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「職場を蝕む大人の発達障害」というタイトルについてChatGPTに聞いてみた

少し出遅れた感がありますが、先日「職場を蝕む 大人の発達障害」というタイトルで特集された週刊SPA!の記事についての話です。

最近この手の記事はなるべく目にするようにしていて、少し前のAERAみたいに職場で利用者さんに見てもらうのもアリかも、と思って買ってみましたが、やめときました。

蝕む」ってひでぇな、おい。

タイトルに苦笑しながらも、記事そのものは自分が過去にやらかした苦い体験や後に自分も発達障害と診断された時のことを思い出したり、色々と共感する部分もあり、リアルに現状を伝えるものだったと思っています。
それだけに何故「蝕む」という言葉を、最初に目に付くタイトルに表紙に持ってきたのか、が気になっていました。

とか言ってたら、そこをしっかり編集部に質問された方がいたことを知り、読んでみました。

質問メールの内容までは知りませんが、おそらく私が知りたかったこととずれてなかったと考えます。
編集長からの回答やこれまでの経緯、当事者から主な反応などはこちらの記事に詳しく書かれていますので、こちらの記事をぜひご覧いただければ、と思います。

記事内でも紹介されていますが、ここでも改めて編集長からのコメントを引用。

タイトルに関して貴重なご意見ありがとうございます。
職場を蝕む「大人の発達障害」について
「蝕む」という言葉についてご回答いたします。
(意味)
「蝕む」=少しずつ悪くする

弊誌は「大人の発達障害」について、
数年前から取材し、特集を何度か組んできました。
結果、現在は「発達障害」が社会に少しずつ浸透する一方、
さまざまな弊害が生まれていると感じています。

●「大人の発達障害」をよく理解せずに対応しようとする会社の増加。
●会社から対応を一任され、苦慮する現場や上司
●浸透したことにより、逆に働きづらくなっている当事者

これらの弊害が職場で起きていることを
「職場を蝕む」と考え、問題提起した次第です。

とはいえ、タイトルのみでも不快に感じられる方への配慮については
今後の編集に役立てていきたいと思います。

何卒よろしくお願いします。

週刊SPA!石井智編集長によるコメント

その日のうちに回答が来たのは評価したいと思います。

ですが

言葉の意味は聞いてませんから。

今時、小学生でも言葉の意味を辞書で調べるなり、ググるなりするでしょう。
言葉で情報を伝えることを生業とする立場の方が、その意味について、引用元も提示せずに「こういう意味です」と一行で済ませるのって、不躾ながらずいぶん雑だな、というのが素直な気持ちです。

ちなみにgoo辞書(デジタル大辞林)ではこう解説されています。

むし‐ば・む【虫▽食む/×蝕む】 の解説
[動マ五(四)]
1 虫が食って形を損なう。むしくいになる。
「―・んだような格子の柱に」〈三重吉・小鳥の巣〉
2 病気などで、からだや精神を少しずつ損なう。「大気汚染が健康を―・む」「心が―・まれる」

https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E8%99%AB%E9%A3%9F%E3%82%80/

なかなか身も蓋もない感じです。
語源から見ても「虫・食む」から来てるんでしょう
正確に解説すると何か都合が悪かったんでしょうか。知らんけど。

このまま感情に任せて書き連ねてもいいんでしょうが、そこでふと〝今話題のChat GPTに聞いてみたらどうなるのかな〟と思いたち、尋ねてみることにしました。

まず「職場を蝕む大人の発達障害」というフレーズについて。
タイトルではなくフレーズにしたのは、まず言葉そのものの語感を問いたかったからと思います。適切だったかどうかはわかりませんが。

そこに潜む背景的なところまで読み込んでるのに、軽く驚きました。
すでに色んな情報を仕入れてるのかも知れません。

ここから「蝕む」という言葉について突っ込んでみました。あくまで私はこうとらえたというアプローチです。

「「蝕む」という言葉を使った場合、当事者を非難するような印象を与えてしまう可能性があります」とした上で、代替案も出してきました。
ここからは編集長からの回答について聞いてみました。

「職場を蝕む」という言葉を用いたことにより、問題の深刻さを強調し、解決に向けた議論を促しているという意図があると考えられます」と見たようです。
しかし「「蝕む」という言葉を使った場合、当事者を非難するような印象を与え」たわけであり。
そこを突っ込んでみました。

「問題を提起することは重要だが、当事者を攻撃する印象を与えない、公正かつ正確な言葉を選ぶことが大切です」とな。
「蝕む」という言葉選びの不適切さは認識したっぽいです。

続いて、タイトルを不快に感じた人への配慮についての対応についても聞いてみました。

AIは「タイトルの使い方について再考する」と読み取ったみたいです。
私にはそこまでの意図は読み取れなかったんですが、これは私が文字通りに受け止めすぎなのでしょうか。
なんだかAIの方が空気を読んでるみたいです。
「今後の編集に役立てるんですね、そうですね」ということで、最後にその努力を読者が知りうる手だてがあるのか聞いてみました。

なるほどですね。
今後を注視していく必要があるということですね。
やっぱりフィードバック大事ですね。

思わず相手がAIということを忘れてしまいそうでしたが、冷静に判断する一助になった気がします。

最後にAIでも、ましてや虫でもない一人の人間として私なりに感じたことを。

記事の内容や編集長の回答などを通して、結局のところ根底に「今はこんな人がいるんですね。大変ですね。自分の職場にもそういう人がいるかも知れないね」という〝他人事感〟みたいなものがあるように思えてなりませんでした。
それが「蝕む」という言葉に象徴されたのではと感じています。

問題提起として「蝕む」という言葉を用いたのならば「読者の中にはいまだ大人の発達障害への理解が乏しく、残念ながら当事者を〝職場を蝕む存在〟と捉える方がいるのも事実です。そういった方々にも興味関心を持っていただき、考えていただくきっかけとなればと考えて、あえて〝蝕む〟という表現にしました」ぐらい言われた方がまだマシだった気がします。
それでもせめて「職場を〝蝕む〟大人の発達障害」か「職場を蝕む?大人の発達障害」でしょうよ、と。
知らんけど。

すでにいろんな方が述べられていることですが、「大人の発達障害」とは、その人が本来持っている脳の特性が社会情勢や環境の変化によって「困りごと」「生きづらさ」として現れるのであって、ある日突然発症するものではありません。今にして思えば、自分の父親や祖母にもそういう〝特性〟があったのでは、とほぼ確信していますが、父は「昭和戦前生まれの長男坊」と社会的に優位な立場だったし、祖母は「戦争で夫を亡くして女手一つで子供を育てるおっかさん」で、世代的に生きづらさを感じる場面はなかったのではないかと思っています。
また発達障害自体、最近になって言われ始めたところで、現在の価値観で親世代を「発達障害」と断するのもナンセンスと思っています。

やや話がそれましたが、要は他人事と見られることが、当事者としては一番切ないわけでして、「蝕む」という言葉にそれを強く感じたわけです。

またこれからもこのテーマを取り上げていかれるようですので、ぜひ今回の件を今後の編集に生かしてほしいと思います。

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