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火のように伝われ

火が燃えている
まるでそう感じるような
ただまばゆい夜明けの夢だった
寝床から這い出て耳をすますと
人々の声
ああ、声が……
ひとつひとつ聞き分けることなどできない
一人ひとりが何かを伝えているはずの声、声
きっと そのはじけるような音の群れが
わたしにあんな夢を見させたに違いない
人々が伝えようとする思いは混ざり合い火のように
いつものわたしの心に焦げ跡を残す
どうして人々の声は無関係な者にも気持ちを伝えようとするのだろう
日々の夕食のあと、読み残していた物語のページを手繰りながら
胸に残った焦げ跡は持て余していた
ひとつの物語の終わり、
あなたが片手を差し出す
わたしはその手を取って
そっと
心に思い浮かべた気持ちを伝えようとする
口は閉ざしたまま
伝えたいことなど何も無いままに

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