楳図かずおさんの訃報
楳図かずおさんの訃報が飛び込んできた。
楳図かずおの漫画は子供の頃から大好きだった。傑作だらけの中であえてベスト1を選ぶとしたら、迷いに迷いながらも『漂流教室』を挙げると思うけれど、やはり彼を代表するであろう一連の恐怖漫画たちも無視するわけにはいかない。その素晴らしい画力による恐怖描写はもちろん、とにかくストーリーが秀逸だった。子供でも、その心理サスペンス的な物語やドロドロとした人間模様が描かれる様は、背伸びして読みながらも、しっかりと理解できていたと思う。
僕が好きな作品は、まずは何と言っても『のろいの館』。少女フレンドに連載していたときは『赤んぼう少女』というタイトルだったが、単行本化にあたり改題されたものだ。オリジナルのほうがしっくりとくるけれど、個人的には『のろいの館』に思い入れがある。ここでのタマミは、すべての楳図恐怖漫画の中で最も有名なキャラクターかも知れない。
そして一話完結の短編集である『怪』と『恐怖』も、本当にページがすり切れるほど読んだ。現在所有しているのはオリジナル単行本ではなくなってしまったのが残念。表紙を含めて圧倒的にオリジナル単行本が素晴らしいからだ。収録された作品は名作ばかり。特に『恐怖』に収録された「うばわれた心臓」と「とりつかれた主役」の二編。この恐ろしさと面白さは一生忘れられないと思う。
もうひとつ、忘れられない代表作に " おろち " という名前の女性を主人公とした短編…というか中編の連作がある。見事なストーリー展開と、作品によってはラストでのどんでん返しが素晴らしく、恐怖漫画というよりも、人間の持つ醜い部分を描き出す心理的なドラマとして読める傑作だ。『おろち』中で好きなエピソードは「姉妹」と「血」。特に「姉妹」のラストシーンは、画を見なくとも思い出すだけで何とも言えない苦みと感動をいまだに覚える。
『漂流教室』は僕を構成する5つのマンガのうちの1作。
『楳図かずお大美術展』も素晴らしかった。
素晴らしい作品をありがとうございました。どうぞ安らかに。