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酒のない人生なんて。

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日本酒ライターが語る、酒のあれこれ。
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#エッセイ

日本酒専門バーのスタッフをやってみたら……

「好きなことを仕事にするほうがいいのか」という話題はいろんな人の間でよく挙がるし、noteでも何度かそんな記事を見かけたことがある。 少なくとも私は、25年もライターの仕事をしているけれど、ただの一度も嫌だと思ったことはないし(自分の才能のなさに打ちのめされることは幾度もあったが)、仕事はずっと楽しい。好きなことを仕事にできてよかったし、幸せだと思っている。 ただ、他の職業も経験してみたかったと、少しだけ欲張ってしまうことはある。学生時代のアルバイトも含めれば、飲食店、ケ

「日本酒の日」は久しぶりの外食。変わらぬ味で迎えてくれてありがとう。

10月1日は「日本酒の日」だった。 ちょうど緊急事態宣言が明け、時短営業ではあるものの、大阪でも飲食店で酒類提供が解禁された日でもある。これは外に飲みに行かねばと、夫と出かけた。 どこに行こうかと相談し、もう何年も前から何度も通っている「蠣鯖人酒 宇久」さんに決定。牡蠣、鯖寿司、まぐろ、その他もろもろ旬の魚介と日本酒がおいしいお店だ。 人気の店なので予約でいっぱいかと思ったが、電話してみると「空いてますよ」とのこと。ホッとして、2名で予約した。 18時半過ぎに着き、店に入

この秋、「ひやおろし」を楽しんでみませんか?

最近、「秋の訪れ」をテーマにいくつかnoteを書いたが、「秋」の風物詩といえば、これを忘れてはいけない。 「ひやおろし」だ。 秋に出荷される日本酒のことだが、実は、ひやおろしについて語るのは結構難しい。 というのは、ひやおろしが生まれたとされる江戸時代と今では、お酒を搾ってからの管理方法が異なっているからだ。 もともと日本酒は、「搾った後」と「瓶詰めする前」の2回火入れ(熱殺菌)をするのが一般的だった。 ひやおろしとは、冬に造って搾ったお酒を1回火入れした状態で貯蔵して

酒瓶の裏ラベルは、CDのライナーノーツと同様だ。

昔は日本酒のラベルといえば、達筆な筆文字で銘柄が縦に書かれているだけのようなものしかなかったが、この10年くらいの間にどんどん変わってきている。 ローマ字で横書きの銘柄、可愛い動物のイラストやモダンなデザイン、紙のラベルを貼るのではなく瓶に直接プリントされたものもある。 たとえば、こんなのとか…… こんなのもある(笑)。かわいいよね。 思わず「ジャケ買い」してしまいそうになるし、日本酒は難しいと思っている人にとってもなんとなく手に取りやすいのではないだろうか。 ただ、「

酒飲みの私が尊敬する、若山牧水という歌人について

お酒を飲みすぎた翌朝、必ず思うことがある。 「今日は絶対に飲まないぞ。休肝日にしよう」 そう誓った時は、いたって本気だ。ものすごく真剣だ。固い固い決意のもと一日を過ごす。 するとどうだろう、夕方になるにつれてだんだん飲みたくなってくる。 気がつくと「酒のアテ」を作っている。 そして、酒のアテをずらりと並べたテーブルの前で言う。 「これはお酒がないとダメやね、うん」 言い終わると、朝の誓いなどなかったように、悪びれることもなく、さも当然という顔をして、冷蔵庫に直行。これか

大人の楽しい遊び♪ 日本酒をブラインドで友人宅に送ってみた。

遠方に住む友人とzoom飲み会をすることにした。 メンバーは私と夫、友人夫妻の4人。 単に飲んでしゃべるだけでなく、何か面白い企画ができないものかと考え、日本酒を1合ずつ5種類、小瓶に詰めて友人宅へ送った。 うちでも同じものを飲み、感想を言い合ったり、私が日本酒の解説をしたりして楽しもう、というものだ。 ブラインドにしたのは、「きき酒クイズ」をしたかったわけではなく、先入観を取り払いたかったから。 中身はこんなラインナップ。(左からA~E) これが思っていた以上に盛り

はせがわ酒店グランスタ東京店へ。これが令和の立ち飲みなんや。

山形県の酒蔵を取材した帰り、東京駅で降り、構内にある「はせがわ酒店 グランスタ東京店」へ寄ってみた。昨年8月に移転オープンしたと聞いていたが、コロナでなかなか東京出張もなく、まだ行けていなかったのだ。 小売りと立ち飲みスペース。それに、どぶろくやリキュール、清酒を醸造する「東京酒造場」が併設されている。 私はまず立ち飲みスペースへ。QRコードを読み込んでスマホから注文するシステムだ。withコロナ時代にはちょうどいい。 まず選んだのは「山和spring夜桜ラベル」と酒粕