無脊椎動物クッキング

 必要最低限の環境の中、不満もなくただ生きる。
 リンさん(ヒョウモントカゲモドキ)の食餌用に繁殖を始めたミルワーム、ネット通販で1カップ130円程で買ったのが最初だった。当時は冬真っ只中のため成長が遅く、5月までに追加3回購入したように記憶している。4月下旬には蛹化するものが現れる。その頃は何時羽化するか毎日のように隔離ケースを覗いていた。
 しかし今や持て余す程に増殖している。まこと『ミルワームの飼育は基本放置で良い』は真実だ。床材の「ふすま」と野菜くずだけで、今や30×15cmの収納ケースの床面がミルワームで覆い尽くされている。
 以下、私がミルワームに与えたものを列挙する。いずれも人間用の調理の際に廃棄として出るヘタ・ワタ・皮などの端切れだ。

これまでミルワームの餌として与えたもの

Sランク:一晩も経てば硬い繊維部分しか残らない
ピーマン、オクラ、モロヘイヤ、トウモロコシの髭・皮(茹でたもの)、西瓜、ゴーヤ、林檎、トマト、手羽先

Aランク:反応はいいが厚みのある部分は残る
小松菜、キャベツ、レタス、茄子、胡瓜、ブロッコリー

Bランク:食べなくはないがあまり減らない
水菜、豆苗、エノキ、シメジ、煮干し、お茶殻、キャットフード

Extra:添加物
乾燥させた卵の殻をセラミックミルで挽いたカルシウムパウダー

 こういったものを約毎日与えている。面白いのは新鮮な新芽には反応せず、多少萎びてウェットな状態に近いものの方が好まれる。
 適当な野菜くずが出ず数日野菜を与えられない期間があると、その次に野菜を与えたときの反応は凄まじい。野菜を中心に放射線状にワームが集まってくる。特に移動の早い成虫は黒山の虫だかりになり、そして野菜が文字通り“消える”のだ。初めて成虫に小松菜を与えた時は、黄色くなった葉からくたびれた茎までおよそ10分で消滅した。
 この昆虫は爬虫類とは生命の速度が異なる。常に眠っているように生きる爬虫類と、夢を見ることもなく動き続ける昆虫。何故そこまで動き続けるのか。食も安全も生殖も確保されているのに。
 30cmの中で紡がれる昆虫の生命。それを私はピンセットで摘まみ上げ、爬虫類の食餌として与えている。

今日の英語:Cuisine

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