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どうする!バースプラン その2

 バースプラン後半、八つ目から十三個目の項目は、出産時と産後の希望についてである。
 八つ目は「呼吸法をリードしてほしい」という希望だ。
出産に関する情報を集めていた時、ラマーズ法やソフロロジー法など呼吸法にも様々なスタイルがあることを知った。しかし、YouTubeにある解説や実演動画を見てもいまいちよくわからなかった。
そこで当日どう呼吸すればよいか助産師さんにアドバイスしてもらえるようお願いした。
助産師さんはやはりプロだ。陣痛で私が大騒ぎしていると、
「私の声がする方向に顔を向けて。」
「ふーふーって息を吐いて。」
と私にもわかるよう的確な指示をしてくれた。
 九つ目は「立ち会い出産を夫にお願いしたい」という希望だ。
コロナ禍ということで立ち会えるのは一人、時間は子宮口が開きお産が最終段階に入ってから産後30分までと決まっていた。つまり立ち会えるのはほぼ生まれる瞬間だけということだ。
この立ち会いを私は夫に頼んだ。親としての責務を夫婦私たちで、子供の生まれる瞬間を見届けたいと思ったからだ。
母に電話で立ち会いの件をサラッと伝えると、
「あら?かあさん立ち会えないの?」
などと言っていた。母には、退院してからの手伝いという大役を代わりにお願いした。
分娩台に上がり、ようやく夫と会うことができたのは入院から三日目のことだった。
いつもと変わらず
「来たで!」
と言いながらのっそり現れた夫の様子に安心したことを覚えている。
夫は分娩台に近付くなり、私にお土産でもらったベルツノガエルのスクイズを手渡してきた。私が痛い時ニギニギできるようにと持ってきてくれたようだった。
しかしこれはさすがに使いづらかった。思いっ切り握りしめればつぶれてしまいそうな柔らかさだった。そのためカエルの使用は低調にお断りした。
カエル騒動後は滞りなくお産も進んだ。おかげで夫と、同時に子育てのスタートを切ることができた。
 十個目は「生れたらすぐに赤ちゃんをだっこしたい(最初に私、次に夫の順)」という希望だ。
この希望は挙げて本当に良かった。タオルにくるまれたひなちゃんをだっこし小さくて暖かい体に触れた瞬間、自分の子供が生まれたことを最も実感した。
 十一個目は「生れたら写真・ビデオ撮影をしたい(3人の記念写真を含む)」という希望だ。
通常、写真やビデオの撮影は自分たちですることになっていたが、私たちの場合はスタッフの方に撮ってもらえることになった。
自分たちでもスマホのボタンを押し写真をビデオを撮ることはできる。ただ、対象物が画面に入っていなかったり、かろうじて写ってもボケボケになったりとうまく撮ることは難しい。
今回助産師さんに写真やビデオを撮ってもらえ、自分たちは後で画像を見返せなくても、立ち会えなかった家族に見やすい映像を残せたことは嬉しかった。
 十二個目は「産後寝不足や疲れている場合は赤ちゃんを新生児室で預かってほしい」という希望だ。
実際慣れないお世話に疲れたり、熱が出たりした時には快く預かってもらえた。しかし退院日の二日前からは夜も、
「自分でしっかりお世話できるようになろうね。」
と言われ、預かってもらいにくくなった。これが病院からの最後の育児指導であった。
いやあこれがクタクタの身体にはかなりきつかった。
 十三個目は「生れたらできるだけ母乳で育てたい」という希望だ。
バースプラン通り産後一日目から母乳育児指導は始まった。といっても、最初は全くうまくいかなかった。
作ってしまえば簡単に飲ませられるミルクにしてしまおうかとあきらめそうになった。最初は母乳が数滴出ればよい方で、安定してたくさん飲ませられるようになるまでトレーニングが必要だった。
赤ちゃんも最初から上手に母乳を飲めるわけではない。授乳の度に昼夜を問わず病室で練習に付き合ってくださった助産師さんや看護師さんには感謝しかない。
 産前、お産時、産後をイメージしながらバースプランを考える過程は、自分が何を不安に思いどんな支援を望み、どうしたいのかに気付くきっかけとなった。私にとって、13項目にも及ぶバースプランは、一生に一度しかないひなちゃんの出産を忘れられないすてきな出来事にするための大切な企画書であり、道しるべであった。

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