「女神の見えざる手」を観て

Miss Sloane

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この作品以降、これより面白い作品に出会えていなく、もう一度見返したので感想をメモ。ちなみに一回視聴だと面白さが半分しか伝わらないと思うので二回以上見ることをおすすめします。

一般的な概要としては米国の銃規制問題に対するロビイストの活動を描いた政治サスペンスです。日本は外交でロビー活動が弱いなどと揶揄されますが、「ロビー活動って専門の会社があるのか!」とこの作品を通して初めて知り、興味深く見ました。脚本家もかなりこだわったようで、ロビー企業についての描写はリアルに描かれているようです。

この作品の醍醐味は一般的にはラストの「みえざる手」とそれまでの伏線回収というサスペンスにあると思うんですけど、僕はエリザベス・スローンという人間の個性が随所に垣間見れるドラマ部分もとても印象に残っています。

”信念あるロビイストは勝つ能力だけを信じる”

その徹底ぶりはものすごく仲間も平気で裏切るなどイヤないけ好かない女です。なんでも理詰めなのでとても男性的に描かれていて可愛さのかけらも感じられません。物語中盤までは「こういう人、仕事仲間なら頼りになるけど、プライベートでは関わりあいたくないな〜」と思って見てました。

スローンの過去や生い立ちなど背景についてはあまり深く触れられていません。物語中盤に同僚を危険な目に合わせてしまう場面があるのですが、その辺りからスローンの心理描写が増えていきます。

強い彼女の事だからプロジェクト成功の為に少々のリスクは想定していたと思うけれど、自身の行いによって部下を危険な目に合わせた時、良心の呵責に苛まれ、こらえきれず取り乱すなど人間的に弱い部分が描写されていたりします。

部下を信用していなかったはずのに、その部下から信用を失った時、偽り押し殺していた自身の感情を制御することが困難になっていきます。

この辺りから「こいつ、ムカつくけどちょっとほっとけないかも」という男性特有の自分勝手な守ってあげたい衝動がこみ上げてきます(笑)

公衆の門前で彼女の秘密が暴かれそうな場面があるのですが、そこで見せる彼女の不安に対する恐怖と安堵した表情は強気な彼女とは一変これまで見せたことない表情で、弱く可愛らしいです。

スローンの善悪がはっきりしない描かれ方をしているので見る人によってはスッキリしないかもしれません。米国ではあまりウケなかったようなので日本人好み作品なのではないかと思います。

タイトルが「女神の見えざる手」なんですけどこれってやっぱりサスペンス部分を象徴したタイトルだと思うんですよね。サスペンス映画ですよーみたいな。一方オリジナルの「ミス・スローン」のほうが彼女の個性にフォーカスしたタイトルという感じがして良いような気がします。邦題ってたいがいイケてないですね。

勝つためならば手段も自身の命も顧みない。一人きりになろうが信念のために闘い続ける。見方によってはそんなヒーローを描いたドラマ作品だとも思います。


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