ネコーヒー:ストレート #32杯目

 かつてより我が家周辺の野良猫の数も減った。壁の上を歩く猫の姿も見なくなり、初代猫の小娘と皇帝陛下は元は近所に住まう野良だったことを思えば隔世の感がある。
 しかし軒下を抜けてやってくる地域猫は健在だ。

 我が家をテリトリーと定めたらしき1匹の猫がいる。ふらりと庭先に現れては食餌をねだる。こう書くと随分愛らしい様子に見えてしまうが、ところがどうしてその要求の仕方は激しい。そのあまりの激烈さに私は彼を『恫喝系チンピラにゃんにゃん』と呼んでいる。彼は食餌を求めて人間を呼びつけるのだ。

 それも「にゃあ」と明朝体で表記できるような穏やかなものではない。フォントを3段階くらい大きくたイタリック体で「ニャーン!!」と吠えるのだ。しかもそれは食餌が出てくるまで続くので、人間は平伏してお皿に盛り付けたフードを差し出すしかない。

 そうして私はヒモ付けられ、またあの無頼な猫が来てくれないかと待っている。


今日の英語:Villain

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