フードデリバリーは、3D双六である。
COVID-19による全国的な自粛で、飲食業を陰ながら支えて、自宅ご飯にバリエーションをもたらした、フードデリバリーという仕事。
実際に、自粛期間中にデリバリースタッフとして稼働してみて得た3つの事を元に、何故「フードデリバリーが3Dすごろく」と言い切れるか実証してみたいと思う。
何故、フードデリバリーを始めたか。
私がフードデリバリーサービスの自転車配達員登録をしたのが、2020年4月上旬。その直後に、全国的な緊急事態宣言が発令されて、各都道府県からも休業要請が出された。その休業要請の出るタイミングで、配達員を始めるという、かなり貴重な体験をさせていただいた。
もともと、私は個人事業主として細々と活動していたので「空いてる時間で小銭稼ぎが出来ればいいな」という視点を常に持っていた。そして、2020年春から自分の暮らす街で世界的規模のフードデリバリーサービスが上陸することを知り、「隙間時間を有効活用出来る」とばかりに申し込みを決めたのだ。
事前に、フードデリバリーを副業としている人のブログから、週末だけで得られる収入の目安や、適度な運動にもなるという前情報を得ていたし、ロングライドと呼ばれる自転車での長距離移動も自分の趣味のひとつなので、「空いてる時間の有効活用」「副収入」「適度な運動手段」この3つが当初の理由だった。
実際に体験して感じた「くじ引き」的要素
初めてデリバリースタッフとして稼働した日。土曜昼間のゴールデンタイムである11:30から休む間もなく、15時前まで稼働した。その3時間強で実感したのは、毎回「くじ引き」的な要素があるということだ。
フードデリバリーサービスは、専用のスマートフォンアプリから受注、精算、配達が行われる業態になっている。お客さまが今、食べたい料理を決めて、その料理を提供する飲食店にアプリから注文、支払をする。その情報が飲食店さんに支給されるオンライン端末と、配達登録スタッフのアプリに同時伝達される。配達員が飲食店へ向かい、出来上がった食べ物を受け取り完了の操作を行ったら、注文したお客様の住所がアプリの地図上に表示されて、目標時刻を目安に届ける。これが、一連の流れになっている。
つまり、配達員側としては、どこに何を取りに行くのかも、またどこへ届けるのかも、通知を受けて初めて知ることが出来るのだ。
だから、当然、自分が今いるところから直ぐ最寄の飲食店さんの場合もあれば、結構離れたところに在る飲食店さんの場合もある。ここでまず最初の「運だめし」的なくじ引き要素が有り、また飲食店さんから目的の配達先なでの距離も、目の鼻の先の場合と離れている場合が有る為、都合2回くじ引きをしている感覚になる。
ロングライドは、自分で走る距離を決めて、目的地や道順を決めるので、ある程度計画的に走れる。しかし、いつ何を注文するかがお客様次第であるフードデリバリーは、今日どんなコースを走ることになるか、注文が発生しないと予測不可能なのだ。その上に、1度に2か所、または2店舗分の商品を同時進行で配達する場合もあり、自分が次にどこへ向かう事になるのかも全て、お客様のタイミングにかかっている。これほど毎回が「運だめし」な仕事は、他になかなか無い。ここが、まず3Dすごろくだと感じた最大の理由だ。
土地勘と方向感覚で組み立てる仕事
食べ物は基本、出来たてが一番美味しい。飲食店さんは、如何に早く美味しく提供するかを考えて、日々工夫をされていると思う。
それは、店内飲食に限らず、デリバリーでも同じである。
特に、ピザなどの温かい状態が味に直結する食べ物、うどんなどの麺の触感やのど越しが美味しさに関係する食べ物は、なるべく早くお届けしたいと毎回思っている。
なので、フードデリバリーで配達スタッフに求められるのは、「早さ」「料理の状態」、この2つが最も大事な事だ。
「目的地まで1分でも早く届ける」
これを実行するには、絶対に欠かせない能力がある。
それが、「地図が読める」「土地勘がある」この2つである。
フードデリバリーで使用されるアプリケーションには、GPSが連動されているのでナビゲーションはしてくれる。しかし、車の運転をされる人でカーナビを使って、かえって迷った経験をされた方もいるように、GPSは必ずしも100%正しい訳では無い。
お客様が正しく入力してくださっても、地図アプリに反映されない場合もあるし、機械によるナビゲーションだと反って遠回りな時もある。
ここで、「土地勘」が1分1秒を左右するのだ。
もっと言えば、信号で停止するかしないかを考えて、経路を決めれるか。ここもある種、すごろく的だと思う。
「早く短距離で届ける」という部分は、空間把握能力や土地勘、臨機応変さを求められる。昔「話を聞かない男、地図の読めない女」と言う本がベストセラーになったように、方向音痴の女性は確かに多い。フードデリバリー配達員は9割くらい男性なのも、体力面も含めて納得がいく要素だと経験してみて思う。
3Dすごろくを体験して得たもの
「隙間時間の有効活用」「副収入」「適度な運動」この3つが始めた理由だったが、実際に得たものは「脳トレ」「副収入」「体幹トレーニング」の3つだった。
最短ルートを状況に応じて走りながら決めるのは、頭脳仕事以外何物でも無いし、御届け先によっては、移動距離が3㎞を超えることも多々あるため、適度な運動どころではなく、結構な筋トレと体力仕事でもある。安全に食べ物を運ぼうと思うと、姿勢の良さや体幹が必要なので、下半身のみならず、腹筋背筋も使う。おかげさまで、「コロナ太り」という流行には乗ることも無く、自粛解除を迎えた。「副収入」は、時給換算で平均¥1,000~1,200前後な上に、支払サイクルも早いので言う事ない。
普段行かないお店や住む人じゃないと入れない高層マンションへお伺いしたり、毎回「何が出るかな?」というさいころを振る感覚を味わう反面、雨の日には何の罰ゲームだろうか?と思うような移動や階段のみの建物だったり、番地が見つからず迷うというまさに、さいころのマス目に一喜一憂する要素もあるのだ。
私にとって、フードデリバリーの配達員は予想以上の得るものがあった「隙間時間の活用法」で、3Dすごろくを楽しむように日々、自転車で駆け回っている。
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