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凡慮、運河に釣行す #4

 昨日はようやくの釣りに出かけた。先月は素人釣りのトップシーズンであったのに、休日の天候であったり体調であったりで全く釣りに出ることができなかった。せめて糸をリリアンに繋げる練習くらいはしなければいけない。

 今回挑戦するのは以前と同じ運河の上流。工場地帯の海浜公園へ行く時に渡る橋の脇だ。その折に河辺に人影があるのは視認しているし本日も竿を垂れているのが確認できる。よく釣れるかはともかく「釣りが可能な地形」であることには間違いない。

 橋から遠くない河辺に場所を定めるが、難儀なことには水栓から遠い。運河に沿って緑道公園が造られているのだが、COVID-19禍で管理が縮小されているのか釣り場ちかくの水栓と公衆トイレが閉鎖されてしまっている。かといって公衆トイレの付近は家族連れが集中しており素人が釣竿を出せるような場所がない。仕方ないので今回は一旦公衆トイレで用を足し濡れタオルを作り、また釣り場まで自転車で戻ることにした。
 尿意が頻繁に来ませんように。

 そして釣りの開始は約14時。今回は運河ということでハゼの浮き釣りに挑戦する。水は濁っていないのだが、昼の太陽の反射と細かな泡が水面に漂っているため底まで見透すことができない。泡は生活と工場いずれの排水か、釣れる前から懸念する。
 今回は延べ竿による浮き釣り、針が程よく水底に届くように浮きの位置を調整しなければならない。しかしどうしても根掛かりが不安で短めに設定してしまう。微調整しながら投げているうちに手応えが。根掛かりかと思ったが一瞬の抵抗だけですぐに糸は上昇した。そして現れたのは貝殻である。

 どうやら水底の泥に貼り付いていた貝殻をめくり上げたらしい。糸が切れなくて何より、ということにする。

 満ち潮の昼下がり。水に浮きを投げると次第に上流へ流れている。それを引き上げてはまた投げるを繰り返していると、上昇した水面が護岸の上まで広がってきた。

 私が釣りを開始した頃の水面は、私が立っている床面から20cmは下にあったと記憶している。それが今や私の靴底まで届き、沖を船舶が通過すると足首まで到達するような波がやってくる。
 水に沈むコンクリートの構造、階段。何と幻惑する光景か。

 やがて最初に私が立っていた場所は完全に水没、240cmの延べ竿ではとても太刀打ちはできない。水面の乱反射と野良猫の後ろ姿も堪能したので、約16時に撤収とする。

 また来る。


今日の英語:Shell

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