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【小説】されどワン・ツー(続編)全七話

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前作の『弱くてもされどワン・ツー』の続編です。主人公が成長していく過程を描きました。よろしくお願い致します。
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【続編】弱くてもされどワン・ツー~第一話~きっかけは嵐

弱くてもされどワン・ツーのその後を描いてます。果たして主人公はどうなっていくのか(続編:全七話) 一番下に第二話以降のURLを載せてあるので続きはそこから見れます。 【弱くてもされどワン・ツー/始まりの物語】は、クリィエイターページの固定からか、またはマガジンにまとめてあります(全5話) よければ覗いてもらえたら嬉しいです。宜しくお願いします。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 和生人(なおと)が前の美容室を辞めてからあっという間に一

【続編】弱くてもされどワン・ツー~第二話~不思議なご縁~

翌朝、和生人は十三時に言われた場所に降り立った。駅は自由が丘駅。 落ち着いた大人な雰囲気と、行きかう人の笑顔から活気を感じる。 和生人はそのまま駅から少し歩いた路地裏に入ると、そこにヘアサロン〈ノエル〉はあった。 和生人「あ、ここ……」 思わず息を呑む。住所だけでは気付かなかったが和生人はこのお店を随分前から知っていた。和生人が美容師を目指すきっかけとなった、親戚が営む美容室、それがノエルだった。 お店は頑丈な煉瓦造りの壁に、柔らかな明るい照明で店内が奥までしっかりと見え

【続編】弱くてもされどワン・ツー~第三話~魔法使い~

髪をすくだけだったので、十五分位で関根のカットは終了した。 和生人「関根さん、あの、、終わりました」 関根が鏡越しに和生人を見る。 関根「ねぇ、これが本当に私に似合う髪形だと思って、声をかけたの?」 和生人は黙り込む。関根はゆったりと言う。 関根「私は泉君にオーダーしたのは変身させて下さい、だよ。このまま終わって、君は後悔しない?」 関根が言う言葉に、和生人は意を決して発言した。 和生人「あの、すみません!俺、関根さんをショートヘアにしたいです。どう……ですかね」 関根「素

【続編】弱くてもされどワン・ツー~第四話~あらぬ誤解~

和生人「青木様、本日カットを担当させて頂きます、泉です。宜しくお願い致します」 挨拶もそこそこに和生人は早速施術に入る。時短の為にシャンプーを手早く済ませ、席へご案内する。青木の要望は毛先が痛んでるので、あまり長さは変えずに整えて欲しい、というシンプルなものだった。 カットをしようとブラッシングをしていたら黒髪にキラリと光るものが混ざっていた。 和生人「青木様、白髪がけっこうありますね。本日カラーもしますか」 本当に悪気のない言葉だった、和生人にとっては。 目についた白髪、

【続編】弱くてもされどワン・ツー~第五話~和生人の課題~

次の日、和生人は連絡もせず勝手にお店を休んだ。簡単に言えばズル休みだ。でもそんな可愛いもんじゃない。全然休めず、生きた心地がしない。 今、和生人を苛んでるのは〈また同じことをやらかした〉〈結局、どんなに環境が良くても、カットが出来ても、自分に対/人間とのコミュニケーション能力がないと続けられない世界〉だという事だった。 和生人「今度こそ辞めるしかないか……つーか、転職を考えるべきだよな、もう。ハハ」 自暴自棄になりながら、涙目で天井を見やる。目を閉じても昨日の青木の言葉や視

【続編】弱くてもされどワン・ツー~第六話~責任の所在~

和生人「出勤が遅くなり申し訳ございませんでした!また昨日の青木様の件も本当に申し訳ございません!」 和生人は震える拳を握りしめ、力いっぱい大きな声で謝り、関根と須藤に頭を下げた。 その姿を関根と須藤は黙って見守る。二人は今日、和生人は来ないと思っていた。しかし雅人が大河を連れて現れ「和生人が来るまで邪魔するぜ~」と来ることを前提に話していたので、電話を控えていた。 そのまま二人は和生人の様子を見守る。厳しい視線とピリつく空気に、冬だというのに汗がポタポタと足元に落ちる。その

【続編】弱くてもされどワン・ツー~第七話~優しい棘~

和生人は店長から青木様は夜に来ると聞いたので、その間「兄と大河の髪を切ってもいいですか」と聞くと「おう!切りな、切りな」と背中を叩かれた。 今日はとても寒い上に生憎の雨。夕方予約のお客様も何組かキャンセルになり、珍しく暇らしい。和生人はまず「じゃあ、あ、兄貴から切るから。こっち来て」と呼ぶ。 雅人「大河、抱っこしてても切ってもらえるもんかね?手を放すとすぐ暴れちゃって」 和生人「うん、しっかりホールドしといてくれれば大丈夫。その……」 和生人はチラチラと外を見ながら、雅人に