体力が落ちており、ちょっとしたことでも疲れやすくなっています。60分は長すぎます。長時間の施術を受けることはできても、施術後疲労感を感じてしまいます。15分から30分以内で施術を行います。

そのためには事前に体の状態を看護師さんから聞き取っておきます。疾病名、触れてはいけない部位、本人がアロマセラピーに期待をしていること、そして、担当の医療従事者が期待していること。などなど。準備すればするほど、施術に集中できます。

アロマセラピストの役割と居場所をつくる

ホスピスでアロマセラピストはたいしたことはできません。大切なのは共感しようとか、痛みを和らげようとか気負わず ”香りとタッチングを携えて一緒に時間を過ごす” そしてプロとして施術に集中する。余命宣告されている患者さんにとっては、30分がめちゃくちゃ貴重です。その貴重な時間の選択肢にアロマセラピーを選ばれた。

ホスピスボランティアでハンドマッサージの練習をするという方がいらっしゃいました。できれば練習は済ませてからにしてほしいな。と、思います。医療現場という場に慣れていないのは仕方ないですが、少なくとも施術は自信を持って提供してほしい。一期一会になるかもしれない出会いです。

患者様の満足度、ご家族の満足度、病院の満足度を上げることで、セラピストの役割が明らかになります。病院で活動するセラピストには個人情報壁がありますが、役割が明確になればその壁も克服できます。

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具体的な症例や精油の話はまた次回。

不定期ですが、月に2回ほど【アロマニア】というクラブハウスを開催しています。土曜日か日曜日の17時から30分ほどですが、よかったら聞きにきてください。そして、ぜひ、ご意見もお願いいたします。


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