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鉄道絵本レビュー(9) ぼくのママはうんてんし

鉄道絵本紹介、第9弾は、こちらです。

「ぼくのママはうんてんし」

作:おおともやすお

福音館書店

前回、前々回と昔のSLものが続きましたが、今回は一転して、現代の電車の話です。

車両についての物語ではなく、運転士さんとその家族にまつわる物語であるところも、今まで紹介した本とちょっと違うところですね。


女性の運転士さんを取り上げた絵本


さて、この絵本に出てくる運転士さんは、タイトルの通り、女性です。

今では大手私鉄やJR、地方私鉄でも活躍が見られるようになった女性の鉄道員ですが、一昔前は、鉄道といえば、車内販売スタッフや食堂車のウェイトレスさんを除けば、ほぼ男性オンリーの現場だったことは、皆さんご存知のことと思います。

自分が子どもの頃も、女性の運転士さんや車掌さんは、大井川鉄道のSL列車の車掌さんくらいしか見たことがなかった気がします。

実際、どのくらい増えているのか


最近は、東京近郊のJRや私鉄でも女性の運転士さんや車掌さん、駅員さんも増えている感じがしますが、実際のところ、どのくらい増えているのでしょうか。

詳しいレポートを見つけました。
リンクフリーであることをウェブサイトで確認させて頂き、下記に貼らせて頂きます。

独立行政法人国立女性教育会館女性アーカイブ センターより
「鉄道と女性展 鉄道を動かし、社会を動かす」

https://nwec.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=18852&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=4&block_id=58

上記資料によれば、戦時中を除いて、女性の鉄道員が増えたのは、平成に入ってからのことのようです。

以下上記資料からの引用です↓

平成11(1999)年には、男女雇用機会均等法改正にともなう労働基準法改正によ り、女性の深夜業制限が完全に撤廃され、女性の職域が拡がりました。
※女性鉄道員全体で見ると、JR東日本では全社員に占める女子の割合は、昭和 62(1987)年には0.8%でしたが、その後年々増えていき、平成30(2018)年には、 13.4%になりました。そのなかで駅など、車掌、運転士、メンテナンスに従事する女性 は59.1%になっています。

↑引用ここまで。

引用が一部なので、最後の一文の意味が分かりにくいですが、2018年には、JR東日本の全社員のうち女性は13.4%で、その女性社員の中で、オフィス勤務等でない、駅員や車掌・運転士・メンテナンス部門に従事する方が59.1%である、ということですね。

全体の比で見ると、まだ女性社員の数は少ないですが、それでもだいぶ変わってきていることは確かです。

さて、そんな社会状況を反映した、現代的な鉄道絵本、とも言えるこの絵本ですが、主人公ののぞむくんと、妹のあゆみちゃんは保育園児。

お父さんは病院勤務の看護士さんということで、休日や深夜の出勤もある職業同士の家庭の子育ては、送り迎えのやりくりや、子どもが病気の時の対応など、本当に大変だろうな、とつい身につまされてしまいます。

物語の舞台について


物語の舞台は、三鷹駅付近です。

保育園のお散歩でいつも通る場所として、三鷹の電車区を跨ぐ、跨線橋が出てきます。

正式名は「三鷹跨線(こせん)人道橋」といい、1929年(昭和4年)にかけられ、90年近い歴史ある橋だそうです。

三鷹電車区を一望できる鉄スポットとしても有名ですが、老朽化により撤去されることが最近決定してしまいました。残念ですね。

三鷹電車区の車両について


お散歩で跨線橋を渡る場面では、電車区に集う総武・中央緩行線(各駅停車)のE231系0番台や205系、地下鉄東西線乗り入れ用のE231系800番台が多数並ぶ様が描かれており、ワクワクする眺めです。

ちなみにE231系0番台は2000年(平成12年)3月から、E231系800番台は2003年(平成15年)5月から、2023年4月現在も中央・総武緩行線に在籍しています。

一方205系は、1989年(平成元年)8月から2001年(平成13年)11月までの在籍だそうで、205系とE231系800番台は、本当は並ぶことはなかったようですね。

そもそも、この本の主役である、中央快速線のE233系0番台は、2006年12月から営業運転を開始しているので、時代的にはそれ以降の話、ということになり、205系はいなかったことになりますが、そこはサービス!?ということで、楽しんでおきましょう。

現代の鉄道を舞台にしたストーリー


ストーリーはここでは紹介しませんが、ママの運転する中央線快速列車の現在地が、分刻みで示されていたりして、ちょっとドキドキする展開の物語と共に楽しめます。

基本古めの車両が好きな自分は、最初手に取らなかった絵本でしたが、現代のリアルな鉄道を舞台に、現代的な社会状況も反映した絵本、ぜひ読んでみてください。

それでは今回はこの辺で。ありがとうございました。


〜この絵本に登場する車両〜


すべてJR東日本

中央快速線 
E233系0番台

中央・総武緩行線
205系
E231系0番台

地下鉄東西線乗り入れ用
E231系800番台

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