1日1ショート・その59「ポリーさん」
前、僕が住んでいた街にはポリーさんがいた。
それが当たり前だと思っていた。
けれど、ここではそれらしき人を見かけたこともないし、
誰に聞いてもそんな人はいないと言われてしまう。
ポリーさんは僕らにいろんなことを教えてくれた。たとえば天気。
ここでは天気予報士という人がいて、天気予報というものを出す。
だが、ポリーさんがいればそもそも予測する必要がない。
「ポリーさん、明日の天気はどう?」
「明日はアッツアツよ。あなたが今朝食べた目玉焼きみたいな太陽が、空を一日中征服するわ」
ポリーさんは天気を完璧に教えてくれる。ノーミスで。
それにこれから僕らに起きることも。
「あなた、今日は財布を落とす。気をつけても、もう決まっているから仕方ないわ」
ポリーさんの言う通り、僕は財布を落とした。
ある晩、僕の父さんと母さんが言ったんだ。
「もう少し未知の可能性のある場所へ引っ越しましょう」
それで僕、引っ越してきたんだ。よろしくね。
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