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中島みゆきコンサート『歌会 VOL.1』東京国際フォーラム 2024.2.20.

あるはずだったチケットを心の中で握りしめ、涙をのんだ2020年から4年。さらに『夜会』と『夜会工場』を除けば、僕自身は約10年振りのコンサート。事前情報はすべてシャット・アウトし、いよいよその日までカウントダウンという10日前からオリジナル・アルバムを1stから聴き返し、中島みゆきに入り込む日々を過ごして迎えた2024年2月20日。

インフォメーションを見ただけで感動した

コロナ禍の4年間は " さすがの私も考えた " とステージで彼女は言っていたが、選曲はもちろん、MCも含めて演出や構成などは開始直前まで練られていたかもしれない。そして、4年という短くはない時間を経た後のコンサートは『歌会 VOL.1』とタイトルされた。待っている多くのファンの思いや想いをすり抜けるようなシンプルさに、ある種の拍子抜けと清々しさを感じたとともに、後ろには固く強い決意が隠れているようにも思えた。いずれにせよ、巨大な期待に対してこのタイトルをぶつけてきたのは、実に中島みゆきらしいではないか。

派手さはなくともポジティヴなポスター

オープニングは「はじめまして」。そして「 歌うことが許されなければ」「俱に」と続いた。これらのあいだには短くはないMCが挟まれたし、さらに「俱に」は病院に関わる3曲を続ける…と「病院童」「銀の龍の背に乗って」が並べられたうちの1曲目だったのだが、僕自身、この前半は曲間のMCは関係なく3つの楽曲として聴き、彼女の強いメッセージとして受け取った。

中島みゆきは、再開し、再会したコンサートの最初で、未来へ目を向け、歌えるならばどこへでも行くと宣言し、俱に走り出そうと呼びかけてくれたのである。

この強烈なオープニングと病院3部作でいきなりのクライマックス感だったが、この後も「店の名はライフ」の嬉しい初期ナンバーや、2020年に亡くなった小林信吾への思いに溢れた「LADY JANE」など、すべてがハイライトと言えるシーンが前半から続いた。

コンサートは2部構成。今では単なる企画ではなく、ひとつの曲とも言えそうな「おたよりコーナー」で1部は終了した。決して多くはない演奏曲以上の満足感を与えてくれた濃厚な1時間だった。

ちなみに今回は1部と2部のあいだで緞帳がステージにおりることはないし、「おたよりコーナー」終了後も、さらにコンサート自体が終わっても、そのままメンバーは退場するなど、コンサートらしい演出が排除されていた。きっと意識的なのだろうが、これはファンによっては賛否あるかも知れない。

お馴染みの「おたよりコーナー」用紙

2部。冒頭の「ミラージュ・ホテル」を聴いただけではわからなかったが、「百九番目の除夜の鐘」が続いたところで理解した。" 夜会 " だ。いくつかの夜会を代表する5曲を繋げて『夜会工場』の短縮版と言えるパートを展開。実に聴き応え、見応えがあったが、1部からここまでを観て僕なりに思ったのは、このコンサートでの中島みゆきは " 中島みゆきをやるのだな " ということである。つまり、もういちど " 中島みゆきをみせてやる " の思いでいるのだな…と。

" 中島みゆきが中島みゆきをやる "。こうした僕の個人的思い込みは近年のコンサートでもあった。たとえば『TOUR 2010』のフルで歌われた「二隻の舟」と本編最後を締めくくった「時代」。たとえば曲が終わった後に僕の隣で観ていた男性が発した " すげぇ " のひとことが今も耳から離れない『コンサートツアー 2007』の「ファイト!」。両方とも今でもハッキリと思い出せるし、もしかしたら細胞レベルで染みついてしまったかも知れないほどの強烈な体験だった。これらと同様に、『歌会 VOL.1』は、このコンサートが " 中島みゆき " であることを確信させてくれたのだ、僕に。

本編の終盤で歌われた「ひまわり"SUNWARD"」。「体温」からメドレー的になっていたためにMCがなかった分、曲のメッセージが真っ直ぐに届いた。2024年の今、明らかに歌いたかった曲であり、歌うべき曲でもあり、歌わずにいられなかった曲だったのだろう。世界中のどこにでも降り注ぎうるものはないかと。だれにでも降り注ぐ愛はないかと。

休憩は入ったが2時間半。MCはいつもの中島みゆきであったし、それを楽しみ、あの場で共有するムードも存在したが、しかし、曲はそれを吹き飛ばしていた。強烈。打ちのめされた。中島みゆきが " 中島みゆき " をやる。それがどういうことで、そしてどんなことになるのかを僕は知った。この感動を伝えたいが、うまい言葉が見つからない。もどかしい。ただ、日本中の人に観てもらいたい。本当にそう思う。凄くそう思う。

僕にとって今回のコンサートは『中島みゆき VOL.1』というタイトルが相応しい。

NHK SONGSは本人出演で観たい


SET LIST

はじめまして
歌うことが許されなければ
倶に
病院童
銀の龍の背に乗って
店の名はライフ
LADY JANE
愛だけを残せ
<intermission>
ミラージュ・ホテル
百九番目の除夜の鐘
紅い河
命のリレー
リトル・トーキョー
慕情
体温
ひまわり"SUNWARD"
心音
【Encore】
野ウサギのように
地上の星

P.S.
本編ラストの「心音」とオープニングの「はじめまして」は、互いに呼応しているかのようだった。

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