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逆噴射小説大賞2019自作

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ナガヤマ・カイジュー・ディフェンス社「ジェットセイバーⅤ」墜落事件

ナガヤマ・カイジュー・ディフェンス社「ジェットセイバーⅤ」墜落事件

 全長50mを超える巨大な怪獣が、住宅を、電柱を、自動車を、総てを圧し潰しながら歩みを進める。立ち向かうのは、上半身が緑、下半身が黄色に塗られた、全高10mほどの人型ロボット。サイズの差を物ともせず果敢に挑みかかるロボットだが、怪獣が吹き出す暴風に押し返され、有効な攻撃が与えられない。

 もはやあの怪獣を止めることは出来ないのか。人々がそう思った矢先、赤、青、紫で構成されたロボットが雲中から猛然

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メイド・ウエスト・ガンパウダー

メイド・ウエスト・ガンパウダー

「お嬢さん、いい加減折れてくださいよ。紙切れ一枚にサインするだけの話ですぜ」

 ギャングじみた一団から進み出た大柄な男が、肩を怒らせながら、まだ少女と言っても良い年頃の「お嬢さん」、つまり私の主人に書類を突きつけている。内容は、この土地の一切の権利を渡す、とかそんなもの。

 少女の先祖が開拓し、代々維持してきたこの土地で、石油が出ると分かったのが数年前。以来、少女の一族は次々”偶然”事件や事故

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雛鳥たちの戦争

雛鳥たちの戦争

「常に予算と人員の不足している我が国の空軍にとって、例の予算が通ったのは元々変な話だったんだ」

 国境にほど近い小さな町から、更に車で2時間と少し。農場や牧場の中に佇む小さな空軍基地。ほとんど使われていないという応接室で、インタビューは静かに始まった。

「パイロットを代替する高度なAIを搭載した無人戦闘機の研究開発……研究するだけなら結構だと思った。数年後に自分の基地に配備されるような話とは知

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名前をおしえて

名前をおしえて

 ヒトとは本能的に未知を恐れる生物であり、そして未知を恐れるがゆえに、それを克服しようとする本能ももつという。

 あなたが何かに相対したとき、それに名前が付いていたならば、過去にヒトがその存在を知り、記録したということ。ヒトが認識し、区別ができるものならば、ヒトはいつかそれを理解して、克服することができる。

 だから私達は「それら」と戦い、記録し、知ることで克服する。それがヒトの宿命だから。

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