見出し画像

義父VS免許証返納

今から3年前になる。
義父は当時88歳という立派な高齢者でありながら現役で車を運転していた。
車は3リッターの大型車で義母と二人で乗るには大きすぎる。
「いつかはクラウン」の世代だからか大きい車がステータスだったのだろう。
(単なる見栄っ張りなんだよ・・・)

しかしここ数年は何度も単独事故を起こしていたので、年齢的にも運転を辞めてほしいと思っていた。駅までバスを使えば10分もかからないし、かと言って外出が好きな訳でもない。

買い物と通院に利用しているだけなら近所に住む子供らが代わりに連れて行けばよし。いい加減に免許返納をお願いしようということに決めた。

しかし第一関門で以外な刺客が現れる。義父の息子つまり夫。またお前か。
夫いわく「いつか自分から辞めると言うまで待てば良い」と言い出した。
どこまで脳内お花畑なのだろう。義父の性格から死ぬまで返納しないはず。

私は猛反撃に出た。
「もう88歳だ。判断能力だって鈍っている。現に自爆も何度もしている」
「相手がいる事故ならどうする?義父だけの責任ではない」
「運転をさせていた家族にも責任はある。犯罪者の身内なんて御免だ」

夫は「大袈裟だなぁ」と笑ったので、私はカチンときて一撃を放った。

「アンタは自分の子供が犯罪者の孫のレッテルを貼られ、社会的制裁を受けるのを黙って見てられんのかよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

夫は「話してみるよ・・・」と言ったが全く当てにならないのは百も承知だったので、「私から切り出すから!」と伝えた。

後日義父の元へ行き話をする事になった。
いきなり免許を返納してくれと言っても聞かないのはわかっている。
少しずつ攻めていくことにした。

義父に「車の保険の更新はいつですか?」「どれだけ払ってますか?」と保険料が高い事から切り出した。
タイミングよく翌月が更新月だったので「運転を考えませんか?」と伝えた。

義父は「車がないとどこへも行けない」「病院へ行くのにも困る」と言い出した。これは想定内なので「うちの子も免許を取りましたし、運転手に使ってくれて良いですよ?」「おじいちゃんのお手伝いなら喜んでやりますよ?」と言った。(すまん息子よ。ウソをついた母を許せ)

さらに「最近高齢ドライバーの事故も多発してますしね。でも返納するのは勇気が要りますよね。だけどそこで返納した方が逆にカッコイイですよ」と言った。
これは本心だ。いつまでも「年寄り扱いするな!」と拒否するよりもスパッと「返納した!」という方が100倍カッコいい。

高齢ドライバー事故の件はさすがに効いたらしく、「まぁバスもあるしなぁ・・・」と言い出したので、私のターンがやってきた!
ここから一気に「車も維持費にお金かかりますし、駐車場代も馬鹿にならないですし、車を手放しませんか?」と攻め続けた。

そうなったらスマホは便利だ。中古車情報で「これくらいで売れますよ!早い方がいいですよ!」「保険料も更新する前に手放しましょう!」と畳みかけ、一気に車売却へと話しは進んだ。

免許証はあっても車がなければ乗れない。さすがに売却した翌日に新車を購入するというような事もしないだろう。念の為に懇意にしているディーラーへ「車は売らないでくれ」と頼もうかと思ったが大丈夫だった。

車が引き取られていく際はかわいそうだなと思ったが何かがあっては遅い。完璧な人間などいない。ましてや高齢者で偏屈だ。これで良かったのだ。

私は「バスや電車ならこれで乗れますから!」とチャージをしたICカードとカードケースをプレゼントした。
「ありがとう」と寂しげに笑いながら受け取ってはくれたが、使用しているのかは謎だ。

こんな形で今まで10年以上に渡る「免許返納戦争」が終わりを告げた。

でもこれって実の子供達が話すものじゃないの?
息子と娘は何やってんのよ。
なんで部外者(戸籍上は親類かもしれないが)の私が先頭切ってやるのよ。

本当にこの一家には色々と苦労させられるよ・・・。












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?