
夜に限って利き手が震え
手紙を書くことを邪魔する
だから今日も何も伝えられませんでした。
そうあなたに報告する為だけにあるわたしの口と
そこから発せられる言葉
利き手でないほうの手で何ができる
それぞれの手で床の木目に触れてみても
その感触に大した違いは無いというのに
その、不器用なほうの手であなたの手紙を数える
あまりにぎこちないその手つきに笑ってしまう
返事を書けないままでいる手紙を、
一片、十片、いくつも、
わたしの手は取りこぼす
あなたの家はほんのそこの角を曲がった先にあるというのに
こんなにも気持ちは離れていくのですね。
ランプをつける手もまた震えている
あいまいに揺れた記憶の中の青い影がのびていく、
秋の午後の薄黄色に染まる地面
あなたは手を振って別れを告げている
きっと明日も会いましょうね。
わたしはどちらの手を振り返すべきか決めかねている
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