疾病・障害福祉窓口での話①
(行政職からの目線のお話です。)
20代半ば頃に働いていた、中規模の都市の、疾病・障害福祉窓口のちょっとした日常を参考にした話を幾つか。
年1回だけの手続きのために3日連続で来た方の話
毎年1回決まった月に必ずやる手続きのため、3日連続で来たご高齢な方がいた。
受付簿を見たら一昨日に手続き完了しており、備考欄に「(昨日の日付)も手続き完了したことを忘れて本人が来庁した」と記載がある。
マイナンバーカードで本人確認しており、特段、代理申請でもないので、家族や後見人ではなくて本人が手続きしたことは明白。
一昨日の日付で受理した書類は何度見直しても完璧で不備なく、万が一を考えて名前と住所と生年月日を何回みても、同姓同名の別人が来たわけでもない。
…2回ならまだしも、3回しかも連日来るのはうっかりなのか?(忘れて2回来る人は大勢いらっしゃる)
数秒ほど考えたが、これは、几帳面でルーティンしっかりめの人が、軽度の認知症を発症しているのでは?
…このお客さん、とりあえず窓口でお待ちいただいてるけど、何て回答しようか。認知症らしきことに自覚無いか、認めたくないのかもしれないし。実は凄くうっかりしただけかもしれないし。
慢性的な内臓疾患で自宅療養しているので、音信不通になるより断然良いことではある。少なくともご本人は在宅で無事ということは分かるわけだし。
(この方は会話の流れで、時々ヘルパーさんが来ると言っていたが。)
原因が何であるかはさておき、相手を極力傷付けにくい感じでいこう。
僕は一昨日受理した書類を持って、窓口に戻った。
「お待たせいたしました。今年の手続きは既にお済みです。頂いた書類に不備等ございません。ご安心ください。」
お客様「そうでしたか、うっかりしていたかもしれません。大事な手続きだから気になるんです。」
僕「大丈夫です。こういう大事なお手続きですから、気にするに越したことは無いです。もし、ご心配でしたら、こちらをお持ち帰りください。」
僕は、A4で1枚の制度案内の紙を持ってきて、マーカーで「(一昨日の日付)に手続き済、新しい受給者証は⚫月に郵送で届きます。次の手続きの時期は(来年の今月)です。」と大きく書き、「これをご自宅の目立つ場所に貼ってください」と書いた付箋を貼り付けた。
僕は「皆さんこうやってますよ。」と言って、その紙を渡し、お帰りいただいた。
家に帰る前に紛失しなければ、大丈夫なはず…と思いながら、後ろ姿を見送った。
その方は、さすがに4日連続では来なかった。
(終)
あとがき
理由がどうであれ、短期記憶に不安があるかもしれない相手には、伝えたいことを紙にでっかく書いて渡すと良かった。
(なにも認知症だけではない。脳卒中・心停止による低酸素脳症・頭部外傷の後遺症による高次脳機能障害、一人暮らしの軽~中度知的障害者など、短期記憶に困難を抱える疾病障害は様々。)
手続きの本人控えが国や都道府県所定の申請書についてたらそれを使えば良いけど、無い場合もあるし、そもそも控えを無くす人も一定数いるからね…
かく言う自分もメモ魔。短期記憶は元々不得意だし。
こういうの、手続きの電子化が進んだら将来的に減るのかなぁとか一瞬思ったことがあるけど、パスワード忘れたり間違えすぎて手続きサイトのアカウントがロックされるリスクがあるので、完璧な策はぱっと思いつかない…
そもそも論になってしまうが、制度名って長くてどれもこれも似通ってるよね。そりゃ混乱するさ。
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