ミュージシャン④宇多田ヒカル~3「First Love」

次は言わずとしれた「First Love」です。

この曲はこれまでと違い長調ですね。前にも書いたけど(笑)。

こういう曲を短調にすると、曲が重くなりすぎるんですよ。

なのでバラードって基本長調の方がいいと思います。

でこの曲の上手いところはドミナントモーションをここぞ、というところでしか使っていないんですよね。ⅤーⅥmの偽終止といいバランスで使っていると思います。

しかもⅡⅿ7/ⅤからⅠに進行するのでベタな雰囲気にならないんですよね(当たり前ですが、Ⅱⅿ7/ⅤはⅤにテンションノートが付いた和声です)。

どこを取ってもいい曲だと思います。

この曲、歌詞のインパクトが強いのでそちらの方がフォーカスされることが多いのですが、曲がいいのは間違いないでしょう。

後、もう一つのポイントはイントロです。

前に「カバー」という特集で取り上げたことがありますが、この曲、カバーされることが多い作品ですが、イントロの雰囲気を壊すとまず失敗します。

そうすると「First Love」にならなくなるんですよ。

もちろん宇多田ヒカルさんのようなフェイク(と言っても実際にはアレンジされているのでしょうが)を入れる訳ではありませんが(個人的にはこの「フェイク」がイントロのポイントだと思います)、成功しているカバーはほぼ同じようなイントロの作りにしています。

他の音はピアノとアコギ、うっすらとストリングスだけですから、なおさらこの部分が引き立ちます。

で、あのイントロが「First Love」という曲と不可分の存在になっていて、曲自体を想起させる契機になっているんですよね。

これはこの曲が聴かれている回数に起因していると考えています。

聴かれる回数が多ければ多いほど、こういった結びつきは強くなります。

聴かれる回数が多いほど、曲や歌詞、イントロやアレンジが一体のものとして捉えられるようになるんですよね。

でもどの部分も素晴らしいからこそ、これだけ月日を経ても愛される曲になったのだと感じています。

今でこそアレンジは古い部分もありますが、そんなことはふっとばすような作品かと。

あと大事な点があります。この曲がバラードであることです。

バラードで火が付いたアーティストって実は後がきついんですよ。

同じものを求められるようになり、マンネリ化して飽きられる。

しかし宇多田ヒカルさんの場合、一曲目で圧倒的な存在感を示し、二曲目で安定感を出し、三曲目で泣かす、マーケティング的に言っても上手いんですよね。

まあこんな能書きを読んでいるより曲を聴いた方がいいんでしょうが(笑)。

ほぼ書きたいことを書いていて、読んでいただけることも期待していませんが、もし波長が合えばサポートいただけると嬉しいです!。