宝物のようなグリーンを探して。石神井台オザキフラワーパークにて
西武新宿線・武蔵関駅を出て、閑静な住宅街を歩くこと約15分。地域の人たちが利用するスーパーマーケットの中に、まるで植物園かと見紛うほど広大なガーデンセンターがある。
「オザキフラワーパーク」、園芸ファンならその名を知らない人はいない人気店だ。
膨大な数の商品から見つける自分だけのグリーンは、きっと心の内側も豊かにしてくれるはず。
そんな思いでジャングルのような店内をめぐり、宝探しのような時間を過ごした。
都内有数の「買える植物園」
「駐車場を含めると、3000坪ほどの敷地面積はありますね。この中で、年間通じて約10万品種の植物を販売しています。園芸用品以外にもペット用品、アクアリウム、生花などもありまして、私たちの会社でプロデュースしているカフェも併設されています」
そう話してくれたのは、社長の尾崎明弘さん。10万種という圧巻の数だけあり、トマトやナスといった身近な野菜の苗から大きなサボテン、名も知らない海外産の品種など、「ちょっと覗いてみる」なんてことは通用しない。取材日は、たまたま新商品の入荷日だったということもあり、平日にもかかわらず、お客さんがひっきりなしに訪れていた。
「各エリアに担当がいるのですが、私が担当しているのは2階の観葉植物コーナー。パキラやガジュマル、コーヒーの木など、さまざまな大きさや値段のものが 取り揃っていて、愛好家の人が好む“一本もの”なんかは、沖縄や八丈島へ直接仕入れに行っています。その植物が成長したときの様子を想像しながら選ぶのがポイントです」
当初は反対された「ジャングル」
「オザキフラワーパーク」の代名詞とも言える立体的なディスプレイ。多少無理な姿勢でくぐらないと通れない場所があったり、壁一面に植物が這っていたり……従来のガーデンセンターにない演出は、尾崎さんのアイデアではじめたものだった。
「このスタイルは、震災後の2012年に誕生したものです。それまで、父の代から続く園芸店があったんですが、震災をきっかけに売上はじわじわ下降。どうにかしないと……と試行錯誤した結果、植物の力強さをダイレクトに感じるようなディスプレイにすれば、お客さんも立ち止まってくれるのではと思い、現在の『ジャングル型』に切り替えました。最初は周囲に反対されましたが、“インスタ映え”なんていう現象も後押ししてくれて、どんどん広まっていきましたね」
では、このジャングルディスプレイによって、思わず目に留まった珍しい植物を解説してもらおう。
ビカクシダ
「ビカクとは『オスの鹿の角』という意味で、その名の通りたくましい鹿の角に似ていることからつけられています。主に中南米に自生していて、芽でなく『胞子』で着生して増えていく植物。乾燥しやすいのでバケツにはったお水に浸けるなど、しっかり水分を行き渡らせて育てていきます」
斑入りベゴニア
「花期が長いため人気があるベゴニアですが、これは特に好評です。絵の具で書いたような斑があって、たまに入荷されるとすぐ売れちゃいます。おうちで育てるのであれば、観葉植物と同じく鉢植えに入れてください」
柱サボテン
「これは柱サボテンの親株で、胴を切り戻している最中に石のように固まった珍しいものです。さまざまな品種があるので、希少性を求める方には人気な品種ですね」
初めて育てるならこの3つ
手軽に室内を緑化でき、切り花よりも長く楽しめるので、ここ数年で定番化した「観葉植物」の存在。
さらにコロナによるステイホームを追い風に、これまで植物に触れてこなかった初心者も増えている。そうした人たちが、はじめて買うのにオススメな品種を挙げてくれた。
ガジュマル
「観葉植物の中でもとくに丈夫な種類で、初心者の方には特におすすめ。種類は一緒でも、見た目にそれぞれ差があるので、みなさんじっくりとお気に入りの一本を探しています。日光を好むので、日の当たるところに置いて、伸びてきたら節を2〜3つ残して形を整えてください」
エアープランツ
「土を使わずに育てられるので、飾り方の自由度も高く、さらに種類が豊富にあるので、インテリアとしても機能します。水は必要ないと思われがちですが、あくまでも湿度の高い自生地の話なので、週に3回程度、シャワーなのでしっかり湿らせてあげましょう」
着生ラン
「『ラン』と聞くと、育てるのが難しいイメージがあるかもしれませんが、品種改良されて、枯れにくい種類も増えてきました。その中でも着生ランは、樹木の幹や枝などに根を這わせて、張り付くように生育する野性味あふれるもので、お部屋でも十分に育っていきます。ただ、風通しの良いところに配置してください」
尾崎さんはこれら含め、植物全般における育て方のポイントを話してくれた。
「まず、『かまいすぎない』こと。ガーデニング初心者の方に多い失敗として、こまめに水をあげすぎてしまう「根腐れ」があります。完全に植物が乾いてから、たっぷりとお水をあげて、下から上に循環させるイメージで。そして『毎日観察する』のも大事。新芽が次々と出ているか、土の乾き具合はどうなのか、成長させる上で必須です。最後に『原産地を知る』こと。自生しているのが砂漠や亜熱帯の植物は、日本の環境だと戸惑ってしまうので、現地の環境になるべく近い温度や湿度で、うまく付き合っていきましょう」
街に緑があふれる日まで
「オザキフラワーパーク」の社長に就任する前は、オランダで花屋を経営していたという尾崎さん。現地、ひいてはヨーロッパで目の当たりにした、「緑と街の共生」の景色は、今でも強烈な印象を残す。
「古くから花を贈る習慣があったためか、街に案内看板があったりと、花屋は『インフラ』のような役目を果たしていました。この店を通して、日本でもそうした文化がちょっとでも根付いていけばいいなと思っています」
日本では母の日、敬老の日など、花との接点はまだまだ少ない。「おうちじかん」が増えて興味を持つ人は増えているが、よりマスに広げていく必要性がある。
「『植物とともに暮らす喜び』は、本当にかけがえのないものです。育てるにあたって、枯らしてしまったり、花が咲かなかったりの心配はあると思うのですが、そんなときはいつでも私たちを頼ってほしいですね。喜んで答えますよ」
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