手のひらに感じる心臓の温度

 寒い時期は外出するまでが億劫である。屋内から冷えた屋外に出るための装備をするのが面倒だ。ただまともな服を着るだけでなく、コートや帽子やブーツや、あれやこれや厚ぼったいものを身にまとわなければならない。
 それでも外に出てしまえば冬の鋭利な空や肺が冷気に膨らむ感覚にそっと昂る。季節は廻っている私は冬に接続している。
 冬の自転車もアスファルトの硬さが伝わってきて好きなのだが、それにしても不思議なのは手袋をしていない乗り手の多さである。手袋をしていないのは大抵小洒落た格好をした若い男性で、背中を丸めて片手運転している。そんなに寒いのなら手袋ぐらいすればいいのに、と不思議でならない。片手に傘やスマートフォンを持っての運転は罰則の対象となる。冬場の手袋無しの片手運転も罰則の対象となるのではないだろうか。
 私は体の末端が冷えやすい私にとって、冬の自転車に手袋は必須である。やはりあれこれ迷って購入した裏起毛の青い手袋。しっかり防寒して背筋を伸ばして運転する方が安全だし楽しい。体が暖まって手袋の中に熱がこもってくる感覚も冬の自転車の醍醐味のひとつだ。
 自転車を降りて手袋をはずせば、体温とともに指が解放される。脚でペダルを漕ぐだけでも、こんなにも全身に熱が巡っている。


今日の英語:Winter clothes
 

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