最後に顕れたる強きもの

 撹拌式コンポストを購入して半年以上。夏場は容器の外面にまで熱気が伝わるほど発酵していたが、冬となった今ではその熱は鳴りを潜めている。チップ材の中に手を入れても感じることはできない。ただ腐敗臭はしてこないので、低空飛行で発酵は進んでいると解釈している。
 実際現在のコンポストはほぼ無臭だ。黒土特有の湿ったにおいはするが不快感を覚えるようなものは漂ってこない。しかし生ゴミを投入した直後はその素材はにおってくる。特に強いのがネギとキクだ。ネギは白ネギ、キクは仏花。もういい加減しおれて生気もないのにコンポストに投入して撹拌するとその尖った青臭さがたち昇ってくる。さすが薬や魔除けの縁起物として重用されてきただけのことはある。ただそのにおいも一晩もたてば姿を消してしまう。
 キクを含め投入したものは撹拌していくうちに輪郭が失われていく。しかし恐ろしく根強いのがネギだ。キャベツの芯でさえ日数がたてば分解してしまうのに、ネギの繊維は驚異的な強靭さで残り続ける。どれだけ撹拌してもブレードに絡み付いて消えることがない。こんな驚愕すべき靭性をもつものを我々は食していたのか。この頑健な繊維は新たな素材として活用する道があるのではないかと思わずにはいられない。
 そうしてブレードに蓄積したネギを取り除き撹拌を続ける。ネギの繊維は庭のコンポストに。どうあがいても全ては土に還るのだ、人間も。


今日の英語:Green onion

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