period

もし、僕にとってあの子が運命の人だったとしたら。
きっと今日、駅のホームでばったりと再開して、数年前から変わっていない髪型や、夜中に仲間と缶ビール片手に公園に忍び込んだこと、いつか勧めてもらって未だに聴けていないバンドのアルバム、相変わらず結び目が解けてるコンバース、そんな事についてひとしきり話をする。


当たり前のように定刻通りホームへやって来る電車。僕と君は向かう方向が逆だと、この時知る。

「次は近くの喫茶店で会いたい、また連絡する。今日は突然だったけど、会えてよかった。」

「そうね、きっと、また。」

そう言って君は足早に車両へ向かう。1度だって振り向く事は無く。

ただ無機質に、車両は君を僕の知らない街へと運ぶ。

あの日の青い春、僅かな残り香が風に乗って消えていく。あるはずの無い思い出だけが、僕と君を結ぶ唯一のもの。

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変わる事が怖いし、変わらない事も怖い。
呪いのように刻み込まれた記憶と戻らない時間。
何もかもが手遅れだと自分を守る事に精一杯でゆっくりと終了の合図を待つ。
色々なものを無くして、それを拾うこともせず、見ないふりをして歩く。
効果のない錠剤、乾き続ける喉。インクの切れたペンで書き続ける下手くそな文字。

本当は君と繋がりたかった。樹海を埋め尽くす木々のように深く、複雑に。

僕は逃げた。弱かったから。
それでもまだ、僕は僕が望むものを手に入れる事が出来ると錯覚している。

そうだ、今日からを始まりとしよう。
ピリオドを打って。

折れた足でも引き摺って走れ。

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