見出し画像

今日も青はブルー(0921)

 朝の銭湯掃除中、何だかずっと、ある音楽が頭から離れなくて、壁をゴシゴシ、床をゴシゴシ、浴槽をゴシゴシしている時まであの「チャ〜」が離れなくて、外回り、うちでの作業中も離れず、サッと仕事終わらせて、夕方から観ましたよ、「男はつらいよ」。

 誰よりも、僕が一番驚いてます。「なんでこのタイミングで寅さんなの⁉︎」って。
 実は、FESTA松本の仕事がまだ落ち着いていた時に、どうしてもストレスが溜まってきたり、元気が出ないときはこれを観ようね、とM子と話していたのは「アベンジャーズ」だった。最初は一生懸命見ていたんだけど、フェーズ1まで見てお互いにちょっと飽きてしまって、ここ2週間くらいはうちに帰って、寝る、みたいな生活だった。それがここにきて、まさかの寅さん熱。今僕は早く次の「男はつらいよ」が見たくてしょうがないのです。

 原因は色々あると思うけど、一番は昨日書いた「マレビト」のことじゃないかなあ。寅さんほどの「マレビト」は他にいないしね。とにかく観たくなって、しばらく解約していたNetflixにまた入って、さてどれを観ようかとウンウンと唸り、「あじさいの恋」にしました。鎌倉が出てくるやつ。
 もはや当時の街並みもあまり残っていないものだから、貴重な資料としても面白かったけれど、とにかく観ていて安心感があるし、それでいて寅さんの言葉も染みる。
 昔、いわきに行く前にたまたまバスの出発まで時間が空いていて、最新の50作目を見たのだけれど、そのエンドロールで過去49作の渥美清さんの背中がワンカットずつ流れていて、場内はおじいおばあしかいなかったのだけれど満席で、皆咽び泣いていた。異様な体験で、ものすごいものを見ていたんだな、と感じた記憶がある。

 学生時代に2度、監督の山田洋次さんにもお会いしたことがあるのだけれど、やっぱり腰の低い、とても謙虚な方だった。学生だから、ということはなく、むしろ若者だからこそちゃんと話を聞こうという姿勢で、眼鏡の奥からまっすぐにこちらの目を見て、話を聞いてくれた。しびれるほどに優しい、一流の人だったなあ。

 寅さんは失恋するのがお決まりなのだけれど、寅さんが失恋してくれるおかげで、見終わった後に隣にいる人の大切さがわかる。恋人だけではなくて、家族でも、友人でも、大事にしよう、と思うのは、すごいなあ、と思った。
 そうそう、ちょっと違う角度ですごいな、と思ったのは、意外と役者さんが噛んでいるという事。でも、これ全然悪口ではないんです。今の映画って、綺麗すぎるほどきちんとした滑舌で発語するし、完璧に話すけれど、フィルム時代だと特に、主役級の人くらいにならないと、何度も撮り直せなかったんじゃないか。そもそものワンシーンにかける思いが多分全然今と違くて、だから、噛んでいても、むしろリアリティがあるというか、人間ってそうだよね、と思わせてくれる。もちろん、渥美さんはじめ噛まずに膨大なセリフを話す方はもっとすごいと思うのですが。

 なんて、偉そうに話してしまって、実はまだ4本くらいしか「男はつらいよ」観てないんです。ますます忙しくなる合間に、ちょっとずつ観ていこうかな。信州は舞台になりがちだけど、意外と松本はないのだよね。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?