どうする!沐浴

 沐浴!それは1日1回訪れる戦いの瞬間だ。
ぐにゅぐにゅと手足を動かし抵抗するひなちゃんの服を脱がせ、ベビーバスできれいに洗い、体を拭き、スキンケアをし、再度服を着せるミッションには丁寧さと手際の良さが求められる。
一たび鼻や口にシャワーのお湯が散ろうものなら、ひなちゃんは烈火のごとく怒りだし喚き散らす。体を洗うことに手間取れば冷えるようで、警報のようにまた叫び始める。
加えて浴室という環境が追い打ちをかける。カラオケルームのように泣き声にエコーがかかり、聴き続ければ頭がくらくらしてくるのだ。本当にたちが悪い。
そんな毎回ハラハラさせられる沐浴も、いくつかの便利グッズと少しのコツを駆使し太刀打ちできるようになった。
 便利グッズ一つ目は空気で膨らますベビーバスだ。
ベビーバスには主に盥のようなプラスチック製のものと、プールのように空気で膨らますビニール製のものがある。私たちは後者のタイプを使っている。
ビニールのバスであれば壁面が柔らかく、赤ちゃんの頭をぶつけてもけがにつながりにくい。
私たちが使っているバスには、お湯のたまる中央部分に棒状の支えがついている。この突起部分で赤ちゃんの股を支え、体が滑っても顔までお湯に浸かりにくい仕様となっている。
 便利グッズ二つ目は沐浴剤だ。沐浴ではベビーソープで洗う場合と沐浴剤で洗う場合がある。
ベビーソープは体のパーツごとに泡を付け直して洗う必要がある。一方バスのお湯に入れる沐浴剤を使用すれば、お湯の中で赤ちゃんの全身を軽くこすって洗うだけである。
 便利グッズ三つ目はシャワーだ。
ベビーバスで赤ちゃんの体が温もると手桶でかけ湯をしてあがる。しかし、私たちに取って手桶でのかけ湯だと体のどの部分にお湯がかかっているのかがわかりにくく、手桶を傾け少量ずつ均等にお湯をかけることはできなかった。
ひなちゃんの肩を流そうとして、手桶を傾けるとお湯が出過ぎてしまい顔にもかかり、泣き出すということが多々あった。そこで私たちはかけ湯をシャワーで行うことにした。
シャワーであれば、水量を調節し少量でゆっくりお湯をかけ続ける。水圧もあるため、下から背中にシャワーヘッドを向けて流すこともできる。
シャワーヘッドを持ち、どの角度からでも体を洗い流すことができるようになったのだ。
 便利グッズ四つ目はバスチェアーだ。バスチェアーは、お風呂で使う赤ちゃん用の椅子で、私たちは0ヶ月から2歳まで角度を調節することに寄り比較的長く使えるものを買った。
赤ちゃんが大きくなってくると、首が座りしっかりする反面、手だけで体を支え切れなくなる。そんな時赤ちゃんを座らせ、両手で体を洗えるバスチェアーは重宝する。また親が体を洗う時、浴室で赤ちゃんを座らせ、少し待たせておくこともできる。
 次にお風呂に入れる時のコツである。
一つ目は二人体制だ。
目で見ることができれば、片手で体を支え体の流す位置を目で確認しながらもう一方
の手で手桶やシャワーを操作できる。ところが目の見えない私たちの場合そうはいかない。
お湯をかける位置も手で触りながら確認する必要がある。
お湯をかけたい部分に触れ、その手を目標にもう一方の手でシャワーを操作する。となると、バスで体を支える手が足りなくなる。
本当は、体を支える手、流すところを確認する手、シャワーを持つ手と3本の手で作業したいところだ。そんなことができるのは、千と千尋の神隠しに出てくる釜爺か、寺の本堂に鎮座している千手観音ぐらいだろう。
そこで我が家では手の本数を増やす観点から、夫と二人でひなちゃんの沐浴を始めた。一人がひなちゃんの体を支え、もう一人が体を洗い、お湯をかけるのだ。
 コツの二つ目は入浴前のイメージトレーニングだ。服を脱がせお風呂に入れて、また服を着せる一連の流れに沿って、事前に準備することが重要だ。
脱衣場にマットを敷き服を脱がせる場所を作り、バスにお湯を張り、入浴後に着る洋服・肌着・おむつを重ねて置き、スキンケアグッズを横にセットする。私たちも当初は、準備不足に寄り、バスタオルにくるんだひなちゃんの置き場に困り右往左往するうち、業を煮やしたひなちゃんが暴れだしたことがあった。
更に焦ると、ひなちゃんの頭を脱衣場の洗濯機にぶつけそうになったり、ベビーローションを塗り忘れたりとろくなことがなかった。実に備えあれば憂いなしとはよく言ったものだ。
 こうして、トライアンドエラーを繰り返しながらどうにか私たちもひなちゃんをお風呂に入れられるようになった。ひなちゃん自身はお風呂が好きなようで、お湯に浸かっている間ははふはふ言いながらゆっくり手足を動かしご機嫌だ。
ただ、私たちに取ってもひなちゃんとのぽかぽかお風呂タイムがリラックスの瞬間になるまでにはもう少しかかりそうだ。

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