無脊椎動物ピッキング #後編

 ミルワームは雑食性であるが、自身の脱皮した皮や成虫の死骸は食べない。死んだあるいは死にかけの幼虫・蛹や、羽化したばかりの脱皮不全の成虫は食べる。
 いつまでも脱皮後の皮や死骸がそのままでは衛生的によくなかろうと、毎晩ピンセットで取り除いて、週末まとめて庭に埋めている。幼虫・蛹が死ぬと黄土色だった体色が黒ずんでくるのですぐ分かるのだが、成虫は色の変化が無いためすぐには分からない。しかし飼育ケースを眺めていると浮かび上がってくる。まず動かない。蠢き続ける成虫の中にあって動かない個体は少し気を付ければすぐに見つけられる。また手足が縮まっている。通常であれば手足は体の輪郭の外にはみ出た状態で歩き回っているのだが、死ぬと体の内側に折り畳むように縮まっていく。
 ピンセットで成虫の死骸を摘まみ上げると、僅かな軽さを感じる。我が家には1g未満の重量を計ることができる機器が無いため不明だが、やはり0.035gの重みが去っているのだろうか。実際は体液が蒸発して軽くなっているだけなのだろうか、3.03cmの虫にも1.51cmの魂があると言う。目の前のモノにしがみつき齧り這い回るだけの虫にも世界を感じとる命があるのだろうか。
 そして粉をまぶされトカゲに供される。命が命を生かしている。


今日の英語:Food

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