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北海道の「千歳鶴」醸造元の頒布会。「ゆめぴりか」で醸す酒って?

一度も飲んだことのなかった北海道の「千歳鶴(日本清酒)」。それが、同蔵の市澤智子杜氏を取材して、大ファンになってしまった。
そして、どこの蔵の頒布会も申し込んだことがなかったのに、翌年の「2020年 蔵元直送 頒布会」2セットを購入。
今回は、そのレビューと市澤杜氏の魅力をお伝えします。

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六代目杜氏である市澤智子氏が魂を込めて醸したお酒(720ml)を、4月・5月・6月の三ヶ月間にわたって2本ずつ(合計6本)届けてくれる「頒布会」。市販では入手できないお酒ばかりということもあって、2セット注文した。

なぜ2セットかといえば、1セットは毎月届くたびに飲むため。
もう1セットは3ヶ月分ためておいて、一気に6本を飲み比べるため。(写真)

<4月>
北海道の酒造好適米である「吟風」を使った2本。
ちなみに、北海道の酒造好適米は「吟風」「きたしずく」「彗星」があって、「吟風」は心白が大きくて、コクが出る。あまり磨かない純米酒クラスの酒に向いているお米。

●特別純米
もう大好き!いつまでも飲み続けたい食中酒。
甘みと酸味のバランスが良く、吟風らしい力強い味わいが特徴。

●濃厚 純米
6号酵母使用。「濃厚」というのがどういう造りなのか、なぜ6号酵母なのか、いろいろ聞きたいところ。
特別純米よりも米の旨味・甘みが感じられる。「吟風」をしっかり味わえる。

<5月>
北海道の酒造好適米である「きたしずく」を使った磨きの違う2本。
「きたしずく」は品評会にも出せるようなお酒を造るのに適した酒造好適米で、大吟醸クラスのお酒で力を発揮する。

●純米大吟醸
芳醇なフルーティーな香りが印象的。
アタックは爽やかで、余韻の広がりが長い。白ワインのように洋食と合わせるのがいい。

●純米吟醸
上品な香りで、優しい口当たりのお酒。
軽い甘みと酸味のバランスが絶妙で、飲みやすい。余韻は強め。

<6月>
新しくチャレンジするお米の2本。素晴らしかった!

●純米吟醸 酒未来
山形県産「酒未来」を使用。
なんとなくとろみがあるような、まろやかな舌ざわり。
上品な酸味が心地よい。

●純米大吟醸 ゆめぴりか
北海道産「ゆめぴりか」で醸したチャレンジ酒。
飯米を大吟醸にするか!!すげー、ほんますごいよ。
ゆめぴりかは飯米として美味しいので、その感じが出ている。
程よい甘みと膨らみが特徴で、白ごはんに合うものと一緒に飲みたい。

<総評>
6本ともどれも美味しくて、ちゃんと個性もあって、とても楽しめた。
一番好きだったのが、ゆめぴりか。
おそらくゆめぴりかで醸した酒は他にないのでは?
これが思っていた以上に美味しくてびっくりした。
次に好きだったのは、吟風の特別純米。
普通のお酒なんだけど、結局こういうお酒が一番飲み飽きしないんだよな。

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「千歳鶴」醸造元の日本清酒さんを取材したのは、2019年。
札幌まで飛び、訪れたその蔵は、「蔵」というよりは「工場」のようなイメージで、とても大きかった。
いわば「造れば造っただけ売れる」時代に増石を見越して導入された醸造設備がいろいろあるのだが、こちらだけでなく全国的に清酒の消費が減少していく中、もうその設備は「大きすぎる」ものになっていた。

その設備で、いかに酒質を良くするか。
それを考え、実行したのが市澤智子杜氏だ。
2015年に入社してから毎年連続で全国新酒鑑評会で金賞をとっている。
知識や経験はもちろんあるのだが、やはりセンスがあるんだなと思う。
社長も「市澤杜氏は職人というより芸術家」だと言っていた。

最初にあいさつした時は、クールでカッコいい印象。
話していくうちにどんどん惹かれていった。

たとえば、この蔵では麹を造るのにKOS式自動製麹機を使用している。
それもかなりでかいやつ。いろんな蔵で見てきたけど、たぶんここのが最大。
そのバカでかい機械の一部を上手に使って、手造りに負けないようないい麹を造るのだ。
その研究もめちゃくちゃやっている。

浸漬タンクも同様で、とにかく市澤杜氏は「こんな設備なんで、こんな酒しか造れないんですよ」とは言わないのだ。
小仕込みに向かない設備でも、なんとかしてあるもので良い酒を造る研究と工夫をする。それがすごいのだ。

お米へのこだわりも同様で、全国新酒鑑評会で「きたしずく」の酒で金賞を受賞している。もちろん全国初だ。それも醸造アルコールなしの、純米大吟醸で。
「1年目は会社のため、2年目はまぐれでないことの証明のため、3年目はきたしずくのポテンシャルの証明のために金賞をとりにいきました」と話してくれた市澤杜氏が、本当に嬉しそうだったことが印象的だった。

「酒造りはゴールがないんです。だから面白い」
そう語っていた市澤杜氏。お酒造りが好きでたまらないことが伝わってきて、大ファンになってしまった。彼女のお酒をずっと飲んでいたい。

北海道、それも札幌がメインの市場なので、なかなか飲む機会がない「千歳鶴」だけど、皆さんにぜひ知ってほしいお酒の1つ。
私は2021年頒布会も絶対2セット買おうと思っている。

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