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1日1ショート・その52「夜車窓」

彼が夜のドライブに行こうと言ったので、
私はウキウキして彼の車に乗り込んだ。

まさかそんなロマンチックな言葉を私に発するとは!
今までいちばん嬉しい。

「どこに行くの?」
そんな無粋なことは彼に聞かない。
彼が行きたい場所ならどこでもついていくんだから。

でも車の窓から見える景色が段々と怪しくなってきた。

私たちの住む都内の安アパートが並ぶ地域から
煌々と輝くビル街を通り抜け、どんどん郊外へ。

そして今では数キロに一度、小屋を見かけるか見かけないかの森の中。
私の心のドキドキは段々と恐怖によるものへと変化して行った。

ねえ!ここどこ〜〜!!

もう人間のつくったものは何もない。森の深くまで来てしまった。

星かな?綺麗な星を見たいのかな?
でも今日は曇って月も見えなかった……。

あれ、もしかしてこれ私殺されるとか?

「これから何するの?」
私はついに聞いてしまった。

「おばけ探し」
「あーおばけ探しね」

なーんだ。おばけ探しだった。

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