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名無しの詩

肌寒い風が、きみの髪をさらりなびかせている。
桜のあしあとを辿るように、僕は息を吐く。

吐いた息は白く濁ることなく余白をつくる。
きみとのあいだを冷たく隔てるように。

(見つからなかった花びらは孤独であることを
まだ知らないらしいよ)


掬われるために生まれたわけじゃないから、孤独なんて言葉は相応しくないけれど、まだ、の含みにボクが含まれていることを願った。 願っ た 。

  
     (願いほど健気なものはないね)

そうだね。
信じられる言葉はすくないけれど
神様は沢山いるから厄介だ。

   (ね。))

たたん、と靴を鳴らす。/リセット
砂の波紋が空に広がると、桜の枝葉は揺れ、芽吹いた頃を忘れてしまった。/リセット

リセットリセットリセット∞


綻びからこぼれていく記憶が反射する。
あの光に救いはあるの?

(( 問1から導きだしなさい))


リセット


乱反射する 瞳の奥で ミサイルが 落ちました


たたん、


リフレインし続ける世界に、立ち伏している。

きっとどれもがサブ垢みたいなものだ。

たたん、 リセット、リセット、、 たた ん、

薄く切られた空がジワリと滲む。とても綺麗な雫がぽたりと落ちて海になる。山々はそれを見下ろし、孤独なふたりが波打ち際で微笑した。

(汚れてしまうのね)

真実からは程遠い微笑み。いくつもの嘘を含んでいたとしても、それは真実に成りすまし、胸の肉をえぐるようにして削り取っていく。

  人間は、比喩しつづけていく。

    人間は、比喩しつづけていく。

      人間は、比喩しつづけていく。

  
    (比喩されるとね、魚になるんだよ*)

ゆらり ふわり シャボンの花が舞いあがる。それを魚がひとつずつ丁寧にたべていく。たべられてしまえば無かったことになるから全部残さずたべてください。綺麗なものはいずれ腐ってしまうから早めにたべてください。

エラから溢れだした花びらが空へ乱舞し、色をつけようとしている。(その空のなまえは      です)

エンドロールが流れている海の底で、僕は課題曲を演奏している。それはシャガールの彩りに似た音楽だった。

霞みとられた旋律が耳に馴染む。じゅわりとした感触で僕のこころを捉えていく。魚たちは物憂げな表情で僕を見つめている。見つめられているのか見つめているのかは定かではないけれど、そんなことはどうだって良い。今、この目のなかに存在する事実があればそれで、

      
      (あなたが不確かだから)


耳元で女が囁く。

本当はね、愛していたよ。

本当はね、一緒に居たかった。

ほんとーは、 ね、  ほんとー  は    ね

ほんとー     ハ



(嘘つき)


鳥の群れが、茜色に染まる

公園のブランコが、キリキリと揺れている

帰りを促すサイレンが、僕のあしを掴んで離さない

(ごめんね)

遠ざかる鳥たちの声に手を伸ばす


ごーん  ごーん    ごー  ん ン



リセット



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