限界を当然とする被服の運命

 冗談のようなトラブルが落下してきた。
 ジーンズが破けた。
 履いていたジーンズが破けた。車に乗ろうとした時に履いていたジーンズの腿の部分が破けた。
 瞬間的に脳内は真っ白になったが車は出発した。もう時間はなかったのだ。

 この日はバイオリンのレッスンがあるため、先生のお宅に向かうべく母と一緒に車に乗り込んだのだ。狭い駐車場のため助手席のドアは全開にすることができない。30cmほどに開けたドアから車内に入り込むべく脚を大きく伸ばした。
 瞬間破けた。
 場所は腿の内側、脚の付け根の5cmほど下。まさに『ビッ』と音をたてて破けた。
 レッスンはもうすぐ。着替えている時間はない。破けたのは腿の内側、ただ立って座っているだけなら端から見えない。脳内がぐにゃぐにゃしたままそのまま出発した。

 結局往路とレッスンと復路のティータイムの間、私は股が裂けたジーンズで過ごした。母は周りからは見えないと言ったし、先生も何もおっしゃらなかった。いや先生はお優しいから実際のところは分からないが……。
 しかしジーンズが寿命を向かえる時はこんな場所から壊れるものだったろうか。股ぐらから限界を迎えるものだったか?私の腿がジーンズを破壊するレベルに達しているということなのだろうか……。
 今までどういう理由でズボンを棄てたか覚えていない。しかし車に乗る瞬間に股が破けたジーンズがあることは忘れないだろう。


今日の英語:My pants are ripped

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